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それ以来、私と新鳥野さんは朝の通学時に会うと挨拶を交わすようになり、さらに、後期になると一般科目で同じ講義を取っていることが分かった。でも彼はコミュ障らしく、グループワークでメンバーは自由に決めていい、となるとはみ出してしまうのだ。それで、一応は顔見知りの私が自分のグループに彼を誘った。
だけど、いざグループワークが始まると彼はかなり頼りになる存在だった。まずPCスキルがすごい。皆が驚くようなスライドをサクッと作ってくる。それに、普段は寡黙な彼だが、発言するとそれは常に的を射ていた。グループ内で彼の存在感が高まっていくのが、私はなぜか嬉しかった。
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「ねえ、一石さんの地元、能登なんだよね?」
ある日のこと。
講義後、いきなり新鳥野さんに話しかけられた。滅多にない事なので少し驚いてしまった。
「え、ええ」
「能登海浜自転車道って、走ったことある?」
「もちろんです。私の帰省ルートですから」
「そうなんだ。どう、走ってて気持ちいい?」
「そりゃもう! 天気が良ければ海がきれいですし、
「へぇ! すごいな、砂浜走れるのか。よし、今度行ってみるよ。ありがとう。じゃね」
ニッコリして手を振ると、新鳥野さんはくるりと背を向ける。
「あ、あの!」
多分その時の私は、変なスイッチが入っちゃったんだろう。気が付くと私は彼を呼び止めていた。
「よかったら、一緒に走りません?」
「……!」
新鳥野さんは一瞬、ギョッとした顔になった。そしてそれが少し迷惑そうな表情に変わる。
「あ……すみません。迷惑でしたら、別に……」
「いや、迷惑じゃないけど……何で一緒に走りたいの?」
う……
そういや、何でなんだろう。自分でもよくわからない。
「それは、その……私も久々に自転車道走りたいな、って……新鳥野さんなら同じペースで走ってくれそうだし……でも、新鳥野さんが一人で走りたいのなら私は遠慮します」
「……」
しばらく彼は私を見つめていたが、やがて、微笑みながら言った。
「分かった。それじゃ一緒に走ろうか」
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