リアル プロローグ
「田中君、この地図記号は。」
先生が俺を指差して言った。うるさいな、今物語を考えるのに忙しいのに。黒板には文の文字が囲まれている。地図記号は覚えてないけど、推理すればいいだけだ。
文という文字が入るということは、文章に関係あるんだ。しかも〇ってことはきっと正解ですという意味だな。正解の文章に関係あるところかー。分かった。
「作家さんの家です。」
田中少年は小説の中の探偵にあこがれていた。
小学5年生の彼にミステリー小説の与えた影響はとても大きかった。もっとも彼にトリックだの動機だのを理解できるほどの知能は存在しなかったので、彼が楽しんでいたのは人を口先だけ翻弄する探偵の雄姿のみであった。もしそんな彼がミステリー小説を書いたとすれば、それは動機もトリックもなくただ雄弁にものを語る探偵だけが、描画されたのは必然であっただろう。
果たして彼にまともなミステリーを完結させることはできるのか
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