第2話

 東京は雪が降らない。降っても、そこら中の道をまんべんなくコーティングし、家々を変色させ白一面の世界を作ることはない。

 そんな中で生活していけるのか。

 私は二年ほど悩んだ。しかし、どうしても進学したい(しかも入学する力は持っていた)美大があり、私は東京へ出た。

 東京へ出て一か月ほどしたころ、不思議な夢を見た。

 幼女一人が雪遊びをしていた。幼く丸っこい幼子は、かつての私だった。

 彼女は私を見つけると、ぱっと顔をほころばせ、転がるように駆けてきた。そして、私の今は長く伸びた足にがしっと抱きついた。

 そして、笑顔をこちらに向けると言った。

「ブルースノーは最高の人、レッドスノーは最悪の人」

「え?」

 なんのことだか、わからなかった。

「忘れないで。雪江ばあちゃんの伝言」

「雪江ばあちゃんの?」

「そう、雪江ばあちゃん。やっぱり、忘れてた」

 幼い私はそう言って唇を尖らせてから、笑った。

「雪が私たちを守ってくれるわ。雪だけが」

 どういうこと? 

 まばたきを一つすると、足元の彼女は消えてた。

 顔をあげると、かつて慣れ親しんだ白一面の世界がそこには広がっていた。私は懐かしいと思いながら、再び眠りの淵に落ちていった。

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