第1章 悪役フェチな幼少期
プロローグ
僕の名前はアルバート・フィル・スファナリア。長いから【アルバ】で覚えてくれ。歳は7歳、スファナリア国の第3王子だ。
兄上がふたり、姉上が3人。僕は末っ子である。
お城の庭を走り回っていた時の事故、父上が「人面岩」と呼んでいる人の顔に見える岩にぶつかって気絶してしまった。
そこで僕は前世を思い出したのだ。
男子高校生でアニメ・マンガ・ゲーム好き。主人公ではなく悪役を好きになることが多かった変わり者。
蝙蝠のヒーローであるなら道化王子。
世界一の名探偵であるなら犯罪界のナポレオン。
「無駄無駄」の悪のカリスマや紫色した蛇のライダー。
【悪役】こそが物語の主人公であるとすら思っていた。
走馬灯を見終わり、瞳が開ける。
場所は僕の部屋、と言っても前世の20倍の広さはある。
「おはようございます坊っちゃま、安心しました。目覚めなかったらと考えていたら手が震えて」
ベッドの横に控えていたのは僕専属の執事・ジェローム。
紫色の髪、凍りつくような鋭い瞳、細い筋肉質の身体。右目に火傷があり眼帯をしている。
……すっごいカッコいい。
なんというかサイレンサー銃を構えて冷酷に命を奪うような悪役顔の初老の男性。渋いのなんのって。
ジェロームとの出会いは2年前、兄上とピクニックしている最中に僕は身代金目的に彼に誘拐されてしまったのだが。
彼のあまりの悪役っぷりに惚れて「僕の配下にならないか?」と持ちかけたことが始まり。
……なんだ、転生後も同じように悪役フェチだったようだ。
しかし王子、あまり露見させるのはまずいな。
「おはようジェローム。心配かけたね」
「冷や汗ものでした。お腹を空かせているでしょう、朝食をお持ちいたします」
ぴしっと頭を下げて去っていくジェローム。
朝食、と言ったか。
頭をぶつけたのは朝食を食べた後だった……ベッドから降りてカーテンを開け、朝日が強くて目を閉じた。
どうやら1日中眠ってしまったらしい。
たんこぶが出来たおでこを触りながら僕は鏡の前に立つ。
黒髪で瞳は赤色、大人になったらかなりおモテになりそうな少年。王子ってだけはある、かなりの美少年だ。
自分で言ってて恥ずかしいけど、前世の記憶を思い出した今ではどこか他人事のような。
しかし黒髪赤目なんて素晴らしい。
王子なんてもったいないくらい悪役に良い物件じゃないか。
…………。
この世界には魔法が存在する。
しかし生まれつき使える属性が決まっていて遺伝性らしくほとんどの場合、親と同じ属性か類似した属性になるらしい。
そして残念ながら僕の属性は『光』。
というのも王族の血が流れているものは光属性と決まっている。
……王族に生まれた闇属性とかいたら激アツだね。生まれながらにして悪役の素質あり、じゃないか。
ついでにジェロームの属性は『木』、そして契約している使い魔はフェンリル(体に無数の鎖を生やした狼)。
使い魔というのは8歳になると女神様からもらえる自分だけの相棒。
これも魔法属性と同じように血筋が重要になる。
王族はみんな大天使を使い魔にしているから僕もそうなることだろう。
そして近日、8歳の誕生日。
「使い魔って変更出来ないのかな?」
「坊っちゃま。何度も言いますが大天使ほど素晴らしい使い魔はいないのです。王族の血に不満でもおありですかな?」
やれやれ、と呆れたようにため息を吐くジェローム。
「まあ、女神様の御心には従うよ」
これは悪役フェチの王子と魅力的な悪役たちよる素敵な異世界ライフの物語である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます