第8話 第2生物発見! 〜風薫る林道〜

林に入って1時間ほど歩いた。景色が変わらない単調な道だったが、2人は珍しいものがないか気にしながら歩いていたのであっという間だった。


「ここもだいたい探索出来たね!」


ココが充実そうに元気な声で言った。

実のところ、この林では光る花の珍しさが一層際立っているため、他の珍しい植物などはあまり目立たなかった。そのため、スケッチに勤しんだのは1枚だけだ。それでも終始機嫌よく探索できたので、とても濃い探索をした気分に浸っていたのだ。


「疲れたミュ~」

「それじゃあさらに進んでみよ~!」


珍しいものに目を光らしているのだ、神経をよく使ったのだろう。流石に疲れが溜まっていた。

そんなハミュの言葉をココはわざとらしく無視するのだった。

だがハミュも負けてられない。休みたかったのに加え、ココの探索熱が簡単に冷めないことはわかっているので、煽るように凄んで主張した。


「おいらの疲れが完全にスルーされたミュ! 探索の鬼ミュ!鬼ミュ!鬼!ミュ! ちょっと休憩しようミュ! ねぇねぇ鬼さん休憩しましょ…ミュ!」


休憩したい、ココの熱を冷まして落ち着かせたい、怒ってるわけじゃないと伝えたい、そんな感情が複雑にまじりあう中途半端で冗談まじりの言葉になった。


「えっへへ〜冗談だよ〜 私もヘトヘトだし休憩しよっ!」

「よかったミュ〜 鬼もヘトヘトだったミュ」

「もう鬼はいいでしょ!」

「仕返しミュ!」


一連の流れはココの読み通りのようだった。ハミュとしてはそれがわかるので悔しい。

なんだかこのやり取りが疲れそうだ。。。


2人は大きな木に下で休憩することにした。

たくさんの小さな花に囲まれて座り、2人以外誰もいない静かな一時を過ごす。

ふと沈黙した時にココは父親のことを思い返していた。


ココのお父さんはテラでも有名な宇宙探索士の1人だ。

若い頃にはエネルギーの消費なく火を生み出す魔法のような神秘を発見したらしい。ココには実感はないが、生活の必需品にもなるなんて本当にすごい人なんだと思う。

宇宙探索士として最高の成功体験をしている父、ココが小さい時にはたくさんの星に連れて行ってくれた。透明な海がある星…(いつの間にかびしょ濡れになっててびっくりしたな)、金銀クリスタルとかピカピカキラキラの星…(流石にピカキラがお腹いっぱいだったな)、どこも非日常で感動的な探索だった。

ココは今同じ体験の序章といえる地点に立ってる気がしていた。これからどんなことが起きるのかな…面白いことがたくさん見つかるといいな…。


「なんでお父さんは反対するんだろう…」


思っていたことが無意識に口に出ていた。それはとても小さな声だった。


「ミュ?何か言ったミュミュ?」

「えっ!? いや…何でもないよ」

「・・・そうかミュ」


かすかに聞こえたのでハミュは聞いたが、なんとなくココはごまかした。

ごまかしながら微かに遠い目でハミュを見ていたら、その後ろに違和感を覚えた。


「ん…? ハミュの後ろの花………もしかして動いてる?」

「ミュ!???」


ハミュはビクッと体を強ばりつつ、後ろに振り返った。

確かに花のまとまりはあるが、一見すると動いてなどいない。だがこのようなまとまりがここにあっただろうか、ハミュは少し怖かったが不思議に思ってツンツンしてみる。


「ミュ…ミュミュ」


ツンツン


ツンツン


バババッ!!!


「ミュ゛ミュ゛ミュ゛~~~~!!!」

「うわぁーーー!! てっ…てて…手足がはえてきた!?」


急に花のまとまりだと思っていたものから亀のように手足が生えてきたのだ。

2人共びっくりして尻もちをついた。いや、元から座っていたので尻もちをついた気がするくらいの驚きだったというのが正解だ。


(もふもふ)


「こ…これ生きてるミュ…! 手足がはえてきたんじゃなくて元からあるっぽいミュ!」

「えぇー! そんな生物いるの??」


その生物は少し不満そうにしていたが、すべてを許すかのようにもふもふと花の香りをまとっていた。

それはそれは良い香りを放っており、2人を冷静に、そして穏やかな感情にさせるのに効果的だった。

背中にたくさんの花を背負った、生まれたての赤ちゃんくらいの大きさで、かわいらしい山吹色のネズミ。その見た目も相まって、2人は親しみのような感情も抱きつつあった。


「・・・不思議な生き物ミュ いつからいたミュ…全然気付かなかったミュ」

「そうだね…でも害はなさそうかな?」


このネズミ、小さな手足を器用に動かして前に進んでいる。ハミュの近くに行こうとしているようだ。


「なんだかハミュを気に入ってる気がする!」

「確かにそんな感じがするミュ…なんだか悪い気はしないミュ!」

「ねぇねぇ、お名前聞いてみて!」

「ミュ」


2人は香りの魔力にかかったかのように、ネズミと仲良くなろうとする。


「$ mysql name」

「$ sqlcmd hananezumi」


ココは一瞬正気に戻り心の中でツッコむ "ワンポポの時と全然違うがな" と。


「ハナネズミっていうみたいミュ」

「ハナネズミって言うんだね! よろしくね!!!」


速攻で仲良く(?)なった。

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