V、双子の誕生【3:2:0】15分程度

男3人、女2人

15分程度


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●舞台

現代イギリス。古い建物が多い街並み。人口が多く賑わいのある都市部。


●登場人物


レオン

父親。とても優しくて穏やかな性格。家族をとても愛している。研究施設勤務。


ミア

母親。優しく厳しい一面を持つ。妊娠しており今は安定期に入っている。病院勤務。


ルーク

双子の兄。17歳。明るく活発な性格で人気者。


リアム

双子の弟。17歳。聡明で何でも卒なくこなす。


リリー

長女で末っ子。14歳。幼さが残る、吸血鬼よりもまだ人間と意識が近い。


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「V、双子の誕生」

作者:嵩祢茅英(@chie_kasane)

レオン♂:

ミア♀:

ルーク♂:

リアム♂:

リリー♀:

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リリー「みなさま、こんばんは。

本日は、みなさまもよくご存知かと思う【吸血鬼】の話をしましょう。

史実上ではヴラド・ツェペシュやエリザベート・バートリーなど、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

【吸血鬼】と聞いて、みなさまは様々なイメージを思い浮かべるでしょう。

これから話すのは私の兄さまたち、吸血鬼の双子のお話です。ぜひ楽しんで聴いていってくださると嬉しいです。」


(間)


ミア「私の初産ういざんは、同じ吸血鬼の院長が経営する病院でだった。

吸血鬼の双子は珍しい。

二卵性双生児の男の子たち。

とても小さい体。2人とも大きな声で泣いてくれて、ホッと安堵あんどしたのを覚えている。

へその緒を切除した後、子供たちのへその切り口を舐める。

その血を舐めた時、母親になったという実感が湧いた。」


(間)


ミア「長男のルークと次男のリアム。

吸血鬼の子供は日光に弱いため、ほとんどが家の中で過ごす。

離乳食りにゅうしょくを食べるようになると、色んな物を噛みたがる。吸血鬼の本分だ。

その噛み癖を矯正することから、しつけは始まる。

犬でも猫でも噛んでしまうからだ。

人間が保有ほゆうするウイルスより、その他の生物のつウイルスの方がタチが悪い。乳幼児にゅうようじは吸血できないが、犬や猫を噛む姿は、やはり人間から見たら異質いしつに映る。

怪しまれる要因は、少ない方がいいに越した事はない。」


(間)


レオン「我が家に双子が誕生した。

出産に立ち会ったぼくは、切除したへその緒を院長から手渡され、子供たちの血を舐める。

出産に立ち会えた事で、『夫婦』から『家族』になったという事を強く自覚した。

妻や子供のために、これからの人生をついやしていく。そのための覚悟もできた。」


(間)


レオン「子供達はすくすくと育っていった。

ルークは活発で、興味がコロコロ移り、時には思わぬ行動に出たりして、きもを冷やす程だった。

一方でリアムは、一度興味を持ったものに対して執着するようで、手間がかかるような事はほとんどなかったように思う。

同じ街に住んでいる両親がたまに家へ来て、共に子育てをしてくれた。」


(間)


ミア「子供達が5歳を迎える頃、日光に対する耐性ができ、よく外へ出掛けるようになった。

それまで家の中から出ることはほとんど無かったため、近所の人間によく話しかけられた。

体が弱いと思われていたからだ。」


レオン「外へ行くようになると、育児はさらに大変になった。

ルークは気のおももくまま、あちこち動き回り、リアムは気になったモノを見つけると、そこから動かなくなってしまう。

双子でも、こうも行動が異なるのは、とても興味深かった。」


【現在、家の中】


リリー「兄さま、勉強を教えて」


リリー「私はよく、兄さまたちに勉強を見てもらう。

ルーク兄さまは始めのうちは意気揚々いきようようとしているが、元々勉強が嫌いなため、問題に文句を言い始める。

リアム兄さまは勉強ができるほうで、先生よりも教え方が上手い。家で勉強をしている姿を見る事はないけれど、授業で充分知識を得られるようだった。

2人とも面倒見の良い、大好きな兄さまたちだ。」


ルーク「リアムは何に対しても要領がいい。

日光を克服したとはいえ、日中は眠気に襲われる。

座学の科目中は授業を受けながら眠る。

俺もリアムも寝てるはずなのに、リアムはいつもテストの点がいい。」


リアム「ルークは気さくで人付き合いが上手い。学校でもルークを知らない生徒はいないだろう。

運動が得意で、いつも複数の人間とつるんで、話をしたり遊んでいる事が多い。」


(間)


