第12話 ~ヒロキとデート!? Part3~
「テレビで知った情報、僕の検索システムで集めた情報、さらに渋川をうろついて得た情報をまとめた結果、最近渋川に新しい店舗が出来たこと、そのテンポはネットで予約できるから並ぶ必要がないことを知ったんだ。これだったら優海にロールアイスを食べさせることが出来る!って思ったんだよね。で、いなくなったのは場所を確認するためだよ。」
「お待たせしました~。」
「おっ、完成した。はい優海。」
ヒロキは優海にアイスを渡した。
「ありがとう。(あぁ、そうか。ヒロキは私を喜ばせたくて動いてくれていたんだ。なのに私はヒロキの気持ちを考えないで、自分のことばかり夢中になって勝手にいなくなったヒロキにイライラして…。ホント、何やっているんだろう…?)」
ヒロキに対する申し訳なさ、罪悪感、後ろめたさ、ヒロキの行動の理由を考えられなかった悔しさ、自分を律することが出来ない悲しさ、様々な感情が優海を支配し始め、優海自身でも上手く処理出来なくなっていた。
「うん。優海の言った通りおいしいね。」
ヒロキがふと優海を見ると、優海は泣いていた。
「…優海、泣いているの?」
「うぅ~。ヒロキ、ごめんなさい。」
「優海が謝る必要はないような…。どうして?」
「ヒロキと合流したら怒ろうと思ってしまったの。ヒロキが行動した理由を考えることが出来なくて、情けなくて…。」
「そんな。約束を破って勝手にいなくなったからそう思うのも当然だよ。」
「あと、一人でもどうってことないって思っていたけど、ふとヒロキがいなくなると急に怖くなったの。両親が亡くなった時、周りの人たちには虚勢を張っていたけど、置いて行かれた気分になったのと、悲しい気持ちもあった。その時のことを思い出してしまって…。」
優海の感情がぐちゃぐちゃな為か、伝えたい内容があまりまとまっていないような気がしたヒロキであったが、言いたいことは理解していた。ヒロキは優海を落ち着かせようと優海の頭にそっと手を乗せ、優しくこう言った。
「話してくれてありがとう。うん、そうだよね。そばにいた人が急にいなくなって悲しい気持ちになったり、怒りたくなるのは当然のことだよ。優海を喜ばせるためとはいえ、何も言わずにいなくなった僕に非がある。悲しい気持ちにさせて本当にゴメン。だから、優海は自分を責める必要はないよ。」
優海は本当に優しい女性だ。他人を考えすぎて自分を責めてしまうくらいに。彼女は感情の処理や表現の仕方を知らないだけなんだと、ヒロキは改めて思った。
「うん。ありがとう。ヒロキ。」
そうは言いつつも優海の涙は止まらなかった。涙が止まるのを待つのも良いのだが、優海が行きたがっていたお店だし、アイスが目の前にあるのに、そのアイスが溶けかけていた。
「(せっかくだから楽しんでほしいんだけど…、あっ、そうだ!)」
ヒロキは優海に気づかれないように、優海のアイスを一口分すくった。
「優海♪」
「えっ?」
ヒロキは優海の口の中にスプーンを入れ、微笑みながらこう言った。
「ここのアイス、カワイイだけじゃなくて、本当においしいね♪」
突然のヒロキの行動に驚いた優海であったが、それよりも嬉しさの方が上回っていた。
「うん。とってもおいしい!ヒロキ、連れてきてくれてありがとう!」
いつの間にか涙も止まり、心から嬉しい笑顔をヒロキに向けた。
「喜んでくれてよかったよ。(うん。やっぱり優海は笑顔が一番素敵だなぁ。この笑顔をずっと守っていきたい。)」
そう思ったヒロキであった。
「さて、アイスも食べ終わったし帰ろうか。」
「うん。今日は楽しかったぁ。で、優海。僕、勝手にいなくなっちゃったから、針千本飲まなきゃダメ?」
「針千本は、一応勝手にいなくならないように予防線として言ったんだけど、飲ますつもりないから安心して。ところで、ヒロキ、今更だけど食べること出来るんだね。」
「必要ない機能だけど、一応できるね。」
「そうなんだ。ますます興味深い…。今度、中身見せてよ。」
「それは…。さすがに恥ずかしいから勘弁してください。」
「ちぇ~。まあ、いいか。…そうだ!これからは一緒にごはん食べようか?」
「うん!食べる!優海とごはん食べるの楽しみだなぁ♪」
「ふふ。今夜は何食べたい?」
「えっとねぇ~。」
心の距離がだいぶ縮まった二人。楽し気に会話をしながら帰路に就く様子を星々たちが見守っていた。
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