第4話 修行の成果

修行初日から一週間が経過した。

ボクは三十分で素振三千回をクリアし、縮地の応用である、ステップを安定して4メートルまでならできるようになった。

そして今は、ライカとウルフ討伐の依頼をしている。ウルフは狼が魔素によって侵食され、魔物化し、凶暴になったものだ。このクエストを受けたのはボクの今のレベルを確認するためだ。ウルフは素早い動きをする。そこでウルフの攻撃を躱し、一秒以内に三回攻撃する。という縛りを課している。

あの日以来、ボクはライカと距離を置いている。ライカを目に入らないように見ている。思い出したくないからだ。まだ、心のどこかでライカのことを想っているのだろうか・・・。ライカとパーティーを組んでいるのは住んでいる家が一緒だからだと思いたい。一緒の家に住んでいるのにパーティー解散は家に居辛くなるし、ボクはどこで寝泊りすればいいのだ。と、思いたい、いや、思い込みたいのだ。





「ライカ、ボクがウルフを引きつけるから、狙える敵からファイアボールで攻撃して」


「わかった。でも三体もいるよ。大丈夫なの?」


「これはボクの今の実力を試す良い機会なんだ」


「わかった。気をつけて」


ボクは身体強化を使いウルフに向かって走った。

ウルフはボクに気がつくと追いかけてくる。


「身体強化を使ってもボクより速いのか!狼なだけある!」


一体のウルフがボクの正面に回り込むために走るスピードを上げた。ボクは横目にそれを確認した。さらに後ろから迫ってくるウルフがボクのすぐそこまで来た。


「今っ!このタイミングッ!」


ボクは後ろから切り裂いてこようとするウルフに振り返り、正面に見据え、ステップで左に避ける。そして跳び込んできたウルフの顔を左から右へ横に切り、首を上から下へ振り下ろし、胴を下から上に切り上げ一体目を倒した。

ボクの切り上げと同時に回り込んでいない方のウルフが左から跳びかかって来ていた。ボク自身も切り上げと同時にステップで後ろに下がる。すると目の前をウルフが通り過ぎる。通り過ぎている間に剣で、ウルフの顔を上から下に振り下ろし、首を下から上に切り上げ、最後にもう一度振り下ろして二体目も倒した。

最後の一体は右から来ていた。もう目の前まで跳び込んできていた。

しかし、まだノアは咄嗟にステップができるほどにはなっていなかった。


「間に合わない・・・、なら!」


ボクはステップが間に合わないと判断し、跳び込んでいるウルフに対し、体を後ろにそらし、ウルフの腹の下の入り、腹を剣で裂いた。そうして三体目も倒すことができた。


「最後は危なかった。今はヘルムを被っているから最悪は・・・、無いだろう。慢心しているつもりはなかった。修行不足だ」


ボクは手応えより先に反省がでた。


「結局ノアが全部倒しちゃったね。いつの間にか強くなっちゃったんだね」


ライカは少し寂しそうな顔をしている。


「まだまだだよ。もっと修行して強くならなくちゃ、師匠には届かない」


ボクが強くなるのは当たり前なのだ。ライカは浮気をし、ボクを裏切った。ボクはアンさんに修行してもらっているのだから強くなるに決まっている。

この後ノアは二体ウルフ、ライカも二体倒して依頼を完了した。





依頼の報告をし、アンと合流し、草原へ向かった。


「ノア君、昨日で素振りをクリアしたから今日から五千回に増やします!身体強化も常時発動しなさい!そしておめでとう!」


パチパチと拍手している。普通なら二千回も増えるのかよ。と、思うだろう。しかし。


「五千回・・・、頑張ります!今度は何分いないですか?」


「同じ三十分だよ。でもそれができれば一秒間に五、六回は切れるようになるわよ!」


「本当ですか!?」


「うん、そうよ。私は嘘をつかないわよ?」


確かに今回ウルフに対して一秒間に三回切ることができた。


「アンさんのことを信じます!・・・もう素振りしていいですか?」


「せっかちなのね」


アンはクスクスと笑った。


「それじゃあ始めましょうか!」


「はい!身体強化発動!一!ニ!三!四!・・・」





素振りから約一時間半。


「ハァ、ハァ、さすがに身体強化しながら五千回は疲れますね」


「お疲れさま。でも吐かなかったでしょ?今までたくさん吐いてたのにね」


「意地悪なこと言わないでください。吐いてたの恥ずかしいんですよ」


「ごめんごめん。それじゃあ、ステップの修行しましょうか」


「もうですか・・・、わかりました!やります!」


「それじゃあ今回から連続ステップをしましょうか」


「連続というと、右にステップしたらすぐに左に、という感じですか?」


「うん!正解!それを極め、緩急をつければ分身も出せるようになるわよ」


「ぶ、分身ですか!?」


凄すぎる!アンさんは凄すぎる!


「静と動を上手く使うとできるのよ。でも今は素早く動くことに集中しなさい」


「は、はい!わかりました!」


そうだ。まずは基本だ。


「連続ステップがスムーズにできるようになったら、跳んで戦う戦い方教えるからね!」


この言葉でノアのやる気は爆アゲされた。跳んで戦う。これは出会ったときに見た美しい舞だ。


「アンさん!ボクは、アンさんに弟子入りできて幸せです!」


「なっ!そ、そんなこと今言わないの!」


アンは照れた。可愛いところもある人なのだ。


「喜ぶ暇があるならステップしなさい!怒るわよ!」


「ごめんなさい!ステップやってきます!」


ノアは連続ステップの修行を開始した。右から左、左から後ろ、後ろから前。体の重心を上手くコントロールしないと。


ズザザザアァァ


と、このように、人間おろしになってしまう。


「ノア君は真っ直ぐに人を褒めるのよね・・・、正直、恥ずかしいわ。可愛いくせに爆弾を投下してくるみたいで」


アンは一人ブツブツ言っていた。

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