第182話 学園生活28(vsアル)

 俺とアルは、闘技場で入念に準備運動をしていた。


 ルームメイトであるところの俺とアルは、2人になると飽きもせずによく喋る。平日はお早うからお休みまで一緒に過ごしているというのに。

 アルは引っ込み思案に見えて、とても話たがりの甘え上手なのだ。


 今は違う。

 2人とも、言葉を交わさずに黙々と自分の体のメンテとウォームアップをする。

 アルの身体は華奢でしなやかだ。最近は身長も伸びてきたので、頭身も上がってきた。前世のアスリート番組で見たエリートキッズアスリートを思い出す。歪みのない骨格。それを覆う、柔らかく密度の高い筋肉。健康的な肌が、筋肉という自然の彫刻により美しくかたどられている。

 美しいのは肉体だけではなくて、魔力もそうだ。夏水仙のような純白のオーラがアルの身体中から噴き上がっている。初めて出会ったときのような、暴力的なそれではない。


「2人とも、準備はいいかしら?」

 リラ先生が尋ねる。


「はい!」

「大丈夫です。」


 2人で闘技場の中央に歩き始める。


「頑張れよー!」

「アルー!フィルなんて吹っ飛ばしなさい!」

「いやイリス、そこは俺も応援しようぜ!?」

「何言ってんのよ!あたしもクレアもアルの応援よ!」

「当然。」

 イリスの隣でクレアが力強く。


 クレア、昨日のことをまだ根にもっているな。普通、アルが俺の上に乗っていたから襲われているのは俺だと発想するはずなんだけど。


 俺は寂しくなり、ロスを見る。


「しゃーないなぁ!フィルを応援してやるよ!」

「ありがとう、ロス。ありがとう!」


 ほんまえぇ子や。王の器やでほんま。

 逆にイリスは王女の器じゃないね。

 俺がイリスに「いーっ!」っと口を横に伸ばしたら、「いーっ!」っと返された。お前本当に社交界常連の王族かよ。可愛いけどさぁ。


 アルが位置に着く前に、リラ先生のところへ行く。下から見上げながら、何やらリラ先生に話しかけている。それを聞くと、ニコッと笑い、リラ先生がアルの頭を撫でる。アルは赤面しながらも、されるがままだ。

 あの2人には特別な繋がりがある。アルにとっては命の恩人であり、恩師。リラ先生にとっては、結婚をお膳立てしてくれた手塩にかけて育てた生徒。

 俺は穏やかな気持ちで、そのやり取りを眺めながら待つ。




「ごめん、フィル。待った?」

「いや、全然?」

「えへへ、ありがと。」

「いいってことよ。」


「では、始めるわね。」


 リラ先生の言葉に、俺とアルは同時に構える。俺は体を半身にして、打撃面積を減らす型だ。アルは自然体。両手をだらんと下げている。

 色んな体術を教えたが、一撃が速く重いアルは、どんな型にでも組み直せる自然体が一番だと結論づいたのだ。


「始め!」


 俺は突貫した。脱力。前傾姿勢。爆発的瞬発。頭蓋の重さを利用して前傾姿勢、トップスピードへ。腕と足のねじれから生まれるエネルギーで一歩地面を踏むたびに加速。音を置き去りに。


 ほら、気づいたらもうアルの目の前だ。


「手刀舜接・斬!」


 肩に切りつけた俺の手刀は、あっさりと掴まれる。どういう反射速度だよ。


手指火炎放射ヴァラル・バーケ。」


 掴まれた手の、5本の指から火柱が噴き出す。あらかじめ魔力を練っていたのだ。

 顔の側面を焼かれて、思わずアルが横にたたらを踏む。

 アルは強い。魔力量もお化け並だ。でも、多種多様な魔法は使えない。つまり、空気中に点在する魔素は全て、俺が使い放題なのだ。魔法使いの戦いは魔素の陣取り合戦。アルは強力な個としての戦力を持っているが、この陣取り合戦を最初から放棄しているのだ。

