一人目の被害者⑤
母親は帰る途中も家に着いてからも特に何も聞かなかった。
ただただ、
「大丈夫だよ。私たちはあなたに何があっても味方でいるからね。あなたは一人じゃない。辛いなら実家でゆっくりしてて良いだからね。」
と何回も優しい言葉を掛け続けてくれた。その言葉に私は泣きながら小さく頷き続けた。
夜8時近くになり、彼氏と二人で話したいことがあるからと母親と別れ、私は一人で彼が来るのをじっと待った。彼は、約束の時間ぴったりに部屋に来た。私は彼に聞こえるか聞こえないか分からないくらいの小さな声で、
「入って。」
と伝え、部屋に招き入れた。
普段とは全く違う私に彼は驚きを露わにしながら『お邪魔します。』と普段なら言わない言葉を発しながら部屋へ上がった。
「大丈夫か?顔色が凄い悪いけど。」
彼は心配そうに私に声を掛けた。
「大丈夫じゃないかな。ごめんね、心配かけて。でも、どうしても今日中にあなたに聞きたいこと、確認したい事があって。」
「なんだよ、確認したいことって?」
「・・・。」
私は真実を知りたい気持ちと、もし彼が犯人だった時のショックを考えると湧き出て来る不安や恐怖とが混ざり合い、なかなか言葉を発することが出来なかった。
そんな私の様子をみた彼が再度、口を開いた。
「何かすごく聞きづらいことみたいだな。何を聞きたいのかは分からないけど、俺はお前を裏切ることや悲しませるような事は一切していないと断言できる。だから、安心してなんでも聞いて欲しい。そして、今お前を苦しめていることに対して、俺に出来ることがあれば何だってするから。」
彼は穏やかな口調で、私に声を掛けてくれた。その優しい声に包まれたおかげもあったのか、私は意を決して口を開いた。
「とりあえず、この写真を見てくれる?」
写真を見ると彼の顔から血の気が引いていくのが、はっきりと分かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます