第10話 D地区(5)
ピーススクールのとある一人の超能力者の少女に研究都市が開発したウィルスを移植されたいわゆる生物兵器のことだ.
研究都市は,
ピーススクール解体の発端であり,多くの犠牲者を生んだ元凶.
しかし,
だが,そのせいで
複雑な気持ちだ..
節から聞いた話からも莉奈を殺したのは,
まあ..つまり今目の前にいるイアが仮にあの
「一つ聞くが,お姉さんはピーススクールのメンバーだったのか?」
リアが首を振りこれを否定する.
「私とお姉ちゃんはずっと村でただ暮らしてただけだよ....研究都市が来るまではね..」
まあそうなるよな.
こういう話にはだいたい研究都市が絡んでくる.
おそらくこのD地区にいる大半は,他地区の研究都市によって親を殺され,住む場所を取られたものばかりなのだろう.
この二人..リアとイアもそういう事情があるのだろう.
ミブロもよくやるよ.
これだけの人数を他地区の連中にバレずに匿うとは.
「そうか. あのときの
何かこの二人の面倒くさい過去回に入りそうだったので途中で話を切り上げる.
「ええ!? ちょ ちょっと待ってよ!」
「まだ何かあるのか?」
リアの制止に冷たく返答する.
「令司! 女の子なんだからもうちょっと優しく接してあげないと..」
深雪の心優しいお言葉が俺の耳に入る.
「で? 何だよ」
隣で深雪がこりゃ駄目だという顔をしている.
「普通もう少し私の話に興味持たない? この後どう考えても私とお姉ちゃんの過去シーン入るところだったよね? え!? ほんとに興味ない感じ? 興味なくてもここは聞くシーンじゃない!?」
こいつマジで面倒くさいタイプだぞ.
もう少しこの瞬きしかしない姉を見習えよ.
「わかった. じゃあ俺がお前らの興味のない過去にについて説明してやる」
その言葉に深雪とリアが 何を言ってんだこいつ? という顔をしているのが目に入る.
「要は,村で平和に暮らしていたリアとお姉さん. しかし,ある日研究都市が村の領地を譲渡するように要請する. 村は断る. 研究都市は武力行使で村を壊滅状態にしてこれを解決. 以上だ」
リアがポカーンと口を開けている.
「す すごい..だいたい ってか当たってるんだけど!?」
このパターンしかないでしょもう.
「んじゃそういうことで」
「ま 待ってよ! それじゃお姉ちゃんのことはどう説明するの?」
あぁ..早く解放されたい..
「ん? 知らん」
「令司! ここは聞いてあげなきゃ!」
深雪がリアに対して気をつかっているのだろう.
だって..もうリアさん涙目になってるもん..
え? 俺が悪いの? 興味ないだけなんですけど?
てか聞かなきゃ駄目なの? 逆に何か暗くなりそうな話なのに聞いてほしいの?
マジでわからんわ..
「えっと..お姉さんはどうしてシュリムストに感染したのでしょうか?」
別に聞きたくもないが深雪とこいつの涙目に免じて聞くことにする.
------リア&イア過去------
私とイアお姉ちゃんは5歳年が離れている.
年が離れていても私と仲良くしてくれ,村のみんなからもとても信頼されていた.
イアお姉ちゃんはとても面倒見が良く,私も将来こんな素敵なお姉さんになりたい まさに私の憧れで自慢のお姉ちゃんでした.
この頃,研究都市(C地区)が大規模な都市化計画を進めるため立地の良い土地を次々と奪っていた.
その都市化計画の一つに私たちの村が含まれていて,村の全権利を研究都市に譲渡するよう迫ってきた.
村では話し合いが行われ,研究都市に全権利を委ねても良いのではないかと意見するものもいた.
しかし,村では一つの疑念があった.
研究都市から渡された契約書に書いてあるとある文だ.
《村の子供及び赤子の人権及び親権を研究都市に譲渡する》
村の大人たちは疑問を抱いていた.
村を譲渡するだけならまだしも,どうして子供の人権と親権を研究都市に託さなければならないのかと.
