第9話 導かれるように森へ ~風薫る林道~
ココとハミュはハナネズミに別れを告げ歩き出した。
「いや〜…休みすぎちゃったね」
「ミュ〜 あの香りは反則ミュ」
ハナネズミとの出会いがきっかけで予想外に長い休憩をとってしまい、2人は少し焦っているようだった。
花の香りが心地よくてなかなか立ち上がれず、1時間も座ってのんびりしていたのだ。魔法のような香りだったと別れてから思った。
それにしても、目的地もなく時間も決まっていないのに、なぜ人は焦ってしまうのだろう。
休憩後の行き先は決まっていた。ハナネズミが言うには林の道を真っ直ぐ進むと森があるそうだ。
森はハナネズミの香りとは比べ物にならないほどいい気持ちになると言っていた。どうなってしまうのだろうか。。。
「それにしても、この星は自然が豊かな星だね 人とかいないのかなぁ」
「まだわからないミュね…まだ船から少ししか離れてないミュ」
「そうだよね でも今のところ危険なこともないしこのまま順調に行けるといいね!」
ココはのんきな顔で言う。まるで危険なんて無いと思いこんでいるように。
ハミュはもう慣れたかのように落ち着いて言う。もう説得することは諦めている。
「安心はできないミュよ ここまで見つけた植物も生物も初めて見るものばかりだったミュ 安全だったミュけど…悪いものが見つかったらどうなるかわからないミュ」
「そうかなぁ 確かに変な生物は多いみたいだけど、そんなに心配することはないと思うけど」
ココがポジティブでのんきなのはなれていたが、"注意くらいしてほしい"と思いハミュは言ってみた。
「どうミュかね〜 もしかしたらゾンビやオバケが出るかもミュ」
「ヒッ…」
ココはピクッと一瞬凍りついて足を止めた。ホラーは大の苦手だ。
ハミュは当然わかっていたが、これだけ効き目があることには驚いた。現実的に未知な状況に立たされているからむしろ当然の反応なのかもしれない。ちょっと楽しくなってくる。
「そ…そんなことあるわけ…」
「どうミュかねぇ~ 変な生物ばかりだからいてもおかしくないミュ」
「・・・」
ココは不安な顔をして迷っているようだった。探索するのが少し怖くなったようだ。
ハミュは数秒ココの様子を見た後、ニヤニヤしながら続ける。
「ミュ!あの辺りの茂みに生えてる光る花、ちょっとドス黒いミュね もしかして…花に化けたオバケが…」
「ま…まっさか…」
ガサゴソ
「ヒッ…」
「ミュミュ!!!!!???」
・・・
数秒の間。
「・・・そ…そろそろ帰ろうか ねぇハミュ」
「そ、そうミュね…」
ガサゴソガサゴソ
「ひ、ひぇぇ…」
ココは地面にへたり込み後退った。ハミュはそんなココの影に隠れてうずくまっている。
逃げるまもなくピョコっと草陰から何かが出てきた。
「ギャッ! …………ってハナネズミ?」
「ミュミュ!!ハナネズミミュ? なんだミュ~脅かすなミュ」
影に隠れていたハミュが急に前に出てきた言った。そんなハミュのことをココが冷たい目で見ていたのは言うまでもない。
安心するとハナネズミの良い香りが漂ってきた。その香りを嗅ぐと心が穏やかになり、ネガティブな感情は消え去っていった。
声をかけようと思った瞬間、ハナネズミは小さい手を小刻みに振ったかと思ったらすぐに茂みに戻って行ってしまった。
何だったのだろうか。
「・・・ほんと、不思議な生物だね」
「・・・そうミュね」
2人は見合わせてぼんやり話し、それから進行方向に顔を向けてまた歩き出した。
遠くの方が行き止まりに見える。
ふと上を見ると巨大な木が立ち並んでいた。高層ビルが隙間なく並んでいるみたいだ。だがその壁のような森の外観は明るく、例えるなら緑いっぱいの壁に宝石が散りばめられているで、キラキラとまばらに光っていた。
それにしても立ち止まるタイミングで誰かに遭遇するような気が…。ハミュはそんなことを思ったが、そんな疑問はハナネズミの残り香にかき消されてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます