第882話 遊嬉宴楽(ゆうきえんらく)

 未成年の為、酒が飲まれている訳ではないが。

 それでも夜が更けると、子供な分、睡魔が襲う。


・伊達政宗

・愛姫

・愛王丸

今川範以いまがわのりもち

 

 は、スヤスヤ状態に陥り、小少将が迎えに来た。

「この4人だけ?」

「うん。まだ飲み足りないみたいだから」

「分かった―――」

「小少将」

「はい?」

「好きだよ」

 告白後、接吻する。

「もう、子供の前で……」

「いいのいいの」

 天真爛漫てんしんらんまんな大河に、小少将は苦笑いだ。

 その後、10回も接吻した後、小少将はようやく解放され、4人を連れて出ていく。

 残ったのは、


・井伊直政

・品川高久


 だ。

 2人はが減った為に、大河に甘える。

「義父上、もう少し食べてもいいですか?」

「私も」

「良いけど、よく食べれるな?」

「大食漢は嫌いですか?」

 直政は不安げに尋ねた。

「いいや。ただ、びっくりしただけ」

「良かったです♡」

 父の愛を殆ど知らぬ子供たちは、義父に愛情を求める。

「直政は武士確定?」

「はい。母上のような武士になりたいので」

 直後、障子をへだてた隣室から「ぶほ」っという声が。

「はい?」

「気にするな。高久は?」

旗本はたもとです」

 旗本は主将の護衛団で今の感覚だと、親衛隊やSPが近いだろうか。

「良いな。応援しているよ」

「旗本にはどうしたら慣れますか?」

「助言したい所だけど、人事に関しては関与してないのよね。ごめんね」

「そうですか……」

 やる気に満ちていた高久は、しょんぼり。

「知ってても、選考試験の関係上、言えないのよ。だから、『頑張れ』としか現状言えんね」

「……義父上は権力者なのに、権力者らしくないですね?」

「真の権力者はお母さんよ。皆もお母さんには、逆らっちゃ駄目よ」

「「……はい」」

 リアルな口調に2人の顔から笑みが消えた。


 散々、飲み食いした2人にも徐々に睡魔が来る。

 やがて爆睡し始めた頃、障子が開く。

「……まだ子供ね」

「ですね」

 隣に居たのは上杉謙信と井伊直虎。

 それぞれ高久、直政を背負う。

「2人も飲む?」

「大丈夫」

「隣で子供の会話をさかなに飲んでいましたから」

 愛息あいそくが夫と一緒に飲み食いしている。

 それだけで幸せな光景だ。

 大河は立ち上がり、直政を奪い取る。

 そして、抱っこした。

「若殿?」

「愛妻に負担はかけられんよ」

「あら、私は~?」

「謙信は筋肉が―――」

?」

「何でもない」

 謙信に睨まれ、大河は肩をすくめる。

 一行は店を出て、馬車に乗り込む。

「……父上」

 大河の腕の中の直政は、寝ながら泣き始めた。

 実父・直親は掛川かけがわで今川家の重臣・朝比奈泰朝(? ~?)の襲撃を受けて殺害された(*1)。

 その為、実父との記憶がほとんどない。

「……」

 前夫・直親に嫉妬したのか、大河は優しく直政の頭を撫でた。

 すると、安心したのか、直政に笑みが戻る。

 馬車が進みだした時、直虎が隣に座った。

「心配ですか? 直政のこと」

「いいや。ただ、まだ子供だからね。他にも言えることだが、甘えたいなら気を遣わないで欲しいな」

「……起きた時、そう伝えておきます」

「私もよ」

 謙信も隣に座り、囁く。

「(私にも甘えなさいよ?)」

「分かってるって」

 頷いた大河は、謙信と直虎に接吻。

 そして、眠る子供たちの目の前で深く愛し合うのであった。


[参考文献・出典]

*1:歴史と文化の研究所編『井伊一族のすべて』洋泉社 2017年

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