第4話 5分間
iPhoneのアラームが鳴った。
俺は一回アラームを止めたが、5分後にはスヌーズ機能に起こされてしまった。
ん…ねみぃ…
起き上がってみると、微妙に身体のあちこちが痛かった。久しぶりに敷布団で寝たからだろうか。
気付くと、明日香はもういなかった。
階段を降りてダイニングに向かう。
支度を済ませた明日香はテーブルでスマホをいじっていた。
「おはよ」
「…おはよ」
挨拶を返してくれた明日香に、俺は、
「もう用意できてんなら先行けば?」
と、声を掛けた。
「あんたが遅刻しないくらいで食べ終わるか見てるー」
と、明日香は言った。
正直、10分以内に食わないと間に合わないな、とは俺も思っていた。
「じゃあ尚更困るだろ?特進は出欠厳しいって聞いたぞ」
俺は食パンをかじりながら言った。
明日香は黙ってスマホをいじり続けた。
多分インスタか何かを見ているんだろう。画面に誰かの台湾旅行の写真が映っていた。
ふと、俺は昨日亮平に言われたことを思い出した。
「なあ、明日香」
明日香が俺の方を向いた。俺は、
「やっぱ先行ってていいよ」
と言った。
「なんで?」
と明日香は聞いてきた。
「なんでっていうか…ほら、なんか誤解されそうじゃん?部活のやつとかにさ」
と俺は言った。
「何を?」
と何故か怪訝そうな顔で明日香が尋ねてきた。
いや、わかるだろ。つか、わかれよ。
「男女が朝から一緒に登校してたらさ、誰だって気になるだろ」
「俺らなんの関係も無いのにさ」
と、俺は呆れたように言った。
明日香は、一瞬驚いたような顔をして、それからにやにやし始めた。
「ふぅん?あんた、そういうの気にするんだ」
なんだその反応。
「気にしない方がおかしいだろ」
と俺は言った。どういう風に誤解されるとか、本当にわかっていないのかもしれないなと思った。
明日香は、2枚目の食パンを食う俺を、少しの間見ていた。
そして、
「…5分くらいずらせば大丈夫かな」
と、呟いた。
「そのくらいでいいんじゃん?」
と俺は言った。
明日香はスマホを鞄に入れて、すぐさま玄関に向かった。
お邪魔しました、と、あいつの小さい声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます