第9話 1915年

 一九一五年。第一次世界大戦の最中。大英帝国は同盟国側の軍事大国オスマン帝国との間に新たな戦線を開こうとしていた。

 一つの艦隊としては史上最大となる海上部隊が編成された。艦隊に乗り込んだ兵士の数、約五〇万。イギリスをはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、インド、ニューファンドランド、フランスから集められた彼らに、オスマン帝国の帝都コンスタンティノープルを陥落させるようにとの命令が与えられた。


 そこには、世界中の人々がいた。何も知らない者、高慢な者、勇敢な者。彼らは戦争を英雄伝説の具現か、成人の儀式か何かだと考えていた。

 だが、そこにあったものは、夢でも、伝説でも、冒険でも、他の何ものでもない。誰にでも等しく与えられた死の機会が、横たわっているのみだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る