第19話 ~依頼人の幸せの為なら~

18時を過ぎ、

「もうすぐ帰る。」

と優海から連絡が来た為、ヒロキは夜ご飯を作っていた。

「優海、結論出せたかな。弘貴クンと付き合うのかな…。優海と弘貴クンが付き合う…。付き合う…。」

優海と弘貴が付き合い始めて、どんな風に関係を築き上げていくのかヒロキは想像していると…。

「ジュワ―!」

大きな音がキッチン中に響き渡り、ヒロキは一気に現実に引き戻される。

「えっ!?うわっ!?吹きこぼれてるじゃん!!大変!!」

ヒロキは急いでガスを止め、布巾でガス台を掃除しているところに玄関のドアが開いた。

「ただいま~。」

「おかえり、優海!今、ご飯作っているから少し待っててね!」

ヒロキが発している言葉とは真逆に、必死にガス台を拭いている姿が優海は気になっていた。

「何かあったの?」

「ちょっと考え事をしていたらお鍋拭きこぼしちゃって。掃除が終わってから料理再開するね。」

「ヒロキが何かやらかすなんて珍しいね。」

「そりゃあ、僕は優海が幸せな生活を送れるように常に考えているからね。」

「そうだったね。いつも本当にありがとう。ヒロキ。」

「どういたしまして。優海。」

優海はヒロキに心底感謝していた。だから、自分の気持ちを正直にヒロキに伝えようと決めていた。

「ヒロキ、ご飯食べ終わったら話したいことがあるの。」

ファミレスから戻ってきて開口一番に放った。

突然放たれた一言に驚いたが、真剣な表情の優海を見たヒロキは、優海の『話したいこと』の内容を察した。

「おかえり、優海。結論出たんだね?」

「うん。」

「わかった。丁度ご飯出来たから食べよっか♪僕、お腹空いちゃったよ。」

「私もお腹空いちゃった。ヒロキの料理、楽しみだなぁ♪準備手伝わせて。」

優海はお皿にパスタを盛り付けて、ヒロキが黄色い液体をパスタにかけていく。

「うわあ、おいしそう!でも、ヒロキ、この黄色いスープみたいなのは何?」

そう言いながら、優海は料理の匂いを嗅いでみた。

「これ、もしかして、かぼちゃ?」

「ピンポーン♪今日のご飯は、かぼちゃのクリームスープパスタだよ♪かぼちゃは、今の時期旬だから甘いと思うよ。」

「いただきまーす!うん、かぼちゃの甘みがちょうどいい♡スープに程よくとろみがあるからパスタとよく絡むし、粉チーズの塩分とマッチしてるね。おいしい♡」

「喜んでくれて嬉しいな♪」

優海の幸せな顔は、ヒロキにとって安らぎになると同時に居心地の良さを与えていた。ヒロキはこの心地よさがずっと続けばいいのにと思うのであった。


「ヒロキ、片づけ手伝ってくれてありがとう。」

「どういたしまして。じゃあ、そろそろ結論を聞かせてくれる?」

「うん。決めたよ。弘貴と付き合う。」

「そっか。優海がそう決めたなら、それでいいと思う。」

「あれ?理由きかないの?」

「うん。優海なりに結論が出たならいいと思っているよ。弘貴クンには返事をしたの?」

そういう結論になった理由とか経緯を聞かれるかと思って身構えていたが、あっさりと流されてしまったので拍子抜けしてしまう。

「あっ、ううん。来週の日曜日に直接会って返事をすることにしたの。弘貴も最近忙しいみたいなんだよね。」

「優海の気持ち、弘貴クンに届くといいね。」

そう言いながら、とびっきりスマイルが炸裂した。いつもなら『カワイイ~♡』と思うとびっきりスマイルだが、今回はそう思わなかった。ヒロキの心理的、いやプログラムにバグが起きたのか、優海がヒロキに対して心理的変化があったのか、どちらかはわからないが、なんとなく違和感を覚えるのであった。

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