第633話 言論ノ自由
『イスパニヤ女王・イサベラに、
イスパニヤは、ハロスの港を発して大海原を突き進む
これに対し、
「我、先に
と
果たしてその言葉に違わず、到頭一行は、ハイチへと辿り着くに至る。
永正3(1507)年の事であった。
そして、時は流れ、
父は姓を「
この
新大陸へと流される
まさかの事態に進退
無事、新大陸に到着した彼等の間に「
18歳になった
その帰路、夜の山中で、
そこに正体不明の男が現れ、
その男は、「
そこに村人を率いて
話聖東は、フランボレスの邸宅に招かれるのであった。
孝子・
母を見失った、探索の為に入った奥深い山中で、
事情を聴いた仙女は、眷属である巨大な
そして霊鷲の助けによって、
大蛇を退治した事を
これに対し、村人は投票を行い、多数決により
マヂサの娘、エヂセの婿になった
この後、出逢った3人は、13州を英から独立させる為に数々の豪傑や好漢を同志として「ひるぎにあ」の地へと集結するのであった』(*1)
―――
本書は、戯作家が書いたものである為、史実とは一部、相違がある。
例
コロンブスのハイチ到達 →1507年× 1492年〇
アメリゴ・ヴェスプッチの末孫はジョージ・ワシントン→×
ワシントンの父の名前はメリケン・ワシントン→× オーガスティ・ワシントン〇
ワシントンの母の名前はハリナ・ワシントン →× メアリー・ワシントン〇
ワシントンの両親は、英国育ち →× 米国出身〇
メアリー・ワシントンは英国王室勤め →×
ジョン・アダムズの母の死因は、獣害 →×
ジョン・アダムズは、結婚を投票で決定 →× 恋文の交換から結婚へ〇
等
……
16世紀には、アメリカは存在しない。
然し、歴史と言うのは不思議なもので、
こういうのが、出来るのは、『水滸伝』(14世紀)、『三国志演義』(14世紀)等の
「……無茶苦茶だね」
デイビッドを抱っこするエリーゼは、苦い顔だ。
本物のアメリカの建国史を知っている為、違和感が禁じ得ない。
「……発禁処分にしないの?」
「違和感はあるけど、言論の自由だからね」
日ノ本には、自由権が存在している。
今回、争点になるのが、以下の文言だ。
―――
『【日ノ本憲法 21条】
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない』(*3)
―――
この憲法があるからこそ、言論の自由が守られているのだ。
この結果、天保の改革(1841~1843)の際、弾圧の対象になった
流石に
それさえ出さなければ、基本的に政府は黙認している。
「よっと」
累と与免を抱っこする。
2人は、
「ち、ちうえ♡」
「さなださま♡」
2人して頬ずり。
「この子達が自由に楽しく過ごせる世の中には、自由権が必要だ。あの本も冒険譚と解釈すれば良い」
「……まぁ、そうだけど」
余り納得出来なさそうなエリーゼだが、それ以上の意見は無い。
デイビッドの頬を撫でる。
「ママ♡」
「うんうん♡」
エリーゼがデイビッドに集中した事で、大河も2人に集中出来る。
「ちちうえ、かれき」
「
首を傾げると、それまで見守っていた松姫が、助け舟を出す。
「(恐らく彼氏かと)」
「彼氏?」
「うん。かれし♡ わたし、かのじょ♡」
「わたし、あいじん♡」
4歳児が「彼氏」「愛人」と言うのは、余り教育上、良くない様な気がするが、全ての元凶は、大河の愛娘の1人、愛姫が原因だ。
子供ながら作家として活動する彼女は、驚異的な速度で次々と新作を書き、文壇にその名を
その作品の大多数が、大河が
大河が高校生で学園生活を謳歌したり、彼が歌舞伎役者でファンと禁断の恋をしたりと、沢山の恋愛小説が書かれている。
その殆どの相手役が愛姫なのだが、それは
それは、彼女の創作物であって、大河のそれではないからだ。
何も言わない分、愛姫は自由に書ける。
「彼氏が
「ちちうえは、たさい、だから」
「摩阿ね~さまがせ~さいで、豪ね~さまが、かのじょ。んで、わたしがあいじん♡」
累はジト目で睨みつけ、与免は、恐らくだが、意味を余り分からないまま言っている。
(難儀だなぁ)
苦笑いしつつ、大河は、2人を抱き締め、御飯事に付き合うのであった。
[参考文献・出典]
*1:『童絵解万国噺』 合巻 作・仮名垣魯文 版本挿絵・歌川芳虎 1861年
*2:原文では、ドイツ語読みの「ゲオルグ」
*3:e-Gov法令検索 一部改定
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