第425話 予防拘禁
小野忠明は、『睾丸破裂』と診断された。
「殿、仇討を」
「ならん」
里見義頼(35)は、ばっさり。
前年まで、長兄・里見義弘と対立していた為、疲労困憊顔だ。
前年に義弘が急死した事で、その対立は無くなったが、対立自体が収束した訳ではない。
「すぽーつちゃんばら、なる物はよく分からないが、結局は貴様が、
「……では、辞めさせて頂きます」
「何?」
「協力して頂けないのであれば、辞めます。では」
辞表を提出し、出て行く。
「……」
その無礼さに、義頼は呆気にとられるばかりであった。
「『―――この度の御無礼、誠に申し訳御座いません』」
謝罪文を読んだ大河は、与祢に回す。
「……興味無いです」
「分かった。鶫」
「は」
大河から受け取り、マッチで燃やす。
「主、良かったんですか?」
「焼却処分する事は無いかと」
「関わりたくないのが、本音だよ。それに、あの性格上、この謝罪文は、無意味になるだろうから」
「と、言いますと?」
「逆恨みだよ。十中八九、復讐に来る」
びくっと、与祢が、反応した。
「大丈夫。心配する事は無いよ。何なら、俺の傍に居て良いから」
「じゃあ、そうさせて頂きます」
大河の腹部に抱き着く。
「もー、与祢は朝から元気ね?」
「本当。嫉妬しちゃう」
昨晩、
与祢を彼女達は、娘の様に可愛がっている。
よく働き、勉強家でもある婚約者を、誰が嫌う事が出来ようか。
大河の行動を逐一報告してくれる。
天井裏から鶫が、ひょっこり。
「若殿……」
ちょっと怖い。
「鶫も来る?」
「お願いします」
しゅたっと降り立ち、大河の布団へ。
正妻に配慮して抱き着く事は無い。
「それで、対応するの?」
「勿論だよ。誾」
大河は、誾千代の頬を撫でる。
「相手が攻撃してから反撃する程、俺は優しい人間じゃないから」
日ノ本には、大河が組織した国家保安委員会したそこかしこに配置され、反体制派の監視活動に当たっている。
山城真田家に近付く者は、監視対象になり、忠明も今回の件で危険人物に認定された筈だ。
今後は行方不明or事故死になると思われる。
「大河ってさ。鬼だよね?」
謙信は、大河の頬に触れつつ、言った。
「鬼?」
「そ。可愛い顔して、やる事えげつない」
「それが長所だろ?」
「馬鹿♡」
大河に接吻され、謙信は真っ赤になるのであった。
反体制派が、例え子供でも容赦しないのが、大河の方針だ。
危険思想を植え付けられた子供は、矯正し難い。
中には、麻薬で自制心を排除させられた上で残虐行為に走らされる場合もある。
大河が知る残虐な事例では、アフリカで少年兵が赤ちゃんを岩に叩き付けて、殺害した事だ。
大河も殺人は好むも、流石に赤ちゃんを標的にする程、腐ってはいない。
この様な現実がある以上、大河は、例え相手が子供だろうが、容赦しないのだ。
全ては、こちらが生きる為である。
その為、危険分子と見なされた子供は、予防拘禁の対象者となる。
忠明も幼いが、それに指定された。
「この制度って、治安を維持出来るけれど、人権侵害でもあるね?」
誾千代が指摘する。
「そうだな。だから、慎重にしたい」
偏執病の気がある大河は、念には念を入れよ、だ。
不審者と判断した以上、監視させるのが、やり方である。
「悪だね?」
「何が?」
「黒幕だよ。貴方は」
この手の事は、当然、近衛大将の権限ではない。
内務大臣(現・国家公安委員長)が判断する事案だろう。
「私も監視対象?」
「そうだよ。だから、一緒に居るんじゃないか?」
「もう嫉妬深いわね?」
2人が居るのは、お風呂だ。
不妊症な誾千代を
大河は極力、一緒に居ようとする。
誾千代の膝に座り、彼女の手をもみもみ。
「いつから
「今だよ」
「兄者、子供みたい」
平泳ぎをしていたお江が笑う。
「子供だよ」
「きゃ♡」
お江は捕まり、大河の膝に座らされ、接吻されるのであった。
[参考文献・出典]
*1:HUFFPOST 2016年4月3日
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