2:日常なのだから仕方がない。
「旅行に行きましょう!Eジョシュさん!」
そう言ったナジリマさんの目は、輝いており、まるで子供の様だ。
「って、いやいや。ダメでしょう」
「何でですか? いいじゃないですか、旅行」
「いや、旅行に行きたくないとか、そういう話ではなくてですね」
「? 何が問題なんですか?」
「旅行に行くお金があるなら、それで家賃を払わなくちゃダメじゃないですか」
「いいや、それでは解決にはなりません!」
「旅行に行っても解決にならないじゃないですか……」
旅行に行く、いかないの議論は10分ほど繰り広げられたものの、探偵の巧みな話術によって、旅行に行くことが決まってしまいました。
「ふ~んふふ~ん♪」
ナジリマさんは鼻歌交じりにパソコンで旅行先について調べています。
私は、ナジリマさんの飲み干したカップに紅茶を注ぎました。
「あぁ、ありがとうございます」
「はい。あ、どこに行くか決まりました?」
「いや、全く。久しぶりの旅行なので、目移りしちゃいますね」
「どこに行きたいとか、あるんですか?」
「そうですね……、強いて言うなら、温泉、ですかね」
「温泉、ですか?」
「えぇ。温泉にこう、ゆっくりと浸かって、日頃の疲れを癒したいですね」
旅行先について話していると、いつの間にか時間は経って、終業時間になっていました。
「おっと、そろそろ終わりですね。帰りの準備をしましょうか」
「そうですね」
私は元栓を閉めて、窓などの戸締りをチェックします。
事務所を出ると、ナジリマさんがドアの横に立っていました。
「では、鍵よろしくお願いしますね」
「はい!」
ナジリマさんから鍵を受け取って、事務所の鍵を閉めます。
「では、Eジョシュさん。また明日」
「はい、また明日。失礼します」
次の日。
私の朝は、早いです。
4時に目が覚める。
これは学生の間、遠い学校に通っていたため身に着いたものです。
布団から起き上がるとすぐに洗面台へ。
寝癖のすごい頭を必死に梳かします。
トレードマークにもなっているポニーテールを結うと、すぐにリビングに。
今日は、両親とも仕事で帰ってないので、私が朝食を作る日です。
昨日の残りの味噌汁を温めながら、弟のお弁当に昨日の残り物を詰めます。
昨日は野菜炒めだったため、冷凍しておいたごはん、プチトマト、レタスを入れたお弁当に乗せるだけで完成です。
弟で助かった、と心の底から思うところの1つです。
味噌汁の火を止めて、次のやることに移ります。
時計を見ると、もうすぐ5時です。
6時半には家を出なくてはいけないので、少し急ぎます。
洗濯機から洗濯物を取り出し、ベランダに干します。
干し終わったら、お風呂を洗います。
洗い終わったら、今度は弟を起こします。
これが一番大変かもしれません。
「
「んむ、もうちょい寝させて」
「ダメだよ!遅刻はダメ!早く起きて、朝ごはんできてるから!」
瑛大はかたくなに起きようとしません。
「瑛大、おーきーろー!」
私はそう言って、弟の布団をばっ、と一気にめくりました。
「さっむ! え、姉さんバカなの!? 寒いわ!」
起きない方が悪いので、私は弟の部屋を出ていきます。
姉弟そろっての朝食をとった後、私は皿洗いをして、着替えます。
白のTシャツの上から黒のパーカーを着て、下はデニムパンツ。
トレードマークの黒いキャップをかぶって、準備完了です。
事務所の鍵、家の鍵もしっかりと持って、いざ出勤。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます