第881話 連子会

 愛王丸が希望した飲み会は、秘書の楠らを通してすぐに大河にまで上がった。

「いいよ~」

 軽い感じで返答した大河は、そのまま連れ子たちを集めていく。

 大河の子供たちは、以下の通り。


・伊達政宗 (15):婿むこ:母・義姫 ※独立

・愛姫   (12):連れ子  :養母・上杉謙信 ※独立

今川範以いまがわのりもち(12):連れ子:母・早川殿

・愛王丸  (12):連れ子 :母・小少将

・井伊直政 (7):連れ子 :母・井伊直虎

・品川高久 (6):連れ子 :母・早川殿

るい(5):実子 :母・上杉謙信

・元康   (4):実子 :母・千姫

・猿夜叉丸 (4):実子 :母・茶々

・心愛   (3):実子 :母・お市

・西尾安信 (3):連れ子 :母・早川殿

澄存ちょうぞん(2):連れ子 母・早川殿

・璃子   (1):実子:母・橋姫

・陽菜   (1):実子:母・早川殿

・遥人   (1):実子:母・立花誾千代

・流星   (1):実子:母・アプト


 合計:16人(独立2人、実子8人、連れ子6人)


 実子の方が若干じゃっかん上回っているのが、現状だ。

 現代の日本において独立した2人を除く14人を夫婦で養うのは、余程よほどの収入と大きな家でないと難しいだろう。

 その点、多妻は妻たちが家事や育児を分担出来るのが長所メリットだ(当然、夫の参加も作業効率の向上になる為、参加した方がいいが)。

 流石にこれほどの大人数での来店は、厳しいものがある為、今回は年長者に限っての参加だ。

 参加者は6歳以上の以下6人。

 

・伊達政宗

・愛姫

今川範以いまがわのりもち

・愛王丸

・井伊直政

・品川高久


 連れ子のみで、実子は1人も居ない為、ある意味、かたよっていると言えるかもしれない。

「ちちうえ~。じゅーす、おごって~」

「良いけど、飲みすぎるなよ。皆も飲んでね?」

「「「「「はい」」」」」

 愛姫は元々、暫く一緒の時間を過ごしているだけあって、緊張感はない。

 一方、政宗は義父と居ること、他の4人は初めての飲み会に緊張気味だ。

 特に提案者の愛王丸は。

「……」

「おい、顔引きってるぞ?」

「あ、済みません」

「愛王丸が提案者だろ? ありがとうな。こんな機会設けてくれて」

 大河から謝意に愛王丸は照れる。

「精進料理もあるから食べ」

「はい、そうします」

 会食が始まった。

 

「はい、ちちうえ♡」

「ありがとう♡」

「貴方も♡」

「ありがとう♡」

 大河の膝の上で華姫は、養父と夫に唐揚げをあ~んする。

 左右には、範以のりもちと愛王丸。

 向かい側には直政、高久。

「……」

 直政は普段、軍事で指導を受けている分、肉系を多く注文し、爆食い中。

 高久は早川殿から普段食事制限を課せられている為、今回は飲み物を楽しみ中。

 範以は野菜料理に興味津々で、愛王丸は精進料理を摂っている。

「範以、そろそろ中等部だな?」

「はい」

「将来は考えている?」

「学問と和歌が好きなので、文官か研究者か歌人になりたいと思います」

「武士にはならない?」

「残念ながら、私にその才能は無いようです」

 うつむく範以。

 世間的に無能と評価されている氏真と同様の道を歩むのは、不本意のようだ。

「人間向き不向きがある。どの道に進んでも俺は応援するだけだよ」

「……ありがとうございます」

 安心したのか、再び範以に笑顔が灯る。

 愛王丸も言葉が欲しい。

「義父上、ご相談なんですが」

「うん」

「大陸に留学———」

「駄目」

「え?」

 言い終わる前に拒否された。

 思わぬことに愛王丸は動揺する。

「な、何故ですか?」

「治安悪いじゃん。平和になったらいいけど、そんな危険地帯に愛する息子を送るバカはどこに居る?」

「う……」

「留学は応援したいが、時機と行先は要相談だな。あと、勝手に行ったら縁切るから」

「……はい」

 厳しい口調だが、親としての愛を感じる。

(私は……愚かだ)

 愛を求めて浅はかに誘引ゆういんしたことを、愛王丸は後悔するのであった。

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