第625話 金亀換酒
万和6(1581)年1月4日。
大河は稲姫、姫路殿を連れて元康に会いに行く。
「元康。お早う」
「だ!」
元康は、元気よく手を上げ、大河の足にタックル。
「3歳になったな?」
「うん」
力士が鉄砲柱に向かって突っ張りを行う、
「お相撲さんになりたい?」
「うん!」
それまで神事の傾向が強かった相撲を大河が、興行化した為、相撲は子供にも野球や
主にアメリカでは、
・
・
・
・
が、
・相撲
・野球
・蹴鞠
は、ほぼ不動の地位を得た、と言えるだろう。
元康を抱っこして、顔を見る。
「じゃあ、将来は横綱?」
「うん!」
元気が良い返事に大河は微笑み、
「「可愛い♡」」
義母に当たる稲姫と姫路殿は、母性本能が
侍女に呼ばれた千姫が様子を見に来た。
「久々に父上と遊んで体力を余り考えなかった様ですわね」
「そうらしいな」
元康を気にしつつ、これからは、夫婦の時間だ。
大河は、千姫の膝に頭を預け、耳かきをしてもらいつつ、稲姫を抱擁し、姫路殿に腰を揉ませる。
まさに至福の時だ。
千姫が優しく言う。
「山城様、稲は寂しく思っています。もう少し接して下さい」
「分かってるよ」
「あ♡」
稲姫を抱き締めつつ、向かい側に居る甲斐姫、松姫、綾御前、井伊直虎、小少将の5人を見た。
「「「「「……」」」」」
5人は侍女の様に正座して、羨まし気に見詰めている。
付け入る隙が無い、という具合だ。
大河は目線を送り、5人を呼ぶ。
平等に愛する。
これが、多妻な大河の方針だ。
5人は目を輝かせて、近付く。
「も~私の時間なのに」
千姫は抗議するも、本気の口調ではない。
元康を産んだ為、心に余裕が出て来た様だ。
「松」
「は。千様、有難う御座います」
千姫と隣に松姫が座り、大河は、2人から耳掻きを受ける。
綾御前は大河の頭を撫で、甲斐姫と直虎はその足を揉み、小少将は耳垢を集めて捨てる形だ。
「綾は山城様とは?」
「はい。
「それは良かった♡」
千姫は、1人ずつ声をかけ意思疎通を図っていく。
彼女達は、義理の姉妹になり、中には、名家出身も居る。
関係悪化は、家同士の対立にもなりかねない。
昔は、
昼頃、大河は江戸城内の散策を始めた。
雪が積もった江戸城は、京都を拠点にしている以上、中々見れない光景なので、珍しさがある。
(スケート出来そうだな)
氷の中で固まった鯉を見つつ、大河は、冬のスポーツの興業化を考えていると、
「にぃにぃ!」
防寒着を重ね着した豪姫が駆けて来た。
「おお、今日は初めて会ったな?」
「うん。さがした!」
「元気だなぁ」
この寒い中、それ程元気なのは、羨ましい位だ。
大河が抱っこすると、
「あ~に~じゃ~!」
今度は、更に大音量なお江が走って来た。
大河にタックルし、
「あ、神社に行って来たの?」
「うん。春様とアプトと一緒に」
本当は、日光東照宮に全員で行く予定だったが、お江は待ちきれず、妊婦の2人と一緒に近くの神社に行って来た様だ。
日光東照宮への詣では強制参加では無い為、お江の様に先走っても別に構わない。
「大吉!」
「おお」
太くしっかり書かれたその2文字に、お江は自慢げだ。
「申し訳御座いません」
「安産祈願して来たんです」
勝手に行った事でお江が怒られる、と思ったのか、遅れて来た早川殿とアプトがフォローする。
「全然。ただ、そういうのは、止めないけど、事前に行ってくれ。警備上や、行方不明という事で大騒動になりかねいから」
考え過ぎ、だと思うだろうが、高位者になればなるほど、狙われ易いのは、世の
「「……はい」」
2人は、首肯した。
「全く」
やれやれ、と言った感じで身振り手振りした後、大河は
「この子達の事もあるからね。特に警備は、非常に重要なんだよ。分かってくれ」
「「……うん」」
2人の頬にも接吻し、大河は、今年中に生まれて来る我が子に思いを馳せるのであった。
妊婦を寒空の下、長時間立たせるのは、悪い為、直ぐに部屋に戻らせる。
もう少し一緒に居たいが、2人は、他の妻に気を遣う為、泣く泣く別れ、大河も自室に帰る。
そこでは、誾千代や謙信とお市、ヨハンナ、ラナ、マリアが甘酒を飲み、阿国が舞っていた。
流石にどんちゃん騒ぎ、という程でも無いが、それでも結構、酔っている。
謙信とお市は、トロンとした目で大河を見た。
「あ~浮気者」
「浮気者だ~」
2人に手招きされ、大河は仕方なくその間に座る。
「「えへへへへ♡」」
2人は、ベタベタと頬や太腿等を触りまくる。
「んしょ」
軽く酔っている誾千代も甘えて、大河の膝に乗った。
唯一、残った背後に、稲姫と井伊直虎は、目を合わせて、走り出す。
そして、ビーチフラッグの様に稲姫が先に到着し、背中の位置を確保した。
直虎は、目に見えて、悔しがる。
「ぐぬぬぬ」
徳川家康の重臣の2人で普段は同僚の仲なのだが、大河を巡ると、やはり恋敵になる様だ。
稲姫は、千姫許可の下、大河に甘える事が出来る様になった為、その愛情は一段と激しい。
「……♡」
肩甲骨をクンカクンカ。
頬擦りも忘れない。
誾千代と接吻後、大河は、司馬懿の様に首を回し、稲姫とも行う。
傍から見ればホラーな光景だが、多妻な分、複数の妻を同時に愛す得意技(?)を習得したのだ。
そんな大河の首に腕を回した謙信は、はぁ、と酒の臭いを吐きかける。
「おいおい、酒って三が日までじゃなかったか?」
「無礼講♡」
「じゃあ、明日以降は禁酒だな?」
「そんなぁ」
泣き上戸なのか、謙信はグスグスと泣き出す。
酒が絡むと、本当に子供の様だ。
死が身近にあり、又、アルコール依存症の概念が薄かった戦国時代では、酒を沢山飲んでもそれ程問題視されなかったが、平和になった今では『生』が重要視され、健康志向の高まりと共に、アルコール依存症は、余り好意的に見られていない。
愛酒家である謙信は、酒を手放すのは、やはり厳しい様だ。
涙ぐむ謙信に愛おしさを感じた大河は、その唇に口付け。
「……酒の味がするな」
「禁酒は、絶対?」
「今日までは良いよ。でも、長生きしてもらいから、明日以降は、控えめにな?」
「うん!」
大河の許可が出た所で謙信は、酒を呷る。
「「鼻毛」」
誾千代とお市から責められ、大河は縮こまるばかりであった。
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