 それが弱点。


 当然、俺はそれを突く。

 汚い大人だからな。


紅蓮線グレンライン。」


 アルの横っ腹に火炎放射が突き刺さる。かつて、赤子だった頃の俺の魔法とは違う。風魔法をブレンドして火力も放射速度も密度も上がっている。今なら竜種にも有効打になり得る威力だ。




「フィルが様子見せずに特攻した?」

「それだけアルが危険なんだろうな。」

 イリスの言葉にロスが返す。


「フィルがアルの顔に火を!」

「クレア、あんた。あの戦い見て感想がそれ?」

「でもアルの顔が!」

「はいはい。気持ちはわかるけど、あのくらいはハイレン先生が治せるわよ。それに、そんなに効いてないみたいよ。」


 イリスが額に汗をにじませて闘技場を見下ろす。汗をかいているのは、決してフィルの火魔法で温度が上がっていることだけが理由ではない。

イリスの目つきに気付き、クレアとロスも下で戦う2人を見下ろす。


 そこには炎の塊を食らいながら、悠然と距離を詰めるアルの姿があった。




「びっくり人間ショーかよ!これだけ多段ヒットすれば火属性の魔物のサラマンダーでも上手に焼けるんだけどなぁ!」

 俺は叫びながら後退する。


 アルは余裕の表情でゆっくりと歩く。

 俺の助言通りの動きをしている。俺は魔法を行使している。アルは身体強化で身を固めているだけ。魔力の浪費はこちらが多い。アルは落ち着いてこっちの体力の消耗か、次の手を待てばいいのだ。

 ロッソと戦った時のように。


 これがアルの魔法の正体。死霊高位騎士リビングパラディンを無力化した力。圧倒的なまでの魔力に支えられたエネルギーの塊という暴力。アルは形を持った魔法を使う必要がない。火も、風も、水も、土も、魔力を乗せて操る必要はない。

 何故か?


 魔力に形はない。だから敵を焼き尽くしたいときは火魔法に変換する。流体を武器にしたい時は水魔法や風魔法に変換する。自然の鈍器で殴りたい時は土魔法に変換する。

 魔法とは、力が弱いものがより強いものに対抗する手段なのだ。


 アルにはその必要がない。生まれながらにして食物連鎖の頂点。自然発生的捕食者ナチュラルプレデター。魔法に変換せずとも、魔力をそのままぶつければそれが武器になる。

 その発想は竜種のそれである。

 竜には魔力の塊をぶつける吐息ブレスという固有魔法がある。アルは人型にして、それと同じ戦いができるのだ。


「魔力量以外で打点を作る。今の俺にあるのは、技術と物理!」


 というわけで、質量をぶつける!


複合金螺旋突貫フルメタルドリルライナー!」


 距離を詰めて、亜空間から取り出したドリルで突貫する。

 ただの出来合いのドリルではない。タラスクの甲羅をアーマーベア亜種の鋼で綺麗に溶接してある。日曜大工で縦、斜め、横方向からの衝撃に最も対処できる硬度にまで引き上げた。風魔法で強風を送り、空気抵抗の少ないフォルムにもした。硬度の実験に関しては、他ならないアルにも手伝ってもらった。瑠璃が用いていたハニカム構造と、俺がいた世界の新幹線を模した流線形。

 寮の庭で実験する俺たちを、ザナおじさんは不思議がって眺めていたものだ。


 アルは悠然と佇んで待っている。

 かわす発想はないようだ。


 メシャっと、大質量の金属がひしゃげる音がした。ドリルのハンドルを握っていた手元に鈍痛が走る。手首の関節にある軟骨がブチ切れたようだ。不快な痛覚が腕を伝って全身に走る。

 ひしゃげたドリルがしゃちほこのように上方へ曲がる。俺は空中を浮遊しながらアルを見下ろす。


 アルは両手で挟み込むようにドリルの先端を抱え、腕力で潰していた。足元にはクレーター。アルというオブジェクトが受け止めた衝撃がそのまま地面へいったのだろう。つまり、アルは微動だにしなかったのだ。


