第10話 ハミュの特殊能力 ~幻想の森~
しばらく歩いた後、2人は森の入口らしき場所までたどり着いた。
少し離れたところ見上げるとキラキラと光っていたが、2人の目の前は立ち並ぶ大きな木しか見えなかった。キラキラとはしていないが、中のぼんやりとした夕焼け色の明かりが漏れていて、にわかに明るい。
林の通りの先には大きな木の合間に人1人が通れるくらいの隙間がある。いかにも入り口という感じだ。
「なんか…いかにも探索って感じの場所だね…!」
ココが少し震えた声で言った。怖がっているのか、わくわくしているのか、そのどちらかなのか、よくわからない声だった。
「ミュ…行ってみるミュ」
渋っていたハミュだが、ここに探索しにきたかのように落ち着いた声でハミュが言った。
その言葉からてっきりハミュが先に行くものかと思ったが、サッとココの肩後ろあたりに移動し、ココが先に行くように促している。
”しっかりしてるようで意外と怖がりなのがかわいいな”とココは1人和んだ。そのおかげで足は軽くなり、森の入り口へと踏み込んでいく。
ガサゴソと草木を掻き分け中に進んでいく。
進んでいくと、ぼんやりしていた明かりが次第に鮮明になっていった。その美しい光にココは無意識に胸が高まり急ぎ足になっていった。
木が密集している入り口部分を10メートルほど進むと急に開けた場所に出た。
「わぁ〜・・・」
「ミュ…ミュ〜・・・」
無数の花が目の前に咲き乱れていて、木の上の方で無数の丸い物が淡い綺麗な光を放ち花々を照らしている。光は木の葉に反射していて、空間全体を幻想的な雰囲気で包み込んでいた。
その光景は2人の想像を超え、目を丸くして立ちすくむしかなかった。
10秒ほどたって我に返ったのか
「と、とてもきれいな森だね!」
「幻想的ミュ!神秘的ミュ!」
「ね!思わず見惚れちゃう! やっぱり探索にきてよかった!」
「ぼやけた光の正体は上の方にある丸いやつミュかね?」
「シャンデリアみたいなやつだよね! ハミュ見てこれる?」
「ミュ! 行ってくるミュ!」
2人とも興奮して早口のやり取りである。
ハミュは光る丸い物の正体を見るべく上に向かって飛んでいった。
ハミュが上にいる間、ココは変わらずその景色に見惚れていたその時、入り口の方から奇妙な声が聞こえた。
「ニヒヒヒヒ」
「ん?」
振り返っても特に気になることはなかった。確かに聞こえたと思ったが、気のせいだったのだろうか。
そんなことを思って近づこうと思ったところでハミュが返ってきた。
「見てきたミュ〜!」
「あ、ありがとう〜! あれ出せそう?」
「もちろんミュ!」
ハミュはココから一步文離れ、尻尾の先の宝石を手の前に出すと集中し始める。
やがて”シュイーン”と音をたてながら宝石が光り出し、どんどんその光は強くなっていった。そして急に”ポンッ”っという音とともに木の上にある光の玉が出てきたのだ。
「ありがとう!やっぱりすごい綺麗だね!」
「ミュ!」
ハミュには尻尾の先の宝石から何でも生み出せる特殊能力があった。
しかし、生み出せるものは小さいもに限定され、さらにハミュがよく知っている単純なものや目の前にあるものに限定される。とても便利に思えるが、複雑な物は能力の対象外なので、ココたちは探索の時の手助けくらいにしか使っていないのが残念である。
ハミュがなぜ、どうやってこの能力を得たのかは覚えていない。ハミュには幼少期の記憶がない。
小さい時のある日、ココに助けてもらった時には既にこの能力があり、体がこの能力を覚えていたのだ。
ココもハミュも当然この能力について調べたが全くわからなかった。そのため、いつかこの能力について知ることは2人の目標でもある。
「木の実…かな? 見た目はココナッツの実に似てるね!」
「木からなってたからたぶん木の実ミュ!」
「食べた?」
「ミュ!? 食べてないミュ!」
この空間にも慣れてきたのか、いつもの冗談が出てくるくらいになっていた。
「美味しいのかな…」
「光る木の実を食べるのは怖いミュ… と言うかミュ!すぐ食べる発想になるのはココくらいミュ!」
今回はハミュがツッコミ役。この2人はボケとツッコミが度々入れ替わるらしい。
「あはは! さーて、気を取り直してスケッチしよ!」
「おいらは周辺を少しうろついてるミュ」
「はーい! それじゃあ少し時間経ったら奥に進んでみよう!」
ハミュは明らかに上機嫌で飛び回っていた。それを見ながらココもスケッチに力が入る。
「ニヒヒヒヒ」
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