第411話 孟母三遷
お市の出産が近付く中、大河は出産予定日に間に合わせる為に残務処理を行う。
近衛大将は
「比較宗教学、か」
「どう?」
デイビッドを抱っこしつつ、エリーゼは言う。
元康に母乳を与えている千姫も、その提案書に興味津々だ。
「山城様、沢山の宗教の勉強になるのでは良いんじゃないでしょうか?」
「……そうだな」
一流大学では、比較宗教学をカリキュラムに加えている為、国立校でも導入しても良いのだが。
大河が危惧しているのは、教え方次第では、宗教対立を招くのでは? と考えているのだ。
・神道
・仏教
・キリスト教
・イスラム教
・ユダヤ教
……
どれも宗派がある。
神道やユダヤ教では、宗派の間でそれ程対立は無いがのだが、
・仏教 →国立戒壇論争
・キリスト教→
・イスラム教→シーア派VS.スンニ派
と、仲が悪い。
その為、どの教義を採用するかによっては、国立校自体が宗派間対立に巻き込まれる恐れがあるのだ。
教員もレベルが高い者を採用しなければならない。
低レベルな者を採用し、誤った教義を講義すると、当然、生徒は、誤解しかねない。
(イスラム教は、
能力だけでない。
人格も重要視しなければ、反ユダヤ主義者や反イスラム主義者等を採用してしまうと、教員同士で対立してしまいかねない。
人事は、現場に任せているが、流石にこれ程制約があるのは、現場でも厳しいだろう。
累を抱いた謙信が右隣に座る。
左は、猿夜叉丸を抱っこした茶々だ。
保育所は別にあるのだが、学長室が、その様になっている学校は、珍しいだろう。
「ぱ、ぱ」
漸く言葉を話せる様になった累は、大河の胸に飛び込む。
「おお、元気だなぁ?」
「だいちゅき♡」
「俺もだよ。でも、母乳は出ないぞ? 出すのは、精―――」
「死ね」
「ぐふ」
謙信から手刀を食らい、大きなたん瘤が、出来た。
子供相手に最低な下ネタであったが、殺人未遂事件に発展するとは思わなんだ。
「だいじょーぶ?」
累が、たん瘤をヾ(・ω・*)なでなで。
バスケットボール位の大きかったのに、どんどん小さくなり、たこ焼き並のそれになった。
子供ならではの不思議な力である。
「うん。大丈夫だよ。ママは怖いね?」
「あん?」
「何でもないです」
”軍神”は、家庭では、不良少女だ。
ロングスカートで、マスクを着用し、煙草を携帯していたら、スケバンである。
茶々が苦言を呈す。
「今のは、真田様が悪い」
「そうだな。反省するよ」
「ぱぱ、はんせ~」
大河のシュンとした様を見て、累は嬉しそうだ。
「それで、皆、勉強の方はどうなんだ?」
「大丈夫ですわ。休学で済ませています故」
「通信もありますしね」
現代では、女子生徒が妊娠した場合は、退学する場合が多い。
文部科学省が、2018年3月に発表した資料によれば、
・全国の公立高校が把握している生徒の妊娠の実例2098件
・その内、約3割の674件で自主退学
・又、その中には学校から自主退学を勧めた事例が32件
あった。
退学処分が許される事例は、
『【学校教育法施行規則第26条第3項】
1、性行不良で改善の見込がないと認められる者
2、学力劣等で成業の見込がないと認められる者
3、正当の理由が無くて出席常でない者
4、学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者』
―――
10代での妊娠・出産が珍しくないこの時代、女子生徒も安心して通学する為には、当然、この様な自主退学文化を国立校は、採用していない。
逆に生徒が妊娠すれば、給食に赤飯が出て、学校全体で祝う位だ。
保健の授業でも、生徒が体験者として講師になる事が出来る。
出産すれば、保育所で乳母や保育士の雇用も生まれる。
それに伴い、女性の社会進出も進まり、失業率も減っていく。
学校だけで、
・勤労
・教育
・納税
の内、二つをクリア出来るのは、国立校だけだろう。
今後、大河は、国立校をモデル校に全国各地に同じ様な学校を創って行きたい考えだ。
千姫、茶々は、それぞれ乳母車に愛児を乗せて、
「山城様♡」
「そろそろ第二子の方を」
それに誾千代は、ムッとする。
「もう少し育児に集中しないの?」
「何を仰いますの? 徳川家の跡取りは産みました。この調子で次は、当家の跡継ぎを産まなければ」
「誾様もそう仰らずに。後継ぎの候補が沢山居れば、安泰でしょう?」
現時点で大河の子供は、
・政宗
・華姫
・累
・元康
・デイビッド
・猿夜叉丸
の6人。
予定では、
・政宗 →伊達家次期当主
・華姫 →伊達家に嫁入り? *山城真田家継承権無し
・累 →上杉家次期当主?
