少女が案内してくれたホテルは、大きな屋敷のような二階建てのホテルだった。

 門があり、やはり、オレンジ色にぼんやりと輝くランプの灯りがあって、周囲の夜の闇を明るく照らし出していた。

 少女はその門を開けると、そのまま屋敷の敷地内にある小さな道の上を歩いて屋敷の入り口まで移動をする。

 僕はそんな少女のあとについて、夜の街の中を移動した。

 僕は移動の間、道に迷わないように、少女の短い、緑色のリボンで結ばれているポニーテールのゆらゆらと揺れる髪の動きをじっと見つめていた。


「さあ、ついたよ」

 後ろを振り返って、にっこりと白い歯を見せて少女は言った。

「どうもありがとう」

 と僕は少女にお礼を言った。

「どういたしまして。それじゃあね。親切で礼儀正しい、世間知らずの優しいお兄さん」とまた子供っぽい顔で笑って、少女は僕にその綺麗な手のひらを見せるようにして、その手のひらを小さく左右にゆらゆらとゆっくりと振りながら、ばいばいをして、そう言った。

「じゃあ、さようなら」

 と僕は言った。

「さようなら」

 と少女は言って、今二人で歩いて来た道の上を今度は一人で歩いて引き返して行って、やがて、そのまま少女の姿は夜の闇の中の消えて見えなくなった。

 僕はそんな少女の後ろ姿をぼんやりとその場所から少女の姿が見えなくなるまで見送ってから、立派な木製の扉を開けて、お屋敷のようなホテルの中に入っていった。


 ちょうどそんな風にして、僕がお屋敷のようなホテルの中に入ったときだった。

 遠くから不思議な音楽が聞こえてきた。

 それは、どこかの異国のお祭りのときに、演奏されるような、民族楽器を使ったような、……そんな不思議な音楽だった。

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