2-1
帰ったところで、することなんてない。
ちょっといい大学に入ったとはいえ、中退したうえに、バイトの経験もないろくでなしだ。
あるのは若さだけ。
しかし、もっと若い女は田舎にもあふれていた。
簡単なバイトの仕事さえ得られず(だいたい田舎にはそれほど仕事はない)、私は陶芸にはまった。
都落ちした若い女が一心不乱に陶芸に打ち込む姿は鬼気迫るものがあるようで、誰も私に近寄ろうとはしなかった。
そのぶん、陶芸の腕はあがる。
めきめきと力をつける私に、この町で育った講師の中年の女は「これでプロになったら。そのほうがあなたのためかもしれない」とマジ声で言った。
私、いいこと言った、いいことしたでしょ。
緊張した表情にはそんな充実感がみなぎっていた。
そのほう? どのほうだ?
苛立ちながらも私はニコリと笑って返した。
「そうかもしれませんね」
「うん、うん、それがいい。がんばって」
女は私の両肩に一瞬優しく手を置いてから離れていく。
無責任なことを言う人間でも、私の肩に温もりを残す。なんという屈辱感。
下唇をかみしめながら、私は「そのほう」じゃないほうのことを考えた。
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