第10話 オッズの歪み
俺はオッズという名前だ。Bランクの冒険者として王都で活動している。
そんなある日、ノアという少年が連れていた少女に惚れた。そう、一目惚れだ。
俺はまず仲良くなろうと思い話しかけた。
「よう、お二人さん。二人はパーティーなのかい?」
「はい、ノアと言います。二人で冒険者としてやっていくつもりです」
「私はライカと言います。よろしくお願いします」
「おう、俺はオッズって言うんだ。Bランク冒険者としてやってるから困ったら聞いてくれよ」
俺はいい先輩とから関係を始めようとした。
Fランクのクエストはほぼ薬草やスライム退治などがメインだ。
俺は二人(主にライカちゃん)に薬草の見分け方や効率の良い採取場所を教えた。
「「ありがとうございます!」」
ノアに感謝されるのはどうでも良いが、ライカちゃんに感謝されるのは嬉しいかった。
二人がランクが上がり、俺が二人に魔物の特徴や攻撃のパターンを教えても、ライカちゃんが俺に振り向くことはなかった。
俺は二人が付き合っていて、同じ家に住んでいることを知った。俺は嫉妬で怒り狂った。
ある日、俺はライカちゃんに振り向いてもらうんじゃなく、奪い取ることを選んだ。
そして俺は、黒瓶と呼ばれる表向きは回復ポーションや薬草、病気に効く薬を売っている薬屋にヒプノと呼ばれる催眠薬が売っているという噂を聞いた。もちろん違法薬だ。
俺はそこに行くために変装をし、闇市場へ向かった。その店はボロボロで、店の中は変な匂いがした。
俺は店主の婆さんに聞いた。
「ちょっといいかい婆さん。この店にヒプノという催眠薬があるって聞いたんだが、売ってはもらえないだろうか」
「あぁ?催眠薬?売っているけど、あんたそれをなにに使うつもりだい?」
「欲しい女がいてな。そいつを奪うためだ」
「小さい事に使うんだねぇ」
「うるさい。それで売ってくれるのか?」
「あぁ、いいさね。でも催眠薬は珍しい薬なんだよ、なかなか作られる物じゃない。それにこれが最後の一個さね」
婆さんはそう言い、小瓶を出した。中には紫色に近い色の液体が入っていた。
「それでいくらだ」
「大金貨一枚だよ」
日本円で百万円だ。
「わかった」
俺は迷わず買った。お金は依頼を完了すれば良い。ライカちゃんはクエストでは手に入らない。俺はついでに媚薬も買った。これで準備はできた。あとはこれを飲ませて、催眠をかけ、奪うだけだ。
そして婆さんは最後に。
「催眠薬は五回に分けて使いなさい。もし間違えれば心が壊れて人形になっちまうからね。それと飲ませたら、四日は開けなさいよ。」
婆さんはヒッヒッヒと不気味に笑いながら言った。
オッズが去った後、婆さんは。
「ヒプノを使った人はみんな身を滅ぼすのさね。それにヒプノの効果は一回目と二回目は弱い。その時に精神に変化があれば覚めちまう。あの若者はどんな道化になってくれるのかね。ヒッヒッヒ」
この不気味な笑い声はオッズには届かなかった。
そして決行の日。
俺はノアがロライドに修行してもらうことを知った。今しかないと思った。
俺はライカちゃんの家に行き、家に入れてもらうために。
「ライカちゃん、いるか?オッズだけど。お前とノアにプレゼントがあってな。中に入れてもらってもいいか?」
「オッズさんですか?今開けます」
俺はライカちゃんの家に入れた。
「お茶を淹れますね」
ライカちゃんは俺にそう言うとキッチンへと行った。
俺は買ってきた果実水にヒプノと媚薬を適量いれお土産として飲ませる事にした。
数分後ライカちゃんがお茶を持って戻ってきた。
「お茶を淹れてる間に、俺も買ってきた果実水を用意しといた」
「そうなんですか?お茶淹れないほうがよかったですね」
そう言いライカちゃんは果実水を飲んだ。俺の欲望は爆発しそうだった。
ライカは数分すると目がとろんとなった。俺はライカちゃんに催眠と媚薬の効果が出たと確信し、甘い言葉をかけた。
「ライカ、ノアより俺の方がいいと思わないか?あいつは俺とは違い、Dランクだ。俺の方がライカちゃんを幸せにできる」
「そう・・・、なのかな?そんな気もします」
ライカちゃんは少しずつ俺を求め始めた。
