第7話 アンさんからプレゼント

縦回転と横回転を教えてもらって二日が経った。

アンさん曰く、縦回転も横回転も最初だけなんだよ。コツ掴むとすぐ回転数上げられるわよ。との事だ。

実際に二日で縦二回転、横三回転までできるようになった。

ボク自身もそれに驚きを隠せない。

そして今日。


「ノア君、最近刺激足らないよね・・・?」


ゴクリ・・・。こ、今度はどんな依頼を受ける事に・・・。


「そ、そうですね。Cランクまでの魔物しか討伐してないですもんね」


「やっぱりノア君も私と同じこと思ってたんだね!さすが我が弟子!」


ふふふ、と、笑っているが、正直、言わせた感がある。


「アンさん、今回はなにを討伐するつもりですか?」


「そうね、Bランクの魔物討伐しよっか!一人で討伐できたらBランク間違いなしよ!」


「前に、ブラックウルフでミスしたのに大丈夫なんでしょうか・・・」


「大丈夫大丈夫!そんなに弱気にならなくても死ぬ前に助けてあげるから」


これはつまり、死なない程度なら助けないと言うことだ。この、程度が怖い。


「と、その前に。ノア君の剣さ、もうボロボロよね?」


「はい、そうですね。この剣は幼馴染と一緒に選んだんですよ」


「へぇ・・・そういえばさ、ノア君と初めて出会った時に失恋したって言ったわよね?もしかして」


「はい、その幼馴染ですよ」


「それ聞いちゃダメかな?ダメかな?」


アンさんが目をキラキラさせている。恋バナというのものが好きなのかもしれない。


「別にいいですけど、想像しているのと違いますよ?」


ボクは幼馴染と一緒に冒険者を初めた頃から話した。一緒にFランクの薬草採取のクエストをやったり、Eランクに上がって少し豪華な夕食を食べたり・・・、そして同じギルドのBランクの先輩冒険者と浮気をしていて裏切られたこと。そのおかげでアンさんと出会えて、美しい剣術に惚れたことを話した。

するとアンさんは、最初は、なにそれ!甘い!とか、キャ〜!とか女の子らしい反応をしていた。

しかし浮気の話になると、私の可愛いノア君になんてことを・・・。と、言っていた。その時のアンさんの背中には死神のようなシルエットが見えたのはボクの気のせいだろう。

でも、そのおかげでアンさんと出会えた。と言ったら、その幼馴染ちゃんは恋のキューピッドだったのね!とよくわからないことを言っていた。アンさんが喜んでいるならボクも嬉しいかな。

思い出したくないことも思い出してしまったが、今は落ち着いているのでたぶん大丈夫だ。


「とまぁ、こんな感じです」


「私、決めたわ」


「なにをですか?」


「修行は一ヶ月って決めてたけど、ノア君を連れて旅をするわ!」


「えっ!?いいんですか!?」


「ええ、今の話を聞いて連れて行くことにしたの!」


ノアが、やったー!と喜んでいる横で。


「二人で旅をすれば恋人関係に発展して、それから夜這いして結婚して・・・フフフ」


アンの顔がヤバい人の顔になっていた事は、ノアは知らない。

そしてアンにそんな度胸がないことも・・・、意外と乙女なことも・・・。

そしてわざとらしく咳をし。


「ノア君、話を戻すけど、その剣ではBランクの魔物相手には不安だわ。だから今から買いに行くわよ!私が選んであげる!」


「アンさんがボクのためにですかっ!?」


「そうよ!ノア君の恋ーー、コホン、旅仲間、そして師匠として選ぶわ!」


アンさんはなにか言い直していたが、剣を選んでくれると言うので気にならなかった。


「ありがとうございます!もう行きましょう!早く行きましょう!」


そしてボクとアンさんは武器屋に向かうことにした。





ボクとアンさんは武器屋に着いた。

ボクがいつも行っているところとは違い、アンさんが連れて来てくれたところは、どれも質が良く高価なところだった。


「ノア君の今の剣は鉄製だったわよね?」


「そうですね。ランクが低いので鉄製にしか手を出せないですよ」


「そうよね」


アンさんは笑いながら言って、続けた。


「今後の事も考えて、鉄とミスリルの混ざった剣がいいわね」


「アンさん、今さらっとミスリルって言いましたか?」


「ええ、そうよ。なにか問題ある?」


「ボクそんな大金使ったら生活が苦しくなりますよ!」


「なに言ってるの?私がノア君にプレゼントするのよ?」


「えっ!?」


「ノア君、声でかいわよ」


「あ、はい。ごめんなさい。でもプレゼントにしては高すぎますよ?」


ミスリルは割合にもよるが金貨一枚は絶対にする。剣が丸々ミスリルだと大金貨一枚になったりもするのだ。その理由はミスリルはの魔力伝導が優れているところにある。それに加え、鉄よりも頑丈であるのだ。


「金貨八枚以内にするつもりよ、大丈夫。それ以上のものは、今のノア君には使いこなせないわ」


金貨八枚、日本円で八十万だ。


「金貨八枚・・・わかりました。アンさんに甘えさせていただきます」


ボクはあまりの額に、一瞬気を失いかけたが、なんとか持ち直した。

そして、アンさんにとって金貨八枚はどうともないんだと理解した。

ノアはまだ知らないが、アンこと、アンジェリカは剣姫でSランク冒険者だ。お金は腐るほど持っている。ほとんどは孤児院などに寄付していたりして、実は良い人なのだ。


「あら、この剣いいわね」


アンは一本の剣を手に取った。

その剣は、鉄六割、ミスリル三割、アダマンタイト一割だった。


「金貨五枚ね、これにしましょうか」


「アダマンタイトも含まれているんですね」


「そうね、強度を増す為に使ったのね」


アダマンタイトは鉄やミスリルよりも硬い。しかし魔力伝導がほとんどできない。ミスリルよりも価値が少し高い。


「あとミスリルを選んだのはノア君に武具纏を使えるようになってもらうためよ」


「武具纏?」


「今はまだ考えなくていいわ。旅に出たらゆっくり教えるから」


「わかりました」


そしてアンさんはボクの新しい剣をプレゼントしてくれた。その際、前使っていた剣はアンさんが預かると言ったので、ボクは剣を渡した。

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