第423話 万寿無疆
京都が首都の為、当然、現代日本とは、何もかもが違う。
・上京 →東京に行く事 ×
京都に行く事 〇
*上洛と同義。
・東京都 →存在しない言葉。
・
明治時代に名古屋市=東京市(現・東京都区部)~京都市の間に在る
事から、呼称され始めたが、ここでは
同じ事もある。
その一つが、『小京都』だ。
現代では、昭和60(1985)年に『全国小京都会議』が京都市を含む27市町により、結成された。
その加盟基準は、昭和63(1985)年(昭和60年)に次の様に定められた。
・京都に似た自然と景観
・京都との歴史的な繋がり
・伝統的な産業や芸能がある事
以上、三つの要件の一つ以上に合致しておれば常任幹事会で加盟を承認される。
全国京都会議には小京都の他、「本家」の京都市も参加し、事務局を同市観光協会内に置いている。
加盟数
最盛期:平成11(1999)年度 56市町
現在 :令和2(2020)年6月時点 41市町
退会理由としては、
・財政難や観光客誘致への短所が乏しい
・歴史的に城下町として発展した歴史等に鑑みて「小京都」としてではない
等が、挙げられる。
又、古い街並みでなく、京都との歴史的繋がりで加入している自治体もある(*1)。
一方で、全国京都会議に加盟していなくても、観光宣伝目的や自然発生的な自称・他称の「小京都」は多い(*2)。
一方、異世界・日ノ本でも『全国小京都会議』ならぬ『全国小京都認定協議会』が設立された。
その名誉会長は、大河だ。
京都出身ではないが、京への貢献度から選出されたのだ。
当初、大河は丁重に断る予定だったが、朝顔から「名誉だからそこまで深く考える必要無くない?」との鶴の一声で、今に至る。
協議会での仕事は無いのだが、会長なので知らない人からは、仕事が舞い込む。
「申請書か?」
「貴方も大変ね?」
誾千代が肩を揉む。
日々、忙しい大河に同情的だ。
「やっぱり、憧れるかね?」
「多分ね。豊後からの移住者も多いみたいよ」
「そーそー。越前からも」
「ハワイからも多いわよ?」
幸姫、ラナも同意する。
京都の人口は、毎日、数百人単位で増加傾向にある、とされる。
医療も世界最先端なので、
・乳児死亡率 世界最小
・平均寿命 世界最長
となっているので、必然的だろう。
「ハワイから? 移住は、大変だろう?」
「うん。だから、日系人の日本語教室が人気なの。今、陛下が日本語を公用語に加える事を検討しているわ。日系人は嫌がっているみたいだけど」
「だろうな」
日本には、『郷に入っては郷に従え』という
好意は嬉しいが、公用語にする程の事ではないだろう。
余談だが、世界で一つだけ、日本語を公用語に指定している地域がある。
パラオのアンガウル州だ。
アンガウル州では、憲法第12条にて、
・パラオ語
・英語
と共に日本語が公用語として明記されている。
これは、第二次世界大戦前のパラオが日本の委任統治領であった歴史的経緯に由来するもので、日本語が公用語に定められている唯一の事例である(日本は法令によって公用語を規定していない)。
但し、現在のアンガウル州には日本語を日常会話に用いる住民は存在せず(*2)、象徴的なものに留まっている。
ベトナムでも日本語教育が熱い(*3)。
この異世界でも、海外での日本語教育が盛んだ。
台湾や日ノ本の一部になったアラスカ、
ラナは大河の抱き着いては、甘える。
「そんな事より、さ。遊びに行こうよ」
「どこに?」
外は、大雨。
流石にこの天気での外出は、難しいだろう。
「お城の中を歩くのも良いじゃない?」
「散歩って事か?」
「そうともいう」
「じゃあ、そうし様かね」
申請書をゴミ箱に放り、大河は、立ち上がる。
勿論、誾千代の手を握って。
「私も?」
「そうだよ。嫌なら無理強いしないけど」
「行くわよ。正妻だし」
正妻の部分を強調し、誾千代も立ち上がる。
「私は?」
左右の手を誾千代、ラナが、握っている為、幸姫の付け入る隙が無い。
「あるよ」
大河が背中を促す。
「良いの?」
「良いよ。負んぶ位」
「分かった♡ 有難う♡」
長身女性を負んぶするのは、途轍もない筋力が必要だが、訓練代わりにもなる。
それに幸姫は、その体格から自重しているのか、他の女性陣と比べると、甘える事は少ない。
なので、大河は、人一倍気遣う必要があった。
大河に全身を預け、幸姫は、目一杯甘える。
「えへへへ♡」
久々に見た笑みに大河も又、心が晴れやかになるのであった。
万和4(1579)年8月1日。
主治医から、『快癒』の診断を受けた大河は、職場復帰する。
「「「……」」」
付き添いなのは、
・朝顔
・謙信
・お初
・お江
上階からは、
・エリーゼ
・茶々
・千姫
・お市
が、それぞれ、子供を抱いて眺めている。
(心配性だな)
内心で苦笑いしつつ、大河は、前を見た。
・弥助
・左近
・武蔵
・孫六
・アプト
・鶫
等、忠臣から戦闘系侍女まで幅広い家臣が、待っていた。
代表して、左近が言う。
「上様、御待ちしておりました」
「有難う。じゃあ、記念に10里(40㎞)、走って来い」
「「「え~」」」
見るからに不満げ。
大河の復職を皆で祝いたかった様だ。
あわよくば、休日化を期待していたのかもしれない。
「そうか。じゃあ、100里(400㎞)―――」
「「「は!」」」
皆、走り出す。
全員、泣きながら笑顔だ。
訓練は嫌だが、大河の復職を心から嬉しがっているらしい。
年少を理由に免除された与祢は、震える。
「10里は流石に……」
フルマラソンの女子世界記録は、ケニア人選手が持つ、令和2(2020)年12月6日現在で2時間14分04。
女子ではないが、日本のマラソンの歴史が始まったのは、国際オリムピック大会選手予選会(1911年)の事であるから、彼等が完走出来るのは、難しいだろう。
然し、大河は訓練に関しては、スパルタなので、無理をさせてでもさせるかもしれない。
「与祢も走りたかった?」
「い……は、ぃ」
「素直で良いよ」
微笑んで、大河は抱っこ。
「真田―――」
「分かってるって」
朝顔に睨まれ、大河は冷や汗を吹き出しつつ、同じ様に膝に座らせる。
復職直後でも尻に敷かれるのは、予想通りであったが、まさかこんなに早いとは思わなかった。
大河は、2人を抱き締めつつ、激励する。
「完走出来たら、
「「「!」」」
急にヤル気が出た家臣団は、速度を上げた。
あれがどれだけ保つかは不明だが、猛暑の中のマラソン後の
「……」
与祢も涎を垂らした。
まるでパブロフの犬である。
大河は2人を抱き締めつつ、小太郎に「
[参考文献・出典]
*1:朝日新聞 2018年7月21日
*2:2005年度パラオ共和国国勢調査 パラオ共和国統計局 2005年12月
*3:産経新聞 2016年3月2日
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