研究都市が何を考えているのかはわからないが村中がこれには大反対し,話し合いの結果,村は真っ向から対立することになった.
それに対して研究都市からの連絡は一切なかった.
一週間経過した頃だろうか,村のみんなは都市化計画のことなど頭の片隅にも残っていなかった.
私は今でも覚えている.
その日,私たちの平和な日常が一瞬で壊されていくのを..
「イア! リア! 早く逃げなさい!」
道に倒れ,体中から血が流れ出るお母さんを守るように覆いかぶさるお父さんが決死の声で私とお姉ちゃんに叫ぶ.
「お姉ちゃん! お母さんとお父さんが! 助けてあげないと!」
このときの私は何が起こっているのかわからず,ただお姉ちゃんに手を引っ張られひたすらに走っていた.
ただお母さんはビクともせず倒れていて,お父さんがとても苦しそうにしていたのを見て自然と目から涙が溢れていた.
そして私の手を引くお姉ちゃんも泣いていた.
「イア!! リアを頼んだよ」
それがお父さんの最期の言葉だった.
お母さんとお父さんが倒れている方から聞こえる銃声.
「リア! 振り向いちゃダメ. 前を向いて」
お姉ちゃんは涙を流しながら私の手を強く握っていた.
私たちはただひたすらに走りようやく村の入り口まで来た.
そして,そこで衝撃的な光景を目にする.
「なに..あれ」
お姉ちゃんの視線の先を見ると,巨大な長方形の箱の上にプロペラが付いた物体が止まっていた.
何より驚いたのが見知った村の子供たちが一人ずつその箱の中へと入っていくのだ.
「お姉ちゃん..私もあれに乗るの?」
あの箱の物体に乗り込んだら,無事に生きて帰ってこられない..そう本能が騒いでいた.
「リア! こっちよ」
走ってきた道の方へと方向転換し,お姉ちゃんは私の手を再び強く握る.
「お嬢さん方~ど~こへ行くのかなぁぁ?」
不意に後ろから声が聞こえ,二人の肩をがっしりと掴む感触がした.
後ろを振り向くと白衣を羽織っておりいかにも研究者という感じの青年が不気味な笑みを浮かべ立っており,顔の半分に蜘蛛の刺青を入れていたのが印象的だった.
「離してくれませんか?」
「うん. 嫌だね. 君たちはこれから研究都市のピーススクールというところに輸送しなきゃいけないんだよ. ごめんね~」
「....」
お姉ちゃんの言葉にその刺青の青年は当然のように否定した.
「妹だけでも見逃してはくれませんか?」
「へぇ~君たち姉妹なんだね! 妹を気遣う優しいお姉さん! まさに愛! うん僕は感動したよ! いいだろう. 妹ちゃんは見逃してあげるよ」
「ほんとですか!?」
お姉ちゃんのホッとしている顔が目に映る.
「嫌! 私お姉ちゃんと離れたくない! お母さんもお父さんもいなくなってお姉ちゃんとも離れるなんて私絶対嫌! お姉ちゃんが行くなら私も行く!」
「リア..」
「大丈夫大丈夫. 君たちのような素晴らしい姉妹を離れ離れにするなんて僕にはとてもじゃないけどできないよ~ 安心していいよ妹ちゃん. 君たち二人はずっと一緒だよ」
今思えばこのときほど狂気に満ちた言葉はない.
お姉ちゃんもこの不気味な違和感に震えていたのを覚えている.
「ただ..お姉さんあなたは本当に美しい! その綺麗な髪,整った顔立ち! 大人になったらきっと絶世の美女になるだろう! 」
一体この人は突然何の話をしているのだろうか.
私もお姉ちゃんも恐怖と困惑でただ話を聞いてるしかなかった.
「僕は,あなたのような美しい方を是非! 是非! 生物兵器という芸術品にさせてあげたい!」
もしかしてこの人..
私たちを見逃す代わりに..
「お姉さん..人間 やめてみませんか?」
このとき二人の子供は悟った.
研究都市..これは この世界にあってはならない存在だと.
そしてどう足掻いても消すことのできない存在だと..
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