第18話 次の町へ

翌朝ボクとアンさんは、午前八時に起床した。朝食のスープとパンを食べ、次の町へ向かう為に馬車乗り場にやって来た。出発は午前十時だ。出発まであと十分ある。


「アンさん、次の目的地はどこですか?」


「次はルミリアという町よ」


「なんか女性の名前みたいですね」


「そうね。ルミリアは美しい花園が有名よ。たそかその花園を作った人がルミリアという人だったはずよ」


「それは見てみたいですね!」


「でも、ルミリアまで二日かかるわ。野営もしなくちゃいけないし、私とノア君は冒険者だから見張りをすることになるわね。それにここからは盗賊や魔物も出てくるからいつでも戦えるようにしておいてね」


「はい!」


出発の時間となりボクとアンさんは馬車に乗ってルミリアを目指した。森の中を抜けて行くみたいだ。一泊二日の移動だ。





ボクとアンさんを乗せた馬車は何事も無く、野営をしていたであろう、開けた場所に来た。ここで一夜を過ごすみたいだ。開けたと言っても森の中にポッカリ穴があいているといった感じだろう。

今回の馬車にはボクとアンさん以外にも十人程客がいる。その中に冒険者も二人いた。今日の見張りはボクとアンさんとその二人の冒険者を含めた四人でやる事になるだろう。

夜ご飯は馬車の御者さんが作ってくれた。美味しかった。

冒険者以外は馬車の中で眠るみたいだ。腰が痛くなりそう。

ボクとアンさんは同じテントで眠る。正直ドキドキして見張りどころではない。


「ノア君、最初は私が見張りをするから寝ててね」


「その次がボクですね?」


「そういうこと、それじゃあおやすみ」


「頑張ってください」


それから二時間後、ボクはアンさんに起こされ、二時間の見張りをした。

二時間が経ち、他の冒険者を起こし、テントに戻ると。


「アンさん・・・、なんでボクの寝るスペースまで侵略するんですか」


ボクの呟きはアンさんには届かず、ボクはアンさんと密着するような形で眠る事になった。アンさんから花のような良い匂いがする。アンさんは寝相がほんの少し、ほんの少しだけ悪いみたいだ。





翌朝、夜の間何事も無く、今は馬車で移動中だ。森を抜け街道に出ている。


「やっと森を抜けたわね」


「そうですね」


「昨日はごめんなさいね。その、寝相が・・・」


「気にしないでください。確かに密着する事になりましたが大丈夫ですよ」


アンさんは顔を赤くしてブツブツ呟いている。そんなに寝相を見られるのが恥ずかしかったんだな。

そう思っていると。


「おい!そこの馬車!止まれ!」


ゾロゾロと盗賊出てきた。数は・・・十七人といったところだ。馬車を囲んでいる。


「ノア君、面倒くさい事になったわね」


「そうですね」


ボクとアンさん、他の冒険者二人も馬車を降り、戦闘態勢を取った。


「おうおう!上玉が二人もいるぞ!」


「へっへっへ、今夜は楽しませてくれそうだな!」


「貧乳だけど顔は良いじゃねぇか!」


「赤髪の嬢ちゃんは俺様が楽しませてーー」


一人の盗賊が下賎な笑みを浮かべてアンさんに近づいた瞬間。アンさんがステップで近づき、首を吹っ飛ばした。

盗賊もボクも他の冒険者もポカンとした。ボクはアリスの言っていた事を思い出した。アンジェリカは男嫌いじゃねぇか。という言葉を。


「ノアくーん!」


「は、はひ!」


アンさんがいつもと違う感じで呼びかけてきた事にビックリして、変な声を出してしまった。


「こいつらに手加減はなしね?私はこういうの大っ嫌いなの。それにノア君も女の子扱いされていたわよ」


アンさんが怖い!でも、アンさんの言う事もごもっともだ。盗賊に容赦する必要はない。

それからは阿鼻叫喚。盗賊の、助けてくれー!と、言う声と、ぐアァァァ!と言う叫び声の断末魔。アンさんはまさに紫電一閃というに相応しかった。盗賊が何かする前に首を刎ねる。一瞬の出来事だ。

ボクも五人ぐらいステップを使って接近して首を刎ねたがアンさんには敵わなかった。

他の冒険者二人は化け物を見るかのような目でボクとアンさんを見た。容赦の無さに驚いたのだろう。


「御者さん、盗賊は片付けたわ。そろそろ出発しましょう」


「は、はいぃぃ!」


アンさんはそんなに怖い人じゃなよ。でも初見でこれならそうなるのかな?まぁ、美女がこんなに強いとは思わないよね。


「ノア君、馬車に乗りましょうか」


「はい!アンさん、アリスの言っていた男嫌いについて聞いても良いですか?」


「私の男嫌いについて?まぁ、ルミリアまでもう少しかかるし・・・、そうね、良いわよ」


ボクはアンさんの過去について聞くのだった。

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