「ドラゴンでもその受け止め方はしねぇぞ!?」

「フィルが言ったんじゃないか。ハニカム構造は一方向の力を他に逃すんだって。じゃあ、両側から挟めば、ほら、潰れた。」

 ニコッとアルが笑う。


 手元に、折れた巨大なドリルがなければときめいていたところだ。


「じゃあ、分け入るしかねぇな。」


 俺は上空から縦回転してかかと落としをアルの脳天に落とす。

 片腕であっさりと受け止められるが、続く二の足でガードを弾き飛ばす。


「え!?」


 驚くアルを無視して右ストレート。受け止められる。ワンツーパンチに切り替え、二発目のパンチでガードごと吹っ飛ばす。

 慌てて距離をとるアルに、地を這うように吸い付いて連続でパンチを繰り出す。


「どういうことなの!? どうしてフィルの攻撃が通るの!?」

「自分で考えなって。」

「フィルが言ってたじゃないか!学園で僕に勝る魔力量はないって!僕のガードを超える攻撃を繰り出す人はいないって!」

「俺がそうかもよ?」

「こないだフィル本人が僕の方が魔力量多いって言ってたじゃないか!」

「頭を使おうぜ、アル。戦場では敵は待ってくれないぜ?」

「フィルは敵じゃなくて友達だ!」

「そういう不意打ちやめてくれない? うっかり惚れちゃう。」

「茶化さないで!」


 割と本気なんだけどなぁ。

 アルのステップワークは豪快だ。踏み込む度に石畳の闘技場に穴が穿たれていき、そこかしこがボコボコになっていく。煩雑ではあるが、理にかなった進路を舵切っているあたり、やはりバトルセンスがあるのだろう。

 身体強化の腕は俺の方が上。距離を詰めて足を掬う。アルが空中でデタラメな錐もみ回転をして着地する。その地面に着いた足首を砕くようにローキックを放つ。関節がねじ曲がるように、斜め上から打ち下ろすように。


「くっ。」


 アルが少しバランスを崩す。

 おかしい。

 近衛騎士レベルでも軸を確実にぶらすことが出来るはずなんだけど。

 ちょっとバランス崩すだけかぁ。


 身体がわずかに傾いたアルの顔面が、丁度俺の目の前にくる。


爆散掌底バーンナックル。」


 爆発する掌底を躊躇なく顔面に叩き込み、アルを吹っ飛ばす。

 顔が綺麗なので、女性を殴ったような罪悪感が脳内にちらつく。


熱光線カルロレイ紅蓮線グレンライン。」


 両手から別種の魔法を発射する。

 魔法が胴体に連続ヒットする。

 莫大な魔力でも、処理が追いつかなければ防御が出来ず意味をもたない。アルがロッソに傷だらけにされた理由がそれだ。自身の反射神経に、魔力の操作が追いつかない。

 アルは天才だ。

 でも、まだ9歳だ。

 対処できる余地なんて、いくらでもある。


「ロッソに負けた後に教えただろう。魔力操作の速度も上げなきゃなって。」

「ちゃんと練習したよ!」


 アルがビームと火炎放射の直撃を受けながら接近してくる。軽くホラーである。


「この!」


 アルが右のフックを放つ。

 俺はそれを左腕でキャッチする。


「え!?」

「よっと。」


 一本背負いをして、地面に叩きつける。アルが纏う魔力に負けて、地面にクレーターが出来る。


複合金螺旋突貫フルメタルドリルライナー。垂直落下。」


 クレーター内にいるアルに、もう一発ドリルを叩き込む。


魔法化合マギコンビネーション。」


 ドリルの下で爆発が起きる。

 逃げ場のない駄目押し攻撃だ。

 うーん、フェリに比べると威力が低い。フェリに「あんまり響きがよくない爆発音ね。」と酷評されそうである。


「ちょっとフィル!やりすぎよ!」


 客席からイリスの叫び声が聞こえる。そちらを見ると、イリスが桜色のツーサイドアップをアンテナのように上にとんがらせて怒っている。毎回思うけどその髪、どう稼動してるんだ?

