第645話 安居楽業

 が活発になる中、京都新城はいたって平和だ。

 外交では新たに、

・太陽王国

・オーストラリア大陸

 が飛び地となった。

 日本の領土面積は、37万7974㎢でこれは、世界の島国では4番目に大きい(*1)。

 余談だが、この面積は世界で2022年現在、第62位であり、

・ドイツ    第63位 35万7578㎢(*2)

・フィンランド 第65位 33万8431㎢(*2)

・イタリア   第71位 30万1336㎢(*2)

・イギリス   第78位 24万2495㎢(*2)

 と言った日本人もよく名前を聞くであろう国々よりも大きい。

 対して日ノ本は、

・北米

 現在のアメリカ本土とアラスカ州      第3位 963万1420㎢(*2)

 カナダ                  第2位 998万4670㎢(*2)

・太陽王国(現・マレーシア領ジョホール州)     1万9984㎢(*2)

・オーストラリア大陸            第6位 769万2024㎢(*2)

 と、所謂、飛び地が多い。

 これらを合わせたら、日ノ本の総面積は、2770万6072㎢。

 21世紀の世界最大の国家であるロシアが、1712万4442㎢(*2)なので、この1・6倍となる。

 もっとも、これらの飛び地は将来的に独立を想定した開発を進めている為、未来では、日ノ本の手から離れている可能性が高い。

 世界地図を見て与免と累は、仰け反った。

「「いっぱ~い」」

 広い、と言いたいのだろうが、2人の表現力の方が子供っぽい為、大河も一々いちいち否定はしない。

「そうだね。いっぱいだね」

 世界の総陸地面積は、1億4894万㎢(*3)なので、日ノ本は、世界の約5分の1、割合では、18・6%(※ロシアは11・5% *2)となっている。

 歴史的には、モンゴル帝国が最盛期(1265~1361年)には約2400万㎢、割合としては17・8%(*2)である為、日ノ本はこれより少し大きく、割合では同じ位だ。

 但し、『井の中の蛙大海を知らず』という諺が示す通り、これでも世界史上では、第2位だ。

 歴史上、最も大きな面積を誇っていたのは、大英帝国。

 その広さは、1918年時点で約3300万、割合は、驚異の22・6%(*2)。

 これは、

・カナダ     第2位 998万4670㎢(*2)

・オーストラリア 第6位 769万2024㎢(*2)

・インド     第7位 328万7263㎢(*2)

・パキスタン   第35位 79万6095㎢(*2)

 や、アフリカの北から南にかけても植民地を有した事から、これ程の広い面積を持つ事が出来たのであった。

 第二次世界大戦後は、その力を保つ事が出来ず、これらの国々は、続々と独立を果たした。

 累がオーストラリア大陸を指さす。

「ここ、きせつ、ぎゃく?」

「おー、よく知ってるな? 誰から聞いた?」

「えりーぜおかあさま」

 褒められた累は、笑顔を見せる。

「ぎゃく?」

 一方、与免は信じられない反応だ。

「うん。こっちが夏だと向こうは冬。だから、今は向こうは夏だよ」

「! そうなの?」

 (ノ・ω・)ノオオオォォォ-

 と、与免のテンションは爆上がり。

 自分の知らない世界を知れて嬉しい様だ。

「じゃあ、ここにいるひとたちは、いま、およいでる?」

「多分な。暑いだろうし」

 地域差があるものの、日本(日ノ本)と比べるとオーストラリアは、この時期、何処も暑い。

 ―――

 例 各地の平均最高気温と平均最低気温(*4)

