第25話 目覚めと激痛
ライカがアリスの弟子入りしていた頃、ノアが目を覚ました。
「ん・・・ここは?」
ボクが目を開くと白い見たことのない天井だった。ボクは記憶を思い返してみた。
「確かボクはアンさんとクレイジーエイプを倒して、その後・・・ダメだ思い出せない」
恐らくボクは、その後何かにやられてアンさんに連れて来られたのだろう。つまり、ここは病院なのか?
ボクが体を起こそうとすると。
ズキッ
「痛い!あばらが折れているのか・・・?」
ボクのお腹、あばらの部分に激痛が走った。
ボクが痛みに悶絶していると、病室?の扉が開いた。
「やぁ、ノア君。やっと目を覚ましたのね」
「えっと、おはようございます」
「もう夕方よ?ノア君、あなたは丸一日眠っていたのよ」
「丸一日もですか?」
「えぇ。それでノア君、昨日の事覚えているかしら?」
「昨日の事ですか?それがクレイジーエイプを討伐してから覚えていなくて・・・」
「違うでしょ?」
「え?」
「私と婚約したでしょ?」
「なっ!えっ?ちょっ!」
「冗談よ」
「アンさん、さすがにそれは酷いですよ?ただでさえ昨日の記憶が曖昧なだけに」
この人は急にとんでもない冗談を投下してきた。ボクの慌てっぷりに満足してか嬉しそうだ。
「私を心配させた罰よ。元気そうでなによりだわ。でもあと1日は絶対安静よ。ノア君、あなたのあばらは4本も折れていたし、外傷は無くても内臓のダメージがあるんだからね」
「そんなに酷い状態なんですか?昨日ボクに何があったんですか?」
「ノア君は、ヌエにやられたのよ。あなたはヌエの雷に痺れ、その時にお腹を蹴られ、気を失ったわ」
ボクは雷に痺れと言われ、昨日の事を思い出した。そうだ、ボクはチャンスと思っってヌエの背中に切りかかろうとしたんだ。その時にやられた。
「でも、ノア君の魔力量を増加しておいて良かったわ。身体強化もかなりレベルが上がっていた、だから死なずに済んだのよ」
「つまり、アンさんとの修行のお陰で、今ボクは生きているんですね」
「なんか大袈裟だけどそういう事になるのかな」
アンさんは少し頬を赤く染め、指で頬をかいた。
「でもね、ノア君。私がヌエの事をもっとしっかり伝えるべきだったわ。特に雷と蛇の尻尾から出される毒のブレス。これは伝えなければいけない事だった」
「あの戦闘中にそれは難しかったと思います。それに結果的にヌエはボクに毒のブレスを吐かなかったので・・・」
もし毒のブレスをくらっていたらもっと深刻な状態になっていただろう。ボクはそれを想像して身震いをした。
「結果だけ見ればそうね。でも、ノア君は私とパーティーなのよ?怪我をしたらもっとこうすれば良かったってなるわ」
ボクはアンさんとパーティーであり、心配されている。嬉しいような、まだ守られているようで悔しい気持ちだ。でも、今は喜んでおこうかな。
「ボクもアンさんが怪我したら心配しますし、気が気じゃなくなると思います。だからアンさんの気持ちはわかります」
「私も怪我できないわね。これからは魔物の情報はしっかり伝えるわ」
「お願いします。特にBランク以上の魔物はほとんど知らないので」
「わかったわ。あら、もうそろそろ治療の時間ね。頑張ってね、ノア君」
「え?頑張る?」
ボクは今まで大きな怪我をしていなかった。そしてこれから起こる事を予想できなかった。
ボクは白魔法の治癒、ヒールをかけてもらい、病室内、いや、病院全体にボクの悲鳴が響き渡った。
あまりの激痛にボクは気を失った。
翌朝、ボクとアンさんは今後の修行について話をしていた。まだボクは安静にしなければいけない。正直、もどかしい。
「ノア君がヌエと戦っていて武具纏を教えた方がいいと思ったの」
「でも、ボクはまだ動けませんよ?」
「そうね。無理に魔力を使っても怪我の治りが遅くなるしね。だからイメージの練習よ」
「イメージですか?」
「ノア君、あなた今、イメージで何か変わるのか?って思ったでしょ?」
「え?そ、そんな事は・・・」
「目が泳いでいるわよ」
しまった。あまりに図星過ぎたから焦ってしまった。
「ノア君の今の戦い方は私を参考にしているでしょ?私がいなかったら想像すらもできなかったでしょ?」
「そ、そうですね。あんなに美しい剣術はボクからは出てこないと思います」
「そう。つまりノア君は私の戦い方、剣術をイメージして、できているってわけ。イメージって大事でしょ?」
「はい。今の説明で納得できました。でも、どんなイメージですか?身体強化みたいに体の内からという感じですか?」
「そうね。大体一緒だけど、身体強化と違って武器の耐久も考えなきゃいけないのよ。また同時に発動した時にわかるわ」
どうやら同時に発動するとなにか問題があるらしい。でも使いこなせれば強固な相手にも戦えるようになり、戦闘の時短にもなる。
「アンさんに心配されない為にも頑張ります!」
「うん!良い返事でよろしい!」
ボクは早速イメージの練習をする事にしたのだった。
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