第20話 ~優海の想い Part1~
~そして、約束の日曜日~
今日は弘貴が休日出勤の為、会うのは夜からになっている。しかしながら、家にいてもなんとなく落ち着かなかったので、優海はお昼頃に家を出発し、映画鑑賞やウインドウショッピングなどで時間を潰していた。自分の気持ちを正直に伝える…。今までは余程のことがなければ来るもの拒まずだった。だから告白されたら、とりあえず付き合うことにしていた。そんなスタンスでは続かなかったが。こんなに他人のことを深く考えて、自分の気持ちと向き合ったのは初めてかもしれない。だから、いつも以上に緊張しているのだろうか。優海はカフェで絵を描きながらそう考えていた。
いよいよ待ち合わせの時間になり、弘貴がやってきた。優海は引き続き絵を描き続けている。優海の様子を見た弘貴は、いつも通りでよかった。とホッとしながら声をかける。
「優海、お待たせ。」
笑顔で絵を描いていた優海の表情が一気に強張った。その表情を見た弘貴は優海の状態を悟った。
「優海、ごはん食べた?」
「ううん、まだ。」
「じゃあ、ごはん食べようか。僕、お腹空いちゃって。」
「いいよ。じゃあ、歩きながら決めようか。」
「ん~♡何これ!チーズ、物凄く濃厚♡耳の部分がサクサクだし、食感がたまらなく良い♡」
優海たちは路地裏にあったイタリアンレストランにいた。料理を食べるまで口数がかなり少なかった優海であったが、複数のチーズがたっぷり乗ったピザを口にした瞬間、緊張が一気に吹き飛んだ。
「弘貴、休日出勤お疲れ様。忙しそうだね。」
「うん。どうしても通したいプレゼンがあって、同僚とその準備をしていたんだ。おかげで準備も終わったし、明日は休む予定。」
「そのプレゼンって、社内?社外?」
「社外。会社の命運がかかっているからプレッシャーだけどね。」
「そうなんだ。プレゼン通るといいね。」
「うん。改めて思うけど、このピザ本当に美味しいね。頼んで正解だったよ。」
「そうだね。このお店どの料理もおいしいから、また食べに行こうっと。」
あっという間に料理を平らげた二人はお店を出た。
「ふう、お腹いっぱい。食べすぎちゃったけど、満足満足♪じゃあ行こう。」
「そうだね。で、優海、どこに行くの?」
「近くに夜景が綺麗なスポットがあるんだ。」
「そうなんだ。じゃあ、道案内任せるよ。」
「うん。こっちだよ。」
優海は気持ち半歩先を歩きながら、弘貴を案内するのであった。
その頃、ヒロキは部屋の掃除をしながら優海との生活を振り返っていた。自分のことが好きになれず、自信すらなかった優海が好きなものを見つけ、真剣に取り組むようになり、以前とは比べ物にならないくらい生き生きとしていた。そして、今日、弘貴と付き合おうとしている。
恋愛サポートアンドロイドとして、とても喜ばしいことだ。依頼者が幸せに向かっているのだから。
「嬉しいから喜ぶべきなのに、なんなの?このモヤモヤした感じ。どこかバグが発生しているのかな?」
ヒロキは優海のことを考えれば考えるほどモヤモヤが膨らんでいくのであった。
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