「どうしてわかるの?」

 と僕は言った。

「大きな荷物を背負っているから」と少女は僕の背負っている大きな灰色のリュックサックを指差して、にっこりと笑ってそう言った。

 僕はその言葉を聞いて、なるほど、と思った。

「……それに、この街の風景を珍しいものでも見るようにして、興味深そうに見ていたから。あ、この人は『旅人』なんだって、すぐにわかった」と少女は言った。


「そうなんだ。なら、声をかけてくれたついでに、この街にあるホテルの場所を教えてくれないかな? 今夜の寝床を探しているんだ」と僕は言った。

「いいよ。私についてきて」

 とようやく、その両脚を石造りのレンガの道の上において、少女は言った。

「ありがとう。助かるよ」と僕は言った。


 すると少女は「じゃあ、はい」と言って、僕の前までやってくると、その小さな手のひらを上にして、僕の前に差し出した。

「なに?」と僕は言った。

「なにって、お金だよ。お金。まさかお兄さん。ただで私に道案内をさせるつもりだったの?」とにやにやと笑って、少女は言った。


「いくら?」と僕は言った。

 すると少女は僕に金額を言った。

 僕は少女の言う通りの金額を少女に払った。

 すると少女は「毎度あり。どうもありがとう」と言ってにっこりと子供っぽい笑顔で笑うと、「こっちだよ」と言って、街の道の上を歩き始めた。

 僕は少女のあとについて街の中を歩き始める。

 ふと見上げると、真っ暗な夜空には明るい大きな白い月があった。

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