ダイヤモンドプリンセスのクルー達
乗船客達も辛い環境にありましたが、それ以上に大変だったのが、クルー達だったと思います。
クルーの大半が外国人です。
彼らは大抵、複数人の相部屋で寝泊まりし、部屋の誰かがコロナウィルスに罹患すれば、一気に感染が広がる恐れがありました。
また、陽性かもしれない乗船客に対しての接客も、軽装で引き続き行わなければなりませんでした。
クルーの誰もが、コロナウィルスへの感染を覚悟していたと思います。
また、乗船客達の不満が真っ先にぶつけられるのが、クルー達でもありました。精神的にもかなり疲弊し、過酷な環境だったと想像します。
それでも、多くのクルー達が最後まで笑顔とホスピタリティのある接客を貫き通していました。
検疫隔離期間中、食事の配膳をするクルー達はまるで戦場の兵士達のようでした。
重いカートを数人で押しながら、気の遠くなるような膨大な数の客室を、猛スピードで駆け抜けるようにして食事を配る。
とても大変な作業です。コロナウィルスに罹患する危険もあります。
それでも、手早く食事を手渡しながら、
「こんにちは!ご機嫌いかがですか?」
と挨拶をしてくれたり、
「マダム、食器は熱いですよ!ドアを押さえていますから、気を付けて受け取って下さい」
そんな気遣いの一言を、常に忘れずにかけてくれていました。
本当は彼らもこんな場所から逃げ出したくてたまらなかったと思います。とても怖かったと思います。
それでも、そんな態度は微塵も表に出さずに、最後まで献身的に乗船客達に対して尽くしてくれました。
クルー達の温かい気遣いがなければ、私も心が途中で折れていたかもしれません。
外国人クルーの多くは片言の日本語を話しました。
それは、“仕事だから”というのもあるかもしれませんが、隔離に入る前の航海中、仲良くなったクルーに話を聞いてみると、
「ボクね、日本が大好き。ダカラ日本語を覚えたヨ」
そんな風に笑顔で語ってくれました。
とあるクルーはスマートフォンに入ってる世界中の美しい港の風景の写真を見せてくれながら、
「世界にはキレイな場所たくさん。でもね、ヨコハマが一番。世界一、ビューティフルな場所だよ。ヨコハマは僕のホームだよ!」
と力説していました。
ダイヤモンドプリンセスのクルー達は日本愛に溢れていました。日本を自分の祖国と同じくらい愛してくれていました。
そんな彼らがその後どうなったのか、私も下船後に心配しながらニュースを追っていましたが、隔離期間を経て無事に祖国へと帰る事が出来たと聞いて安心しました。
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