 隣のロスは顔をひくつかせている。自分の友達が友達をドリルで生き埋めにして地下爆発させればそうもなるか。

 ちなみに、クレアの顔は怖くて見れなかった。

 もうあれだもん。俺の方に殺気まで飛んでるもん。




 ズン、と重低音が響いた。

 アルがドリルを持ち上げたのだ。片手で真っ直ぐ、俺のドリルを掲げている。おかしい。あれの素材にアーマーベア亜種を5体は使ったはずなんだけど。

 左手はだらんと下がっている。

 流石に片腕は機能停止しているようだ。

 よかった。ちゃんと効いてる。昨今は若者の人間離れが社会問題として叫ばれているが、俺の尺度ではまだ、アルは人間だ。

 ちなみに人外認定されているのはマギサ師匠である。


「フィル、痛いよ。」

 アルが眉をハの字にする。


 身体中焦げているのに可愛さ保ってるの、すごくない? 俺がお化け屋敷で爆発した時はボンバーヘッドのコメディルックスだったのに。


「それを痛いで済ませるのは、正直。困るなぁ。割と渾身の一撃だったんだけど。」

「嘘だ。フィルはまだ、出来ることを隠してる。」

「手の内を全部見せる必要はないからな。」

「もうっ!」


 その可愛らしい掛け声で音を置き去りにするの、軽くホラーなんだけど!


 慌てて右の掌底をかわし、足払いをして腕をとり地面に引き倒す。掴んだ右腕を極めて、脇がために入る。

 遅れてドリルが倒れる音が闘技場に響く。

 ミシミシと音を立てて、アルの腕の硬度が引き上がる。魔力を込めているのだ。以前のアルだったら、とっくの昔に魔力暴走をして闘技場は爆発している。

 視界の端では、リラ先生が涙ぐんで歯を食いしばるアルを見ている。


「折れるぞ。ギブアップしろ!」

「いやだ!」

「いくら魔力を込めても無駄だ!解析して、お前の身体強化魔法を阻害する!そうなったら俺の魔力の方が上だ!」


 ちなみに、ガードを潰していたのも同じ技術である。クレアの魔法から着想をえた。


「いやだ!」

「強情だな!」

「僕が守るんだ!」


 アルが顔を地面に擦り付けながら叫ぶ。


「僕のせいでリラ先生が怪我するのはごめんだ!僕のせいでフィルが戦うのだって!僕が戦うんだ!僕が守るんだ!ずっと守られているのは、いやだ!」


 足をじたばたさせながら俺の背中の下で叫ぶ。

 客席のクレアと目が合う。彼女は今にも飛び出しそうな姿勢で見守っていた。


「アル。すげぇよ、お前。」


 そう言って俺は体重を後ろに引き倒した。極めていたアルの腕が、背中の後ろの本来曲がらない方へ傾いだ。


 ミシ、と骨が割れる音が響いた。


「あっあっあ“あ“あああああ!」


 アルがその場でうずくまる。


「やめ!」


 リラ先生が叫ぶと、客席から突風が吹き荒れた。

 クレアが飛び出したのだ。


 あっという間に俺とアルの間に着地すると、アルを抱きしめる。




「フィル嫌い!」




 そう叫ぶと、アルを抱えて保健室のある棟へと風魔法で飛んで行った。


「勝者、フィル君!ごめんね!先生も追いかけるから!」

 そう言ってリラ先生も水魔法で水上スキーのように高速移動しながらクレアを追いかけて行った。







「お疲れー。容赦なかったな、おい!」

「あんた、今までで一番すごい決闘だったわね。中等部生相手でもあそこまでしなかったでしょ。」


 ロスとイリスが何やら言っているが、俺はショックで何もわからない。


「おーい、フィル。どうした〜、ぼうっとして。おーい。」

「ダメね。聞こえてないわ。」

「らわれた。」

「「へ?」」


「クレアに嫌われた。俺はもう、ダメだ。」


 穴だらけになった闘技場の中央で、俺は両手を地面につけて、うずくまる。心が鈍重になっていく。もうダメだぁ、お終いだぁ。最愛の妹に嫌われた。お兄ちゃん生きていけない……。