 場所      12月  :  1月   :   2月

 シドニー  27・4 17・9:28・4 19・3:28・1 19・4

 メルボルン 24・2 12・9:25・9 14・3:25・8 14・6

 ブリスベン 29・2 20・3:30・3 21・3:30   21・4

 アデレード 22・3 15・6:29・3 17・1:29・4 17・2

 パース   28・9 14・9:31・7 17  :31・9 17・5

 ホバート  21・9 10・9:23・1 11・5:22・2 11・7

 キャンベラ 26・3 11・9:28・5 13・6:28・1 13・8

 ダーウィン 35・4 20・2:36・4 21・5:35   20・7

 ―――

 言わずもがな、以上は現代のものであり、16世紀とは同じとは限らない。

「およぎたい!」

 更に与免のテンションは上がる。

「あーでも、鮫が居るかもよ?」

「! 鮫が?」

 伊万と一緒に洗濯物を畳んでいた与祢が驚いた。

 仕事しつつも、会話に興味津々だった様だ。

「この海域にはね。鮫が沢山居るんだよ」

 オーストラリア沿岸に棲息する鮫は、約180種類(*5)。

 当然、世界最大級だ(*5)。

 この為、獣害事件も多く、1900~2016年までの統計では、オーストラリアで904件もの事故が起きている(*5)。

 この数字は、

 2位 南アフリカ 395件(*5)

 3位 ハワイ   230件(*5)

 な事を考えると、段違いだ。

 2015年には、日本人が襲われ、死亡する事故も起きている(*6)。

 日ノ本でも時々、沿岸に鮫が現れる場合がある為、与免は、恐怖心を抱いた様だ。

「さめ、こわい……」

 ガタガタと震え、大河に抱き着く。

「怖いね。でも自動車事故に遭うよりかは低いんだよ」

「そうなの?」

「ああ」

 大河は、にっこりと笑む。

 アメリカ人を基にしているものの、以下の様な資料が存在している。

 ―――

 アメリカ人が一生で遭遇する確率(*5)

・自動車事故     84人に1人

・自殺        119人に1人

・溺死       1134人に1人

・飛行機事故    5051人に1人

・鮫に襲われる  2万5641人に1人

・列車事故   15万6169人に1人

・火事     34万733人に1人

 ―――

「……でも、こわい」

 想像力が豊かな様で、与免の震えは止まらない。

(う~ん。こんだけ過敏とはな)

 困り顔の大河は、膝に彼女を乗せると、その背中を優しく撫でる。

 そして、優しく語り掛ける。

「大丈夫だよ。鮫に襲われても守るからね」

「ほんとう?」

「ああ、本当だ」

 伊万が壁時計を見た。

 もうすぐ始業の時間だ。

 大変言い難そうに与祢が言う。

「若殿、そろそろ陛下の下へ……」

「分かってるよ」

 与免を抱っこしたまま立ち上がる。

「ほへ?」

「ちょっと用事が出来たから一緒にな?」

 引き剝がす事も出来なくなくは無いが、先程、安心させた直後にそれは忍びない。

「与祢は、累を看てて」

「は」

「じゃあ、累。また後でな?」

 額に接吻すると、累は笑顔でブンブン手を振る。

「いってらっしゃい~」

「お供します」

 与祢が累の世話役になった為、自動的に専属の侍女は、伊万になった。

 与免を牽制する、という意味合いもあるのかもしれないが、彼女に邪心は一切感じられない。

「zzz……」

 大河に抱き着いたまま、いつの間にか眠っていた。

 狂喜乱舞→テンションがた落ち→安堵→熟睡

 目まぐるしい感情の変化に、大河は苦笑いだ。

 伊万が大河の袖を摘まんで、小声で提案する。

「(幸様、御呼びしましょうか?)」

「(有難いが、寝てるかもしれないからいいよ)」

 昨晩、幸姫等、一部のメンバーは夜遅くまで女子会に興じていた。

 夜更かしは美肌の天敵なのだが、若い時位しか、遊ぶ体力は無い。

 なので、大河もとがめないでいた。

「(……はい)」

 伊万は、小さく首肯する。

(いいなぁ。愛されてて)

 幸姫への配慮と与免への気遣いに、心底羨ましく感じるのであった。


[参考文献・出典]

*1:国土地理院 2022年3月23日

*2:ウィキペディア

*3:The World Factbook CIA

*4:オーストラリア留学センターbyDEOW

*5:オーストラリア留学ワールド 2016年12月20日

*6:AFP 2015年2月9日


 

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