第28話 ~ヒロキの真っ直ぐなキモチ~

二次コンペの作品を提出してから、だいぶ時間が経った頃、優海は再び上司に呼び出されていた。

「ごめんね、忙しいときに呼び出して。」

「いいえ、大丈夫ですよ。今回は、どのような?」

上司は、優海の前に一枚の封筒を置いた。

「はい。二次コンペの結果よ。」

「ありがとうございます。」

二次コンペを通過すれば、新しいプロジェクトでキャラクターデザインのお仕事が出来る。優海はドキドキしながら封をあけ、内容を確認した。

「…!」


一方、ヒロキは今日も恋愛向上委員会の仕事を終え、本田の自宅に戻っていた。そして、自身のモヤモヤの原因を伝えるため本田の帰宅を待っていた。

「本田さん、遅いな…。残業かな?」

すると、本田が帰ってきた。

「おや、ヒロキ。こんな時間まで起きているなんて珍しいですね。」

「本田さん、心のモヤモヤの原因がわかりました。」

「そうですか。何か飲みますか?」

「じゃあ、ホットミルクでお願いします。」

しばらくして、本田がコップを持って戻ってきた。

「さあ、どうぞ。それでは話を聞かせていただきましょうか。」

「結論から言います。僕は優海のことが大好きです。」

「…はぁ。」

本田は、ため息をついた。それを見たヒロキはアンドロイドが人間に恋をするなんてとあきれられたのではないかと、内心ドキドキしていた。

「やっと本心に気がつきましたか。」

「えっ?」

本田からの思いがけない言葉にヒロキは驚いてしまう。

「私から見たら、あなたの気持ちなんて筒抜けでしたよ。僕の家に来てから生気が感じられなかったですし。」

「そ、そうでしたか?」

「そうですよ。まったく。今後自分の気持ちが見えなくなることがないようにプログラムの仕様を検討しましょう。話はそれだけですか?」

「えっ、はい。そうです…。」

「何を素っ頓狂な声を出しているのです。」

「いや、いつ好きになったとか、優海の良いところはどんなところとか、細かく聞かれるのかと思ったので…。」

「…これは僕の持論になりますが、ふとしたことがキッカケで恋が始まる人もいれば、いつの間に恋に落ちている人もいます。遅かれ早かれ、恋は種から目が出るように、自覚するのは後になることもあると思います。ヒロキもいつの間にか優海さんに恋をして、ゆっくりゆっくり芽を出したんですね。芽を出した恋心をどうするかはヒロキ自身で決めてください。もし何かあればサポートはします。」

「本田さん…。ありがとうございます。」

ヒロキは芽が出た恋心を摘むようなことをしたいとは1ミリたりとも思わなかった。花を咲かせるために自分に出来ることはあるのか、回線がショートしてしまうのではないかというほど考えていた。


後日、本田のスマートフォンに電話がかかってきた。ディスプレイには「持田さん」と表示されている。

「もしもし、本田です。」

「持田です。お忙しいところ恐れ入りますが、今、お電話よろしいでしょうか?」

「大丈夫ですよ。何かありましたか?」

本田はそのまま優海の話を聞くことにした。

「弘貴と別れました。」

「辛いかもしれませんが、詳細をお聞かせ願えますか?」

「はい。大丈夫です。昨日のことになるのですが…。」

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