第2話 ドライブ


 久しぶりの運転は楽しかった。車はどんどん前に進む。思わずアクセルを踏み込みすぎて、減速する。

 運転席の浮遊感は藤巻を笑顔にした。

 昼間の空を見上げるのも久々だった。

 高層ビルに囲まれた高層ビルの社内で過ごす毎日は、藤巻の望んだものだったのに、その生活に楽しさも充実感もやりがいも何も見つけられなかった。

 でも、そういうものなのだろう。周囲の人間はそれでも文句もいわずに、結婚をし、子供を育てている。

 あの日々を失えば、あの日々に戻りたいと思うのだろうか。

 藤巻はアクセルをぐいと踏み込む。そんなふうに思う日々はきてほしくないと思った。

 藤巻は北に車を走らせている。

 行ったことのない土地に行ってみたいと思ったのだ。

 目的はない。

 お金は少しはある。借りた車との相性もよく、運転は楽しい。どこまでも行けそうな気がする。

「学生かよ」

 藤巻は顔をのぞかせた自分の青さに思わず苦笑した。

 視界の端に派手でやたらとでかいパチンコ屋が飛び込んでくる。

「久々にやりますか」

 藤巻は、ほんとに学生に戻ったみたいだなと思いながら、これまたどでかい駐車場に車を止めた。

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