そして俺とライカは抱き合った。ずっと抱えていた嫉妬を爆発させた。最高だった。ノアの絶望した顔を見たくて仕方がなかった。
ことをした後、俺は帰るためにライカの家を出た。すると足下に九本の薔薇の花束と小さな袋が落ちていた。
「これはノアが持ってきたのか」
俺は最初、しまった。と思った。でもノアの絶望した顔を思い浮かべてそんなことはどうでもよくなった。俺はノアに勝ったんだ!この時はそう思っていた。
四日後。
俺は再びライカの家に来た。
「オッズだ、ライカいるか?」
返事がなかった。今度は扉を叩いて呼んだ。
「ライカ?いないのか?」
返事は返ってこない。おかしい。もう一度呼ぼうか迷ったが、あまり目立つと良くないと思い、帰ることにした。
俺はその後も何回もライカの家に行ったが返事が返ってくることはなかった。
ある日のこと。
俺は他の冒険者にノアとライカちゃんについて聞いた。
「なぁ、ノアとライカは最近、依頼受けているのか?」
「ノアとライカちゃん?あぁ、普通に受けてるな。なんか用があったのか?」
「いや、なんでもない。元気そうでなりよりだ」
俺は焦っていた。なぜだ!?どうしてノアとライカが一緒なんだ!?催眠薬は効いていたはずだ!俺はわからなくなった。
それから数日後。
俺はストレスと欲求不満でおかしくなりそうだった。そんな時だ。赤い髪をした美女がいた。俺はこの人にナンパをした。欲望の捌け口にしようと。
「君、凄い綺麗だね。俺はBランクの冒険者なんだけど今夜ご飯でもどうかな?」
Bランクはそこそこ強いのだ。普通の人は凄いと言う。でもその美女は。
「Bランク程度がナンパね・・・ごめんなさい。興味ないわ」
そう冷たくあしらわれた。俺がもう一度声をかけたら鋭い殺気を向けられた。
この時はこの美女がノアと仲間だなんて思いもしなかった。
翌日。
俺は、強行手段に出た。もうすでに知っているであろうノアに直接言い、もう一度現実を叩きつける。ということだ。俺の中ではノアはショックで現実逃避をしていると考えた。
俺はギルドへ向かい二人を見つけた。ライカは目に見えてやつれていた。これも全部ノアのせいだ。
俺は二人に声をかけた。
「おう、久しぶりだな。ノアにライカ」
「お久しぶりですねオッズさん」
「そうだ、ノアとライカに話があるんだよ。時間はあるか?」
俺がそう聞くと承諾してくれた。
そして。
「なぁ、ノア。俺はライカと肉体関係を持っちまったんだ。別れてくれないか?」
俺はそう言った。ノアの絶望した顔を見れると思ったからだ。しかしそうはならなかった。
「なんだ、そんな事ですか。いいですよ」
「そうだよな。お前らは愛し合ってるもんな、無理ーーえっ?」
こいつは今なんて言った。飄々とした顔で別に気にしていないという反応だ。なぜだ?
ノアは平気な顔で。
「ライカとお幸せに。こんな幼馴染ですがお願いします」
と言ったんだ。
すると今度はライカが。
「待ってよ。ノア、私ノアと別れるなんて・・・」
と言ったんだ。催眠薬の効果は切れていた。それはもう仕方ないと思った。でもノアに別れを告げられてもライカちゃんはノアのことが好きなんだ。俺はノアに憎悪を抱いた。
すると今度は。
「ノア君!ここにいたのね!なにこの雰囲気・・・」
昨日ナンパして失敗した美女がノアと親しそうに話していた。その美女は俺のことを、ナンパクズ野郎。と、言いやがる。ノアはDランクじゃないか!なんでそんな奴にライカちゃんもこの美女も!俺は怒りに狂った。ノアを後ろから斬って殺そうとした。
次の瞬間。
俺は地面に倒れていた。顔の横が痛かった。鞘に納まったままの剣で殴られた。
「ノアァァァ!俺がお前なんかーー」
俺は、お前なんかに負けるか。と、言いきる前に、目の前にノアがいた。
瞬間。
俺は意識を手放した。
意識を取り戻すとそこは病院のベッドの上だった。四肢骨折、あばら数本骨折。俺は冒険者ギルドを辞めさせられた。ギルド内で冒険者同士の戦闘はご法度だからだ。
俺はノアを憎み恨んだ。殺してやる。
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