第24話 アリスとライカ その三
ライカ、サイド。
時はアリスがライカの家を出て行った時に戻る。
「あの人、アリスって名乗った・・・エルフのアリス・・・もしかして万能の賢者アリスなの?」
私はノアがそんな人と知り合いだなんて知らなかった。
「まさかそんなわけないよね・・・」
さすがにそれは思い違いかな?私は同性同名同種族だという事にした。
「オッズさんのことを調べてまた来るって、私に修行をつけようともしているみたいだし、どうなっちゃうのかな・・・」
私は破壊された扉を見て、不安になった。
アリス、サイド。
「やっぱりオッズは薬を使ったか。これならノアに話しても大丈夫だな。信じなかったら、あの婆さんを引きずってノアの前で吐かせればいいしな。それにこれで幼馴染、ライカの説得材料になるな」
オレ様はニヤニヤと笑いながらライカの家の近くまで戻ってきた。
「そういえば、扉壊したままだったな、いろいろ大丈夫だったかな」
心配しながらライカの家の前までやって来た。扉があったところには、壊した扉が一応、存在していた。でもボロボロの穴だらけだったけどな。正直、防犯と無縁な感じになっていた。扉のすぐ後ろには、中が見えないように布が、のれんのように垂れ下がっていた。
「あの屍のようなライカがやったのか。意外だな、もっと自暴自棄になってると思っていたが、ノアのプレゼントが効いてるのか?」
そんな事を小声で言いながら扉を開け、布をまくり、中へ入った。
昨日、綺麗にしたおかげで家の中は汚れていなかった。だが、肝心のライカは残念な仕上がりのままだった。
「ライカ、邪魔するぜ」
「ど、どうぞ」
「なんだよ、そんなにビクビクして」
「アリスさんが扉壊したからですよ。外から中が丸見えになったんですよ?」
「あ、あぁ、そいつは悪いと思っている。ついさっき思い出したんだけどな」
オレ様は笑って悪気はない事を表したが、ライカの視線が少し痛い。
話を切り替えるべく、本題を話した。
「ライカ、オッズについて調べて来たぜ。面倒くさいから結論から言うぞ」
オレ様がそう言うとライカはゴクリと喉を鳴らした。
「オッズはどうやらお前に催眠薬を盛ったみたいだな。それでノアを裏切る事になったんだ。これ、証拠な」
オレ様は顧客リストをライカに向かって放り投げる。
ライカはそれを見ながら・・・。
「催眠薬をですか・・・」
と、言った。
わからないなら説明するしかない。
「ヒプノっていう奴だ。これを飲むと頭に霧がかかったようになって相手の言う事を信じやすくなるんだ。五回に分けて使うものだけど、お前の場合は早い段階で解けたみたいだな」
「早い段階で解けたというのは?」
「この催眠薬は一回目と二回目は強い精神作用を受けると解けちまうんだ。三回目以降は専門的で強力な治療が必要になるんだけどな。良かったな。それに思い当たる節があるんじゃないか?」
オレ様がそう言うとライカの目が少し見開いた。どうやら思い当たる節があったみたいだ。
「でも家の中に恋人以外の男を上げた時点でアウトだけどな」
オレ様は笑みを浮かべながらライカに言ってやった。ライカの顔が曇って面白かったぜ。
「それはさて置き、オレ様はお前を強くしてもう一度、ノアに会わせるからな?」
「えっと、はい、わかりました」
「やけに聞き分けがいいな?」
「私はノアを一度裏切りました。でも、私の意志で関係を持った訳じゃないって確信できました。だから変わりたいんです」
ライカの目に生気が蘇っていた。オレ様は勝った。これでアンジェリカに嫌がらせ出来るぜ。
「フハハ!だったら強くならねぇとな!それにノア以外の男には容赦しない事を肝に命じておけよ」
「容赦しないって、それってどういうーー」
「あぁ、そんな細かい事はどうでもいい。とりあえず、修行は明後日からな?その間にその残念な姿をどうにかしろ!髪はボサボサ、服はヨレヨレ、耳飾りに負けてるぞ」
オレ様はさらに続けた。
「この賢者アリス様がお前を鍛えてやるんだ。楽しみだなぁ」
オレ様が賢者と言うと、ライカの目は恐怖に染まった。多分扉を壊して入ったから破綻者とでも思っているんだろう。酷い奴だ。
まずはドラグニカ皇国のコロの町へ行くのがいいな。これからが楽しみだぜ。
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