悪役フェチな第3王子の推し配下(キャラ)達がいつのまにか改心してるんだが?
鮫原あやと
冒険者の噂話
「この国で1番強い人物ってのは誰だと思う?」
王国の酒場で冒険者たちが集まる席のひとりが口にした。
冒険者たちはお互いに顔を見合わせて、
「そりゃあ、国王殿下だろ」
「おいおい、それは殿堂入りって事で例外だ。しかも全盛期の力はもう無い」
「だったら第1王子・ジオニス様じゃねぇか?最強の大天使を使い魔に持ち、聖剣マクベインの使い手。敵無しの剣士だ」
「第2王女・シャルロット様も劣らず強いじゃないか」
「でも王女殿下は盾使いだろ?」
「絶壁のな。しかも使い魔の大天使は武器の雨を降らせられると聞く。守りも攻めも抜かりない」
最強の戦士は王子か王女か、派閥がちょうど二分して酒場はすぐにでも乱闘騒ぎになるんじゃないかと不安になるような空気が漂う。
「候補はいくらでもいるんだ。別に王族じゃなくても良いじゃねぇか。城で執事をしているらしい元最凶の暗殺者・ジェローム。騎士団副団長であり公爵令嬢・エリザベート様。最上級ダンジョンをひとりで攻略した女冒険者・レイニィ。邪悪な魔女・ヴァラノワールだっている」
沈黙。
候補者をあげた泥酔している冒険者以外がなにかの結論にお至ったような顔。
「……そのほとんどが、第3王子の配下だよな?」
「ま、まあ。本人はただの回復魔法使いだから。使い魔だって聞いたことない天使の名前じゃなかったか?」
「と言っても第3王子の配下達総出だったらジオニス様やシャルロット様にも引きを取らないかもな」
「軍団を単騎で抑えられるふたりの方がすごいだろ」
違いない、と強く頷く冒険者たち。
やはり王国最強はその二択だろうと結論が出た。
根無し草であるはずの冒険者だが、この国の王族の存在が大きいことを実感して少しだけ鼻が高く感じた。
「でも、やっぱり第3王子はぱっとしないよな」
「うーん。顔立ちだけならピカイチなんだが」
「そう言ってやるなよ。配下に強者ばかりなのは、良いリーダーの証拠じゃないか。素晴らしい精神を持った方なのだろうさ」
「配下のほとんどが元悪人だという黒い噂もあるがな」
「……よく知る盗賊の男が第3王子の配下になったんだが、昔の荒れ果てた奴とは別人だった。身なりも整えて、まるで聖人みたいにさ」
酒場にいる数人がその話によく似た体験をしているのか、同意するように頷いた。
第3王子は悪人を聖人にまで更生してしまうのか。世の中に見捨てられた不良品ですら拾い上げて、愛情をもって汚れを拭き取り世に出しても恥ずかしくない良品に変えてしまうなんて。
女神の信徒ではなかろうか。
「まあ、誰が次期国王になったとしてもこの国は安泰だな」
それからは宴のようなことになった。
大いに食し、飲み、話した。
酒場の端っこでひとりで座っている客がいた。
その人物はクスリと笑って「みんな、アルバのこと全然分かってない。彼が国王にでもなったらこの国が、いやこの大陸が終わりだよ」
下手したら魔王も顔負け、なんて呟いた。
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