第12話 旅に向けて
一ヶ月の修行最終日前日。
ボクはライカと別れてから今日まで宿屋で寝泊りをしていた。アンさんとは違うよ!
そしてこの日、ボクとアンさんは旅に出るための準備をしていた。
「ノア君、旅に必要なものはなにかわかるかしら?」
「唐突にですね・・・、非常食とか毛布とか火打ち石、ランタン、テントですか?」
「日用品を忘れているわよ?調理器具もだし食器も、あとそれを入れるリュックかしらね」
「アンさんは慣れているんですね」
「それはそうよ。ノア君はまだAランクの依頼はまだだもんね。あと王都にはダンジョンも無いみたいだし」
「ダンジョンですか?あの階層があって、そこの魔物は倒すと黒い霧になって消えるっていうやつですよね?」
「まぁ、大体合ってるわ。そういうところへ行くと野営をしないといけなくなるの。」
「そういえばAランクの依頼はなんで旅の道具が必要なんですか?」
「Aランクになると町や都の近くにいないのよ。ワイバーンとかグリフォンとか近くにいてほしくないでしょ?」
「そ、そうですね。考えただけで町と都が阿鼻叫喚になりますね。地獄絵図ですよ」
「これからはそういう魔物や場所に行くのよ。まぁ、この話は置いておいて、買いに行くわよ!」
「はい!アンさん!」
ボクとアンさんは、旅の靴という旅をする人のためだけのお店に来た。
「アンさんリュックはどれがいいんですか?」
ボクとアンさんはリュックやバッグなど入れ物のコーナーにいる。
「そうね、ノア君は身長が百七十センチぐらいだからこれがいいわ」
アンさんがボクに進めたリュックは登山などで使う、防水機能もあり、軽い、キャパもあるというものだ。
「思っていたよりしっくりきますね!」
「うんうん!似合っているわよ!」
アンさんはボクのリュックの色違いを選んでいた。
それから日用品コーナーで歯ブラシや着替え、毛布や食器等を諸々買った。
アンさんは。
「ノア君がその歯ブラシなら私もその歯ブラシの色違いにしよ!」
と言ったり。
「ノア君の着替えはこれがいいわ!」
と、選んだものを無理矢理押し付けられたり。でも、選んでもらうのは嫌いじゃないから少し嬉しかったなぁ。お揃いですね。って言ったら嬉しそうだった。
しかし、やたらとお揃いを意識していたような・・・。はっ!もしかしたらボクの選んだものが質が良いものなのかもしれない。ボクはそう思うことにした。
そして今、ボクとアンさんは討論をしている。
「ノア君!テントは一つでいいわ!二人しかいないんだし、二つもあったら非効率的よ!?」
「アンさん!さすがに一つのテントで二人で寝るのはダメです!二人しかいないなら尚更ですよ!?」
「そんなに私と一緒に寝るのが嫌なの?」
「ボクは男ですよ!?アンさんは誰がどう見ても美人なんです!ボクが理性を抑えられなかったらどうするんですか!」
「私はそれでもいいわよ?」
「・・・えっ?」
「なによ?私はそれでも大丈夫って言ってるのよ?」
「・・・それでもダメです。未婚なんですよ?」
「あら?それを言ったらノア君と幼馴染ちゃんはどうなるのかしら?」
「うぅ・・・」
「決まりね!」
「あぁ!ちょっと!アンさん!」
ボクは止めることができなかった。今までは師弟関係だったから気にしていなかったけど、アンさんは美女だ。意識してしまう・・・。いや、これも修行だ!そう思おう!
「アンさんちょっと行きたいところがあるので行ってきてもいいですか?」
「あとは会計だけだしね」
「よろしくお願いします!会計が終わったらアンさんはギルドで待っていてください!」
アンさんには申し訳ないと思いつつもボクはあるお店へ向かった。
アンジェリカ(アン)サイド。
ちょっと攻め過ぎたかなぁ・・・。
私は事あるごとにノア君と同じものの色違いを選んでしまった。だって仕方ないじゃない!ノア君と一緒に旅なのよ!?
それに私が色違いを選んだら。
「アンさん、ボクとお揃いですね」
って言うから嬉しくなっちゃったわ!
でも、さすがにテントは私も恥ずかしくなったわ。
「ボクは男ですよ!?アンさんは誰がどう見ても美人なんです!ボクが理性を抑えられなかったらどうするんですか!」
私の事を意識してるなんて嬉しすぎるわ!美人だなんて恥ずかしいわ!ノア君だからそう思えるのね!
でも。
「私はそれでもいいわよ?」
これはやってしまったと思ったわ。引かれるかと思ったわ。
でも、ダメな理由が。
「・・・それでもダメです。未婚なんですよ?」
未婚だからという事だったのよ!私は感謝したわ!
だからこう言ったの。
「あら?それを言ったらノア君と幼馴染ちゃんはどうなるのかしら?」
これにはぐうの音も出なかったみたい。私は勝ったのよ!これでノア君を襲ってもーー・・・、いけないわ。恋人になるまでは。
私は会計を終わらせ、ギルドでノア君を待っている。荷物を女性に持たせてしまったところは、怒らなくちゃね!だって量が多いんだもの。剣姫の私にしたら余裕だけど、そう言う事じゃないのよ!もう!
「アンさん!荷物持たせてしまってごめんなさい!」
「本当よ!女性に持たせるのは良くないわ!ちゃんとした理由があるんでしょうね?」
「はい!アンさんにこれを!」
ノア君は小さな袋を渡してきた。その中身は。
「綺麗ね・・・」
綺麗な黄色い花の髪飾りだった。私は今までこんなに嬉しいと思った贈り物はない。私に寄ってくる男は高価な物だったり、それ以前に下心が丸見えの男もいたわ。ノア君のプレゼントしてくれた物は高価ではないかもしれない。でも、心がこもっている。嬉しいわ。
「アンさん、ボクが付けてあげます」
恥ずかしかったわ。でも、されるがままに付けてもらったわ。本当はヘルムも取って欲しいんだけどね!
「アンさん、とっても似合ってます!」
「ありがとう!嬉しいわ!」
私はノア君からのプレゼントを大事にしようと誓った。
「ノア君そのもう一つの小さい袋は?」
「これは、その・・・、個人的な物で・・・」
私はそれ以上聞かなかった。ノア君は優しいんだか、甘いんだか、無自覚で厳しい人なんだか。でもそんなノア君に惹かれるわ。
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