2-2

「美里ちゃん、いい加減にしないと」

 とんがった声が茶の間を貫く。

 母の妹、美智子叔母ちゃんは頻繁に美里の実家に出入りしている。ちなみに、叔母ちゃんの旦那さんは父の部下だ。

 狭い、狭すぎる。うんざりする。村社会どころか数珠つなぎだ。なんだか・・・いやらしい。

「本家の娘がこれじゃ。姉さんも肩身が狭いってこぼしてたわよ」

 本家に嫁いだ嫁はずっと親戚たちの顔色をうかがうことになる。それをわかっててこの家に嫁いだ母は馬鹿なのか。

 否、父に惚れていたのだった。

「あんたが生まれるまで、ほんとに父さんが好きだったわ。熱にうなされたように。でも、あんたを産んでから急に冷めちゃった。好きな気持ちも一緒に出しちゃったのかと思って、母さん、本気で焦ったわ」

 母の佳代子がそう言って爆笑していたのはいつの正月だったか。

 その席にこの叔母もいたはずだ。たしか、一緒に笑ってたはず。

「仕事しないなら、結婚しなさい」

「え?」

 テレビを見ていた私は、そこではじめて叔母を振り返る。

 叔母ちゃんも年とったな。こっちに帰ってきて半年も経つのに、叔母の劣化が気になって仕方ない。

 母より三つ下の四十五歳、東京ならまだまだ美しく着飾っている年齢だ。

 しかし、叔母は化粧さえしてない。

 いくら身内の家を訪れるだけだからって・・・

 東京からこぼれてしまったという事実がまた身に沁みる。

「嘘でしょ、私まだ二十三だよ」

「もう二十三よ。私も姉さんも二十三で嫁いだのよ。そして、姉さんは二十五で美里さんを産んだ」

 叔母に子供はない。

 旦那に申し訳ない。

 何度もそう繰り返し、叔母は深く沈みこんだ数年間を過ごしたと聞いている。そんな話も遠い昔のこと、今は、完全復活状態である。

「だから、早くもなんともないのよ。何より、あんた、何もしてないでしょ」

「陶芸してるもん」

「趣味の陶芸でしょ」

「プロになれるって先生が」

「あんな素人講師の言うこと真に受けないの」

 ディスりあう村人たち。田舎の人間関係が「温かいモノ」なんて誤解、どうやったら広く広めることができるだろう。

 ブログか?

 二十三歳の田舎暮らし・・・こんなタイトルじゃ、アクセス数を稼げそうもない・・・

 堕ちた二十三歳。借金の果てにトトロの住む町へ・・・おっ、なかなかいいんじゃない。

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