リアム「ルーク、今回も点数やばいんじゃない?」


ルーク「うるっさいなぁ…そういうお前はどうなんだよ?」


リアム「(テスト用紙を見せる)ん。」


ルーク「はぁ?90点台ばっか…ウソだろ…」


リアム「ウソって…書いてある事が事実だよ?」


ルーク「ううう…授業中寝てるはずなのに、なんでそんな点数が取れるんだよ…」


リアム「睡眠学習〜♪」


ルーク「不公平だー!」


リアム「公正なテスト結果に対して、なんて事言うのさ…

で?1番よくできた科目は?」


ルーク「…現代社会…?

選択問題が多いからな、勘が鋭いと定評のある俺にはこれが1番!」


リアム「勘で答えても、それは実力じゃないだろ」


ルーク「点が取れればいいんだよ!」


リアム「あっそ。また母さんにお小言こごと食らうぞ」


ルーク「…はぁ…今日は家に帰りたくない…」


ルーク「リアムは勉強も運動もそつなくこなす。何をするにしても、ある程度出来てしまう器用さを持っているのだ。

それは、俺には到底真似出来ないことだ。

子供の頃から何となく、『リアムには勝てない』という思いがあって、その思いは今も事あるごとに出てきて、そのたびに心が暗くなる。

コンプレックス、というやつなのだろう。」


リアム「ルークは色んな人間から好かれる。いつも笑っていて、太陽のような存在だ。

それに対して僕は、必要がない限り、自分から他人に話しかけるという事はない。

友達がいないわけじゃないが、ルークの『カリスマ性』みたいなものはない。

普通。僕はきっと普通に過ごして、普通に就職して、普通に生きるのだろう。

子供の頃からルークの破天荒はてんこうな振る舞いに、憧れを抱いている僕がいる。」


(間)


ルーク、リアム「(揃えなくてOK)ただいまー」


リリー「おかえりなさい、兄さま」


ミア「おかえり。今日、テストが返ってきたんですって?」


ルーク「げ。」


リリー「ルーク兄さま、また悪い点取ったの?」


ルーク「うるさい」


リアム「ルークが悪い点数取るのはいつもの事だろ」


ルーク「お前もうるさい!」


ミア「勉強はしっかりしてちょうだい?」


ルーク「だから帰るの嫌だったんだよ…つか、なんだよテストって…」


リアム「まぁ、ルークの社交性があれば就職しても困る事はなさそうだけどね」


ミア「就職できれば、ねぇ」


ルーク「追い討ちかけるのやめてくれる…?」


ミア「それで、リアムは?」


リアム「はい(テスト用紙を渡す)。

僕もいつも通りかな」


ルーク「嫌味かこのやろー!」


リリー「さすがリアム兄さま…ルーク兄さまに少し点を分けてあげたいくらい」


ルーク「…リリー?」


リリー「なんでもない」


ルーク「聞こえてたからなー!」


リリー「なんでもなーい」


ミア「リリー、ご飯の用意するから運ぶの手伝ってくれる?」


リリー「はーい」


ミア「ルークとリアムは手を洗って」


ルーク、リアム「(揃えなくてOK)はーい」


レオン「ただいまー」


リリー「おかえりなさい、父さま!」


ミア「おかえりなさい」


レオン「ありがとう、ミア、リリー」


ルーク「あっ、父さんおかえり」


リアム「おかえりなさーい!」


レオン「はぁ、今日も疲れたよ」


ミア「今日もお仕事お疲れ様」


レオン「ありがとう。疲れが吹き飛ぶ」


ミア「ふふっ、大袈裟よ」


(間)


リリー「兄さまたちは、とてもモテる。

2人とも目立つ存在だし、吸血鬼のほとんどが、一般的な人間よりも、容姿に恵まれている事が多いからだ。」


(間)


