第14話 湮野 綯と桑部 檸 ②
「「ホッ……。」」
ほとんど同時にスイーツを食べ終えた2人は、奇跡的なタイミングで奇跡的にハモった。
「2人とも仲良いんだな。」
「な、何を仰いますか
ふと思っただけなのに、懇切丁寧な敬語で反論されてしまった。
しかも
確かに一時期は
……可愛いしね。
そんなことを考えている内に、
「
「"さん"付けしなくても呼び捨てで良いですよ、
いや、後輩としてあだ名で呼ぶのは失礼だろ。
と思ったものの、皆 基本的に"琹"としか呼んでくれないし1人ぐらい良いか。
座敷席を出ていく
「気をつけてね、
「はい、出来るだけ善処します。」
優しい上司の様なスタンスをとった
「さて、
机を挟んで向かい側に座っている
「
「す……!?」
単刀直入すぎて最早笑ってしまいそうなほど唐突な話題だった。
物凄くテンパってしまったが、大体いきなりこんな事を聞かれてテンパらない奴はいないだろう。
「いや、ま、まだ会ったばっかりだし実際そんなに話してないし、それに……」
「どっちですか?」
「……嫌いじゃない、かな。」
どっちつかずな答えになるのも無理はない、何せまだお互いに認識して1週間も経っていないのだから。
「じゃあ、逆に
仕返し、というかワンチャンあるとか思って質問を返す。
「私ですか?私は……"嫌いじゃない"って言われた事が嬉しいです。」
「……?」
質問の答えになっていない気がするけど、まぁ彼女なりに誤魔化したんだろう。
うーん、むず痒い。
「じゃあ、もし俺が好きだって言っ……!?」
セリフはわざと止めた訳じゃなく、言ってしまえば"止められた"のだ、彼女に。
……いや、彼女の人差し指に。
「"好き"でもない、いたいけな女の子にそんなこと言ったら勘違いしちゃいますよ。」
俺の言葉を人差し指(と俺の理性)で止めた彼女は、そんなことを言う。
紅潮した頬だけでなく、優しい目が嘆かわしいほどにあざとかった。
これが世に言う、"尊死"か……。
と、次の言葉を考えていた刹那の事。
座敷の
「
言葉を止めると、
濃厚接触をしていた2人は、あまりの恥ずかしさにたどたどしく正座をするしか無かった。
そしてその後、俺の昼飯が運ばれてくることは無かった。
***
ここは、staff《スタッフ》 only《オンリー》なロッカールーム。
「
「……お疲れ様です、
何か、気まずい。
それに今の俺は、バイト終わりの安らかな気持ちに浸れる気分でもない。
「
「何か勘違いしてません!?」
恥も外聞も捨てきれない俺にとって、この事件が広がってしまうと致命傷だ……。
……あいつの所に行ってみるか。
大変な今日だが、まだまだ
パーカーを着て、ふと思ったままに行動することにした。
***
今 俺は、閑静な住宅街の中に建つ一軒家の前に居る。
ピンポーン。
と、済んだ音が鳴る。
つまりここは、
「何だ、
ドアを開けると同時にそんなことを言う
逆に誰が来ると思っていたのか地味に気になる。
「まぁ、とりあえず入れよ。」
促されるままに家の中に入った。
何気に中に入るのは、これが初めてだ……。
玄関から入ってすぐにある階段を上って、廊下の先にあるドアを開けた。
部屋の中は……言うなればアイオタみたいな異質感が漂っていた。
見渡す限り幼女、少女、ロリ……2次元や3次元を問わずにポスターやフィギュア、タオルに至るまで埋め尽くされてる。
しかし、男のものとは思えない程に綺麗な部屋だった。
「やっぱり……帰るわ。」
まだ入ってはいないが、恐らく正気を保ったまま足を踏み入れるものはいないだろう。
「おい、どうしたんだ?」
それはこっちのセリフだろ、どうしたらこんな
「分かった、分かった……入るよ。」
渋々、いや苦渋の決断で入ることに決めた。
案の定、というか当たり前だが少しだけ開いているクローゼットにはグッズが沢山入っているのが見えた。
「で、今日はなんでうちに来たんだ?」
「実は、そろそろ本気で行動しないとヤバいと思ってさ……。」
「なるほど。」
実際問題、あと2週間で春休みになる。
そうなってしまえば、皆と会うことも減るだろう、そうなれば捜査は難航してしまう可能性がある。
そう伝えると、
「そうなると、イベントを作るしかないな。」
インドア派の
「イベント?」
「そう、BBQ《バーベキュー》でも観光でもいい、皆を誘って何かをするんだ。」
まぁ、確かにイベントはそういうものだろうが……。
「でも、なんでこのタイミングで、イベントなんかするんだ?」
「ボロだよ、ぼろを出させるんだ」
「ほとんど一日中一緒にいるんだ、浮かれた状態で会話をしていれば、あるいは行動していればボロの一つや二つ出るさ。」
「そんなに簡単に行くかなぁ。」
疑問は残りつつも計画は進んで行き、徐々に日も暮れて18時になった。
「つまり全員が納得して、心から楽しむ為に皆に行きたい所を聞いてくればいいんだな?」
"心から楽しむ為"とかいう、小学校の遠足のスローガンみたいなことが今回の目標だ。
「ちゃんと聞いてこいよ?ちなみに俺も行くけどな。」
「あぁ、わかった……けど、なんで
前々から思ってはいたが、そこが不思議な所だった。
別に給与がある訳でも無いのに、時間を割いてまで協力する必要はないし……。
「"なんで"って?そりゃ決まってんだろ、ロリっ子の為さ。」
「ロリっ子って、誰のことだ……?」
まさか、グッズやチケットを買わされたりするんじゃないだろうな?
ただでさえバイト代から2万円は家に献上してるのに……。
「え?ロリっ子はお前の妹の事だけど……。会わせてくれるって言ったじゃん。」
と、
「ぬっ……確かに言ってたけど、その為だけに?」
「"だけ"じゃない、ロリは俺にとって9度の飯より大事なんだからな。」
人の3倍もロリのことを考えているらしい
妹もたまには役に立つんだなぁ。
─────────────────
■作者より
この時期にインフルB型により1週間弱も休みました、すみません。
相変わらず検査は、鼻に"ロンギヌス検査キッド"を突き刺す行為でしたがコロナでなかったので良かったです。
インフルの検査って痛いよね。
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