・元康 →徳川家次期当主?
・デイビッド→?
・猿夜叉丸 →浅井家次期当主
の為、最有力候補は、デイビッドであるが。
「……」
エリーゼを見ると、彼女は首を横に振った。
デイビッドは、今まで一度も
山城真田家当主になれば、
大河も同意見だ。
本人次第ではあるが、彼の適職は、
お市ももうすぐ産むが、女児は、織田家に行く可能性がある。
なので、出来る事ならば、まだまだ子供は欲しい所だ。
「まずは、小学校入学まで育てなさいよ」
正論だろう。
6歳になれば、授業が始まり、学校に行っている間は、育児をする事は無い。
その間、大河を独占すれば良い、というのが誾千代の意見だ。
然し、2人も育児が落ち着いてきた分、この調子で第二子を望む気持ちも分からないではない。
「「「……」」」
3人は、睨み合う。
険悪な空気だ。
普段は、仲が良いのだが、両者共、家を想っての事なので、間違っているとは言い難い。
「其処までだ」
いつもおちゃらけている大河だが、この時ばかりは、真面目な顔で、
「2人の気持ちは分かる。でも、誾も我慢しているんだ」
「山城様―――」
「真田様―――」
「
一睨みした後、大河は、誾千代を抱き締める。
「第二子については、本妻の許可が下りない限り、認めん。その間は、避妊だ」
「「え~」」
「家訓、忘れたか?」
「「あ」」
言葉を発さずとも、鶫が、家訓が書かれた巻物を解いて見せる。
『第1条 家長は常に正しい
第2条 家長が間違っていると思ったら第1条を見よ』
この
「俺の最優先事項は、誾だ。話は以上だ」
格好良く(?)宣言する大河であった。
「―――ってな事、あったんだ」
「主は、純愛ですな」
「そうそう。そこが、私も惚れたんだよ」
その夜、愛人三人衆は、同衾していた。
鶫が右端、小太郎が真ん中、ナチュラが左端だ。
正妻より地位が低い愛人がこうしているのは、単純に1人だと寂しいからである。
正妻達から虐めを受けている、という訳ではないが、やはり、見えない壁を感じ、お互い距離を作っているのは、否めない。
多数派の正妻に対し、愛人は僅か3人のみ。
3人は念の為ではあるが、極力一緒に居るのだ。
「私も誾様の許可を頂ければ、子種が貰えるかな?」
「どうでしょう? ラナ様が優先されるかもしれません」
「姉様かぁ。折角だし、姉妹丼として貰ってもらおうかな」
姉妹丼は、三姉妹から教わった。
何でも、大河は、姉妹を一緒に交わるのが、とても好みなそうな。
母娘丼でもノリノリな様に、その性癖は、途轍もなく広い。
この時代、熟女扱いのお市を平気で抱くのだから、年上もイケる口なのだろう。
「鶫、主って上は、何歳までイケるの?」
「35歳らしいですよ」
「あー、だから市様は、焦っているのか」
35歳は、妊娠し辛くなるポイントの歳でもある。
今年で32歳になるお市が優先的に交わり、結果、妊娠出来たのは、大河の性癖と配慮も一因かもしれない。
お市の次に最年長なのが、エリーゼだ。
来年30歳。
若しかしたら、次に寵愛を受けるのは、彼女の可能性もある。
「私達もいつ
「そうだね」
「そうね」
3人のキャッキャウフフなガールズトークは、その晩、遅くまで行われるのであった。
[参考文献・出典]
*1:ウィキペディア
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