第19話 アンジェリカの過去
「私の昔話からしましょうか」
私は五歳の時に初めて剣を握ったわ。お父さんは元冒険者、しかもAランクの冒険者だったわ。それから十四歳になるまでお父さんに剣術を習ったり、一緒に魔物を討伐したりしていたわ。確か、冒険者になる頃にはすでにCランクの魔物は一人で討伐できるぐらいだったはず、あまり覚えていないわ。
私は水上都市ウォルタルで冒険者になったわ。その時、私と同じ日の冒険者になったアリスとパーティーを組んだの。
「ちょっといいかしら?私はアンジェリカっていうの。歳は十四で、剣士よ。もしよかったらパーティーを組まない?あなたも今日、冒険者になったみたいだし」
「えっと、その、アタシはアリスっていいます。アタシも十四歳です。魔法使いで・・・、パーティー組んでください。一人だとどうしていいかわからなくて」
「よし!これから同じパーティーだね、アリス!改めてよろしくね!」
「は、はい!こちらこそお願いします!えっとアンジェリカさん」
こうして私はアリスとパーティーを組んだわ。
それから一年で私とアリスはCランクの冒険者になったわ。その頃からかしら?やたら男が寄って来るようになったのは。私とアリスが美人、可愛いそう思われているみたいだったから、いつかはこうなっていたのかもね。
「お嬢ちゃん達Cランクだろ?俺達のパーティーに入らないか?俺達はBランクなんだぜ?」
「お誘いは嬉しいですが遠慮します」
私はアリスに代わっていつも断っていたわ。この時のアリスは弱気というかか弱い女の子っていう感じだったから。それに人見知りもあったわね。私はなんで人見知りされなかったのだろう?
でもある日、酒場で。
「なぁ、君達って最近噂になってるCランクの二人だろ?オレ達の相手をしてくれないか?オレ達はAランクなんだ。断らないよな?」
Aランクのパーティー三人が私とアリスに夜の相手をしろと言ってきたわ。
「それは脅しですか?私とアリスはあなたに構っているほど暇じゃないので」
私はアリスの手を引いて酒場を出たわ。ちゃんと会計をしてね。でも彼らもついて来たの。私とアリスは囲まれたわ。三人といってもAランク、力では圧倒的に敵わない。下賎な笑みをして体を舐めるような視線をする、気持ち悪かったわ。
「ここで反抗できないようにちょっと痛めつけるか」
「オイラはエルフの方が好みだな」
「オレは赤い髪の女だな」
私は正直諦めていたわ。アリスだけでも逃げて欲しかった。
でも私は助かったの。Aランクの女性冒険者が助けに来てくれたの。かっこよかったわ。同じAランク相手なのに一人で三人をボコボコにしちゃうんだもの。たしか、利き腕を回復魔法でも治らないように切り落としていたわ。それも手刀で。私とアリスはビックリしちゃったけど、その女性冒険者は私達に優しかったわ。
その後、三人の冒険者はギルドを辞めさせられて、奴隷になったって聞いたわ。この時に私とアリスは、強くなって近寄る男をいなくしよう。そう思ったわ。
このときは知らなかったが、助けてくれた女性冒険者が今のウォルタルのギルドマスターだなんて。
それからさらに一年後。ナンパして来る男も、近寄って来る男もたくさんいたけど、私とアリスはAランクになったわ。そしたら男は近寄らなくなるはずだった。はずだったのに。悔しいけど近寄って来たわ。しかも今度は貴族まで言い寄って来るのよ!?最悪よ!
「私は伯爵家のロンと言います。私がアンジェリカさんと婚約してあげますよ」
上から目線で自信満々に言ってくるのよ?貴族はほとんどそう、この時に私はキレて、このロンとか言う貴族を殴ってしまったわ。一発で気絶したみたいだけど。これが問題になって水上都市の騎士団が来たわね。でもその騎士団の団長も倒しちゃったんだけどね。軽く血祭りにしてやったわ。そのおかげで貴重な戦力扱いされてお咎め無しになったのよね。ノイシュバン王国の国王じゃなくて王妃様がそうしてくれたみたい。同じ女同士通じ合うものがあったのかしら。
この頃からアリスもおかしくなり始めたわね。口調がオレ様になったし、近寄って来る男を公開処刑し始めたわ。やり方は、赤魔法で服を全部燃やし、青魔法で足を凍らせて動けなくする。全裸で放置するという事をしていたのよ。このおかげで私もアリスもナンパとかされなくて済んだから良いんだけどね!
でも、そのせいで二つ名を付けられたわ。私が血祭りアンジェリカ、アリスは処刑人アリス。
「とまぁ、こんな感じよ?私が男嫌いの理由は」
「二人とも容赦なかったんですね・・・」
「当たり前じゃない!男なんて下賎な事しか考えていないもの、痛い目にあってもらわなくちゃね!」
満面の笑みで答えるアンさんが怖いよ。縮み上がりますよ。
「そろそろルミリアに着くわね」
アンさんはそう言い、伸びをした。アンさんは二年でAランクになったんだ。そこからさらに二年でSランクの剣姫。
先は長いな。と、ボクは思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます