第23話 アリスとライカ その二
ライカ、サイド。
コンコン
「ライカいるんだろ?オレ様はノアの友人だ。ノアに頼まれて見に来てやった」
私を呼んでいる人がいるみたいだ。ノアの知り合いみたいです。でも誰にも会いたくないです。私は無視をしました。諦めて帰るだろうと。
ドンドンッ
「開けろ!」
さっきよりも強く扉を叩いてきます。放っておいて欲しいのに。
すると。
「ウィンドブラスト」
ドガンッ
なんとこの人は私の家の扉を壊して入ってきました。私はこんな乱暴な人は見たことありません。
そして入ってきて早々に。
「うわっ!汚ねぇな!換気もしてねぇだろ!つーか、生きてんのか!?」
とても失礼な事を言っています。怒りたかったですが、確かに部屋は汚く、空気も最悪でした。
そしてその人は。
「お前がライカか?」
金髪エルフの少女は私にそう尋ねてきました。
アリスside
「お前がライカか?」
「あ、あの、はい、私がライカです・・・」
「いるなら出ろよな」
「誰にも会いたくないんです。それに扉を壊して入ってくるなんて非常識ですよ?」
「非常識だって?これからお前をオレ様の気まーー・・・んん!優しさで助けてやろうとしてるのにか?」
危ねぇ、ボロが出るところだった。
オレ様は続けた。
「それにノアを一度裏切った奴に非常識なんて言われるなんてなぁ、その裏切った相手に心配されて、プレゼントまで貰って、本当に哀れだよお前は!」
「ノアが私を心配?」
「あぁ、オレ様はムントの町でノアとアンジェリカ、アンって言った方がわかるか、まぁ、そいつらにあったわけだ。そこでお前のことを聞いてな。ノアは心配していたし、助けてあげてほしいって頼んできたんだぜ?どんだけお人好しなんだよってな」
心配していたのは本当だ。様子を見てほしいとも言ってたな。でも助けてあげてほしいはオレ様のアドリブだぜ。ここで元気になってくれたら良いんだが。
「うぅ、どうして私に優しくするの」
「お前みたいな奴でも幼馴染だからだろ。それにオッズに何かされたかもしれないとも言ってたな」
「オッズさんに何か・・・?私は家に上げてから果実水しか飲んでいませんし、特になにも」
「へぇ、果実水ね。それでオッズの服装とか変わったところは無かったのか?」
「無かったと思います。あの、あなたは私に何をするつもりですか?」
「あ?あぁ、そう言えば名前言ってなかったな。オレ様はアリスってんだ。それでオレ様の目的は、お前を鍛えて、ノアに会わせることだな」
「アリスさんは私に強くなれと?」
「ノアの横に立つにはそうするしかないな」
「でも、私は・・・」
「あぁ、もう!ウジウジするな!わかった!オレ様がオッズがお前に何したか調べてやる!そしたらオレ様に付いて来い!」
「私に拒否権は・・・?」
「ねぇよ、そんなもん。ノアにもう一度会って気持ち伝えてやり直すぐらいに気概見せろや!」
「・・・」
「調べ終わったらまた来るからな。この家の修理費はオレ様が払っておく。それと、ウィンドブレス」
オレ様は中級緑魔法のブレス系、ウィンドブレスの魔法陣をいじって優しい風を作り出し、部屋の空気とゴミを片付けてやった。
「部屋ぐらい片付けろ。それとお前の身だしなみもな。可愛い顔が台無しになってるぜ?爆笑もんだ。ノアに見られたらさぞ面白いだろうなぁ」
オレ様はそう言い残し、ライカの家を後にした。
「まず、オッズの人相を聞かないとな。ロライドに聞いておけば良かったぜ。完全に忘れてた。それにオッズは魔道具か薬か、どっちを使ったか、だな」
オレ様はオッズのした事を予想しながら再び、ギルドに向かった。
