第5話
妻の実家には何度も行っている。
妻を一人で帰省させたことも何度もある。当然、二人で会っていたのだろうと治は思った。
しかし、二人は一度も会ってはいないようだ。男の会おうという誘いを妻は断っている。
ほんとは会いたいけど、会うと歯止めが利かなくなりそうだから、やめておきます。
「なんだよ、それ」
ラブラブじゃん。ばっからし。治は一人リビングでカエルのようにひっくり返る。
それからも、帰省の時期が近づくと、男は薫に会おうと言っている。しかし、薫は、「夫に悪いから」「奥様に悪いから」「誰かに見られたら」などと言い訳をして、男の申し出を断っていた。
やがて男は薫と会おうとはしなくなった。
妻はどんな顔をして、これらの手紙を書いていたのか。
治は想像するが、薫の表情はどうしても描けないのだった。
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