「いや、好きなやつをあんなコテンパンにしたらそりゃそうなるよ。」

 ロスが手を頭の後ろに組んで言う。


「でも、アルは強いからそれなりに本気にならないと。」

「あれで本気じゃなかったのか!?」

「いや、本気だったけど切迫感はなかったかな。」

「ストレガって、本当に規格外なんだな。」

「本当の規格外は師匠1人だから。」

「イリスの婆ちゃん、ほんと何者だよ。あ、俺も保健室に行ってくるから。アルが心配だし。」

「あ、あぁ。」


 ロスが闘技場を出ていく。

 残ったのは俺とイリスだけだ。


「で、いつまで落ち込んでいるのよ。」

「イリスはアルたちのところへ行かないのか?」

「う、うるさいわねっ!」

 イリスが腕を組んで怒る。


「何で腕まで折る必要あったのよ。」

「アルの覚悟に報いたかったんだ。」

「それが腕を折ること?」

「そうだけど。」

「わっけわかんない。」

「王宮の、イアンさんや近衛騎士の人に聞けば、俺の気持ちもわかるかも。」

「折ることが?」

「そう。腕を折ることが。」


 俺の言葉を聞き、イリスがため息をつく。


 だって仕様がないだろう。アルはさっきの戦いで間違いなく戦士だったんだ。ただの、9歳の子どもじゃなかった。戦士の誇りに報いるならば、決定的な敗北をくれてやるべきだ。

 俺はそれをギルドで学んできた。バトルウルフに、アーマーベアに、ワイバーンに、魔物たちに教えてもらった。

 だから、それをアルにも教えてやりたかった。


「ま、アルは優しいから許してくれるでしょ。」

「そうだけどさぁ〜。アルは許してくれるよ。絶対に。そこは疑わないけどさ〜。うぅ〜、クレア。クレアは絶対俺を許してくれないよなぁ。」

「なおさら何で折ったのよ。」

 めそめそする俺にイリスが突っ込む。


「大体、フィル。」

「何だ?」

「えっと、その。」

「何?」


 煮え切らないイリスが気になり顔を上げると、彼女の白い肌に朱がさしていた。


「え〜っと。そんなに落ち込むほどクレアが好きなの?」

「あぁ、好きだけど。」

「ひぅ。」


 何だその変な可愛らしい声は。


「心配して損した!あたしもクレアのところへ行く!」

 ズンズンと歩き、イリスも闘技場を後にした。


「何だったんだ、一体。」


 一人ぼっちになった石畳の上であぐらをかく。

 すっかり現代アートのようになったドリルを回収する。

 これは修理するだけじゃなくて、改めて強化をしなければいけないな。タラスクの甲羅がなければ原型も残らずに破壊されていたかもしれない。


 手首をわきわきと動かしながら、治癒魔法で回復させる。


「いてて、軟骨が千切れるのって地味に痛い。」


 元の世界にいたころであれば、これだけの怪我をすれば痛みに放心していただろう。もしくは悶絶していたかも。今ではすっかり、かすり傷気分である。環境が人を作るとはこのことだと、心中で独り言ちる。

 思い出すのは、戦いのさ中でのアルの表情。

 A級の冒険者たちとも負けず劣らずの気迫があった。


「エイブリー姫。俺たちが導かなくても、アルケリオは剣を持ちましたよ。」

 ぼそりと呟く。


 さて、保健室に行ってアルに謝ろうかな。

 ついでに、ご機嫌斜めの妹様にも。


 風呂入る時にアルが最初に洗うところでも教えたら、許してくれるかな。

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