第3話
治は全く家事をしない昔気質な男だった。妻とは会話も多く、対等に口をきいたが、お茶も自分で淹れたことがない。
妻はちょこまかとよく動き、自分の世話をしてくれた。そんなだったから、郵便受けから郵便物を取り出すのことも、薫が亡くなるまでしたことがなかったのだ。
手紙は一か月、もしくは二か月に一通だった。それが七年前まで続いている。
スタートは、自分たちが結婚した二年後だ。妻は二十九歳から、六十四歳までの三十五年間、実家の町に住む年上の男と手紙のやりとりを続けていたのだ。
治は愕然とした。治はなかなか気持ちを口にしなかったが、妻の薫は正反対で、なんでも思ったことを口にする女だった。そんな女にこんな秘密があったなんて。
治は裏切られたことよりも、薫が秘密を守りきったことに驚いていた。
女はわからん。大量の手紙を前に、治は首を捻り、うなった。
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