ギルドでオッズについて聞いた。オッズは二十歳で、茶色い髪で短髪、背は百七十六センチだという事だ。これだけわかれば十分だ。
そして翌日。
「さて、まずは闇市に行くかな。大体怪しいもんは揃ってるしな」
オレ様はフードを被り、闇市の魔法具の店へ向かった。
歩く事三十分。オレ様は薄暗い、路地にある魔法具店へやって来た。
「おい、店主のおっさん。ここに茶髪で短髪の男が来た事ないか?」
「さぁ、しらねぇなぁ」
オレ様は金貨一枚渡した。
「本当にしらねぇのか?」
「本当のしらねぇよ。あ、でも最近その人相の奴が奴隷商に売られていたな」
「それは本当か?」
「あぁ、なんか黒瓶で一悶着あったみたいでな」
「黒瓶ね・・・、ありがとうよ、おっさん。ついでにこの魔道具売ってくれ」
「まいど。金貨ニ枚だよ」
オレ様はアンジェリカ用に魔道具を買って、黒瓶に向かった。
ちなみに買った魔道具は指輪で、一度だけ任意の相手に幻を見せるというものだ。オレ様はアンジェリカにGの幻を見せるために買った。Gが体に張り付いて来たら失神もんだろう。オレ様は今から楽しみでしょうがない。
そして歩く事数分。オレ様は黒瓶という薬屋に来た。中に入った感じ表向きは普通の薬屋だった。
「おい、婆さん。聞きたい事があるんだがいいか?」
「はい、なんでしょう?」
「婆さんの店にオッズとかいう男は来なかったか?」
「さぁて知りませんねぇ。ヒッヒ」
「本当か?オレ様が聞いたところによるとヒプノを買いに来たとか」
オレ様がそう言うと婆さんの眉がピクッと動いた。図星か。
「婆さんの反応を見ればそうみたいだな。女を奪う為に使ったんだろうな」
「お前さん、ワシにどうしてほしいのさね?」
「オッズが来たこと、それとヒプノを買ったことが真実だ。ということが知りたいぐらいだな。つまり真実を吐け」
「・・・あぁ、ワシが奴に売ったよ。良い道化だった。奴隷商にも売ったさね」
「そうか。これでオレ様の嫌がらせに一歩近づいたぜ。ありがとよ。あ、後ろの二人にオレ様を襲わせて奴隷商に売ろうとしても無理だからな?オレ様に薬や魔法、魔道具は効かねぇし、弱くねぇぞ?」
オレ様は脅し、いや、忠告と同時に、掌に上級緑魔法のサイクロンを出現させた。もちろん少しいじって大きさは小さめ。これでも効果は抜群だ。婆さんは冷や汗を大量にかき、ガタガタ震えていた。
そして・・・。
「そうだ・・・。ついでなんだが、顧客リストを見せてくれ」
「・・・断ると言ったらどうするのさね?」
「安心しろ。別にどうもしないさ。ただ、それがあった方がオレ様にとって都合がいい」
「そうかい・・・、ほれ、これでいいだろう?」
「渋らないんだな」
「気が変わった。なんて言われたら困るさね・・・」
オレ様はしっかり証拠も回収した。オッズのところだけだぞ?
オレ様にとって、この店の事はどうでもいいからな。
「ありがとう。そんじゃあ、オレ様は帰るわ」
そう言い、オレ様はライカの家に向かった。
アリスの去った後の黒瓶では。
「婆さん良いのかよ?フードを被っていたが結構な上玉だったぜ?」
「そうだぜ、あんなの滅多にいないぞ?」
「お黙り。あの女は探っちゃダメな奴さね。あの女が本気になれば王都すら落とす事ができるさね。それぐらい恐ろしい存在だったさね・・・」
そして沈黙が訪れた。
それもそのはずだ。彼女は万能の賢者と呼ばれるSランク冒険者の一人・・・、なのだから。
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