第15話 旅へ

翌日。ボクとアンさんは馬車乗り場へやって来た。


「アンさん、どこに行くんですか?まだ目的地を聞いてません」


「とりあえず小さい町を経由して、王都から西にある、水上都市ウォルタルに向かおうと思うの」


「水上都市って事は水の上にあるんですよね!?」


「そうよ。ウォルタルは湖の上に作られていて、都市に一つだけ橋が架かっているの。馬車ではそこからしか入れないわ。あとは船で行くしか入れないの」


「なんか、湖が自然の鉄壁という感じですね・・・」


「そうね。なかなか落ちないと思うわよ。湖を船で渡ってくるなら、渡ってる間に魔法で転覆させちゃえばいいしね」


馬車に乗るまでボクとアンさんはウォルタルの話をしていた。

するとそこに。


「ノア!ふぅ、ギリギリ間に合ったか」


ロライドさんが見送りに来てくれたのだ。


「ノア、いい師匠に出会えてよかったな!俺はお前に教えられなくなって悲しかったが・・・」


「いえ、ロライドさんのおかげでDランクまで昇格できたんですから」


「お前なぁ、Dランクは普通になれるぞ?まぁ、お前に悪意が無いのは知ってるよ。それとな、お前は知りたく無いことかもしれないが一応報告な。オッズは奴隷商に売られたらしいぞ」


「あの人また何かしたんですか・・・」


「それはわかないが、まぁ、あくまで噂だ。ノア、お前も安全に旅ができるな!どこに行くんだ?」


「水上都市ウォルタルです」


「水上都市か。俺は行ったことないな。会えなくなるのは寂しいが、楽しんで来いよ!」


ロライドさんはそう言うと踵を返し、戻っていった。


「ノア君、そろそろ出発だから乗っちゃうわよ」


「はい!」


ボクとアンさんは馬車に乗り、水上都市ウォルタルを目指した。まずは一番近い町、ムントへ向かった。





出発から二時間。

ボクは初めての旅で、見る景色全てが美しく、輝いて見えた。

すると突然アンさんが。


「ノア君、あの小さい袋は幼馴染ちゃんに渡したんでしょう?」


「・・・はい」


「やっぱりね。でも、前みたいに無関心ではないし、嫌っている感じもないわね?心配しているって感じかしら?」


アンさんは怒っているわけでは無いみたいだ。


「はい。ボクはあの日以来、ライカの事を見ていなかった。オッズさんになにかされた可能性もあったと思うと・・・」


「まぁ、私もナンパクズ野郎と幼馴染ちゃんは仲が良さそうには見えなかったわ。自らの意志ではないわね。あの時、幼馴染ちゃんには結構辛い事言ったけど、それどころじゃないって感じだったしね。幼馴染ちゃんはなにかされた可能性がある、私もそう感じたわ」


アンさんがそんな事を言うなんて。


「でも、家に上げてしまったのはダメね」


「そこはボクもそう思います」


でも、ノア君が今の幼馴染ちゃんに贈り物ねぇ。ノア君は優しいから、励ましのつもりでそうしたんだろうけど、もともと幼馴染ちゃんはノア君に一途な感じだったし、失って初めて大切さを実感してるころだと思うなぁ。ノア君は無自覚で辛い事をしているのね

アンさんがボクの事をずっと見てくる。なにかあるのかな?


「アンさん?ボクのヘルムになにか付いてますか?」


「そんな、ヘルムを顔みたいに言わないでくれるかしら?笑えるえわっ。ププッ!」


ボクはなにか変な事を言っただろうか・・・

アンさんのツボに入ってしまったみたいだ。ボクはアンさんを放置して再び外の景色を眺めた。





ライカ、サイド。


人という生き物はどんなに辛くてもお腹は減ってしまうんですね。


「食べ物、買いに行かなくちゃ・・・」


私はゆっくり立ち上がり、ノアがい管理して。と言っていたお金を持って扉の方へ歩いた。

ノアはこの時のために言ったんだ。

私は扉を開いて外に出ました。閉めようと扉の取っ手の部分を触れると、小さな袋がヒモに縛られ、取っ手の部分にかけてありました。

私はオッズさんとノアが言っていたことを思い出しました。

これはノアがあの日、私に買って来たプレゼントなんだと。きっと買い直してくれたんだ。


「なんで、今こんな事するのかな・・・」


私は締め付けられるような痛みと、小さな喜びを感じました。

私は袋を開け、中身を確認しました。青い綺麗な石の耳飾りでした。私は家に戻り、耳飾りを抱きながら嬉し涙を流し、眠ってしまいました。安心したのだと思います。


「ノア、ありがとう・・・」


数日後、運命は私に試練を与えました。

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