第887話 欣喜雀躍(きんきじゃくやく)
愛王丸と別れた後、大河は天守に上がる。
「
ガチャガチャと朱色の甲冑を鳴らしつつ、井伊直政が近づいていくる。
「おお、買ったのか?」
「はい!」
「似合っているぞ」
「ありがとうございます♡」
直政は大河に抱き着くと、頬ずりする。
「義父上も同じの着て欲しいです」
「分かった。同じの買うよ」
「では、次の給料日に買いますね?」
「いやいいよ。自分で買うから」
「義父上に贈りたいんですが?」
義父にプレゼントする直政の純粋な気持ちだ。
しかし、大河の表情は固い。
「俺よりも直虎にな? なぁ?」
「ひゃい!?」
いきなり声を掛けられ、
「き、気づいていたんですね?」
「最初からね」
直虎の手を握ると、直政の前で濃厚な接吻を交わす。
「直政」
「はい」
「俺のことは良い。母親を優先するんだ」
「義父上は二の次ですか?」
「ああ」
兜越しに直政の頭を撫でる。
「母親を大事にな?」
「分かりました」
直政としては、大河にも喜んで欲しい所だが、彼はあまりその気に無さそうなのが残念だ。
ただ、義父の言い分も分からないではない。
「あと、直政。
「あ」
「そういうのも勉強だ」
大河に笑われ、直政は頷く。
「そうですね……勉強します」
自分の甘さを痛感するのであった。
その日の夜。
大河は姫路殿と早川殿、綾御前、上杉謙信と過ごす。
「今日は愛王丸と直政に会ったよ」
「見てました。お二人喜んでましたね?」
「そうだね」
姫路殿に接吻し、次に早川殿に手を伸ばす。
「皆、順調?」
「ええ。皆、貴方の絵を描いてるいますわ」
「時間見つけていくよ」
「ありがとうございます♡」
多忙な分、特定の子供と接する機会は一般家庭のそれよりも少ない傾向にある。
が、決して
早川殿を抱き締めつつ、綾御前に接吻。
「久しぶりだね?」
「そうね。でも結構、夜這いしているのよ。謙信と一緒に」
「気づかなかった」
「貴方が起きる前に逃げるから、気づかないのも当然よ」
謙信、綾御前の姉妹は、就寝中の大河を時々、襲っていた。
「起こせばいいのに」
「寝顔の貴方が可愛いのよ」
謙信はそう言うと、大河の頬を指で
プニプニ。
成人男性にも関わらず、赤ちゃんのような
「どうして、赤ちゃんみたいな肌なの?」
「そりゃあ毎日、洗顔しているからね」
「男の癖に女みたいだね?」
「でも、不潔よりマシだろ?」
「まぁ、そうだけども……」
21世紀の令和の日本では、「男の癖に~」「女みたい」といった発言は性差別と解釈される場合があるのだが、16世紀の日ノ本ではまだまだ
本人たちには悪気はなく、また社会全体に男女平等の概念が浸透しきれていない分、仕方の無いことではあるが。
21世紀で育った大河には、やはり違和感が禁じ得ない。
謙信に接吻し、その頭を撫でる。
「子供扱いしないでよ」
「してないよ」
「だったら、どうして撫でるの?」
「可愛いから」
「もう、成人しているのに?」
「可愛いに年齢は関係無いよ」
再び謙信に口づけすると、そのまま覆い被さる。
と、同時に姫路殿と綾御前を引っ張り、早川殿は襟元を噛んで手繰り寄せる。
「まるで野獣ですね?」
呆れる早川殿だが、その頬は赤い。
久々に求められたのだ。
不快な気持ちは一切なく、むしろ
そして、子供たちには絶対に見せることが出来ない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます