第1話 現実の庭にて(01)
さて。
もしあの件について語るとしたなら、それは私が彼と出会った時から始まるのだろう。もちろん、それ以前から──例えば私が生まれた頃とか──から始めてもいいのだけれど、そんな面倒なことをする必要も無いでしょう。やはり彼と出会ったその瞬間からこのどうしようもなく始まっていて、そして取り返しのつかないほど終わっていたのだから。
*
やぁ、心地いい朝だね!
今回は、僕こと
え?何をやってるんだ、って?
やだなぁ、友達を起こしてあげるのは優しい優しい雨原くんの好意じゃないか〜!
例えば昨日。いや、昨日は酷かったねー。もう凄い雨。英語でいえば
「it rained cats and dogs」
って言うんだっけ?向こうの感覚はわからないなぁ。でも、猫ちゃんとワンちゃんが沢山降ってきてくれるなら大歓迎だよ!今からでもモフり倒したくて仕方ないくらいだ。
っと、それは置いておいて。
うーん昨日しんどかったし起きたくないなー、なんて思ってると見越してこうして起こしてあげてるのです、えっへん。
ちょっと、ため息なんかつかないでよー。
確かに、僕とキミが出会ってからそんなに経っていないかもしれない。けれど、人と人との繋がりっていうのは期間で決まる訳じゃないんだからね?!
え?もしかして、まだ出会ったばかりの人間に起こされるな事自体が怖い、とかそういう?
別に寝起きを襲ったりしないよ〜、ほら、僕ってば紳士だから。
そうそう、もっと褒めてもっと褒めて〜。
おっと、僕ってば話しすぎちゃったみたいだね。もうこんな時間だ。
じゃあ学校で、ね。
ばいばーい!
ふう、とため息をつく。
視線の先にある、ただ白い天井。
その天井をしばらく見つめたあと、私は身を起こす。
ベッドから降りる際にぎぃ、と軋んで、少し太ったのかもな、と少しの苛立ちや焦燥を覚える。
冷蔵庫からペットボトルに入った水を取り出し、呷る。
一気に飲み干して口を拭い、そして再びベッドの方へ向かう。
とりたてて眠い訳では無い。
ただ、彼に起こされてしまったけれど、やることも特にないので横になる。
雨原葵。彼の事を語るにはそう多くの言葉は要らないだろう。
同級生。同じサークルの生徒。
出会ったばかりの頃はきっと善意だけで動いている彼を尊敬していた。ただ、その善意が少し空回りしていることに果たして彼は気づいているのだろうか。
きっと、友達ということになるのだろう。
これは少しむずがゆいような気もするけれど、世間一般の言う「友達」に相違ないのだろう、なんて思っている。
それから、もう一つ。
彼はいわゆる超越者である。
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