【学校、ロッカー】


リアム「(ロッカーから手紙が落ちる)んっ。」


ルーク「おっ、ラブレター?この前も貰ってなかったか?」


リアム「うん」


ルーク「で、どうしたんだよ」


リアム「特に何も。何か知らないけど、『付き合ってください』っていうより、『気持ちを伝えたかった』っていう内容が大半たいはんで、きっと今回もソレだと思うよー」


ルーク「はぁぁぁ、よく分かんないもんだなぁ…

んで?付き合ってって言われたらどうすんの?」


リアム「普通に断るよ」


ルーク「えっ!もったいねぇー!」


リアム「…もったいないって…だって興味がないからさ。

っていうかルークもこの間、呼び出されてなかった?どうしたの?」


ルーク「断った」


リアム「人の事言えないじゃん」


ルーク「…まぁ、興味がないのは俺も同じだな」


リアム「僕たちってまだまだ子供だね」


ルーク「まぁ、そうだなぁ…

恋人ができて、家庭を持つ事が想像できない

でもいつかは自分の家庭を持つんだ。運命の相手って、いつ出会えるんだろー」


リアム「僕たちは同じ種族であれば、この人がそうだって分かるからね」


ルーク「そう考えるとウチの両親はスムーズに進んだんだなぁ」


リアム「そうだね…」


ルーク「家庭かぁ…」


リアム「不安がある?」


ルーク「そりゃそうだろ。相手を見つけて結婚したとしても、そこからまた労力を使うからな」


リアム「だねぇ。【飼い人】の調達が特に難題かな…」


(間)


ルークM「初めて吸血した、生身の人間の血。頭がとろけるようで、異様な高揚感を覚えた」


リアム「そういえば父さんが【飼い人】の調達に僕たちを連れていくって言ってたけど…」


ルーク「…不安」


リアム「初めてはそんなもんでしょ」


ルーク「なんかお前、余裕じゃない?」


リアム「そんな事ないよ。昔の時代に比べて、人をさらうのにはとても大きなリスクがある。それでも。やらなきゃいけないなら、やるだけさ」


ルーク「はぁ〜、肝が座ってるというか何というか…」


リアム「ルークはまだ覚悟できてないの?」


ルーク「悪かったな」


リアム「いや、悪いとは思わないけど、余計な感情は捨てて、『慣れた』方がいい」


ルーク「…あぁ、そうだな…」


【自宅】


ルーク・リアム「(揃えなくてOKです)ただいまー」


リリー「!兄さまたち、おかえりなさい!」


リアム「なんだ、リリー?ご機嫌だな」


リリー「ふふーん!血のキャンディの作り方を教わったんだー!まだ少し熱いけど、食べてみて!」


リアム「…うん、美味しいよ!難しかった?」


リリー「まだ母さまと一緒じゃないと作れないけど…大体の作り方は分かった!」


ルーク「んじゃ俺も」


リリー「…どう?」


ルーク「うん、母さんのとはちょっと違うけど、これはこれで美味しい」


リリー「はぁぁ…良かったぁ…」


ミア「あとは練習。だんだん作っていくうちにリリー特製のキャンディが出来るわよ」


リリー「へへへ、そうだと、いいなぁ!」


(間)


レオン「さて、これからルークとリアムがどんな相手と結婚して、どんな家庭を作るのか…とても楽しみだ。」


(間)


レオン「さて、いかがだったかな?我々吸血鬼は現代にも存在する。君達が知らないだけでね。それでも昔と比べれば君達人間との関係性も随分と変化したと言える。文明に合わせて我々も在り方を変え、存続している。そう、我々吸血鬼は人間に紛れ生活している。この話を聞いて君達はどんな感想を抱いただろう?吸血鬼に会ってみたい?それとも恐ろしい?存外、君達の身近に我々の仲間がいるかもしれない…だが【探そう】なんて思わない事だ。…何故かって?(少し笑って)…その答えはもう解っているはずだ…

では諸君。今宵の話はこれで終わり。機会があれば、また話を聞かせよう。それでは………よい夜を過ごしたまえ…ハッハッハッハッハッハ!!」

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V、吸血の衝動シリーズ 嵩祢茅英(かさねちえ) @chielilly

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