第75話 討伐準備4

「ああ、トウツさん待っていましたよ!依頼主が来ていらっしゃいます。」


 ギルドに戻ると、依頼主が既におり、こちらの帰りを待ってくれていたみたいだった。すぐに応接間に俺たちは通された。

 部屋に入ると、奥側の椅子にベレー帽を被った大人しそうな男がいた。右手の長椅子には、6人組の男の冒険者たち。ということは、B級同士の合同クエストになるのだろう。そしてA級が受理しなかったことを示す。

 男たちは下卑た笑みでトウツを眺めている。これを見ると、アルシノラス村の冒険者たちはまともだったんだなと思ってしまう。いや、ゴンザさんが選別したと言っていたな。そういえば。


「ようこそお越しくださいました。今日は時間を割いていただきありがとうございます。」

 ベレー帽の男が上品に挨拶をする。


 商人だ。

 何となくそう思った。アルシノラス村でも何度も見た人々。冒険者に比べると温厚で険が少ないが、品のいい狡猾さを兼ね備えた顔。服装が清潔で、体は鍛えられていないものの、働く人間特有の太い指をした男達。目の前のベレー帽の男がもつ雰囲気は、彼らのそれとそっくりだった。


「こちらこそよろしくお願いします。A級は捕まらなかった感じかな。」

 トウツが返答する。


「おいおい。俺たちじゃ戦力にならないってか? ソロなんだからもう少し謙虚になったらどうなんだよ?」

 男の一人が茶々を入れる。


 赤髪の粗野な相貌をした男だ。盛り上がった上腕。浅黒い肌。

 間違いなくトウツの方が強いことは、無駄が多い魔素の流れでわかったが、そこはB級。タイマンなら俺の方が強いと思うが、パーティー全部を相手するのは厳しいと感じる。

 というか、そうか。やっぱりソロに見えるのか。俺もいるんだけどなぁ。やっぱりぱっと見ると俺は子守りされている男児にしか見えないのだろうか。


「まぁまぁ。せっかく集まったんですし、ここは仲良くしてくださると助かります。クエストの備考は目を通されましたか?」

「ちっ。商売の話すんぞ。」

 ベレー帽の男が話すと、男たちは一斉に矛を収めた。


 ベレー帽の男は言外に「お前らプロだよな?」と確認したのだ。

 男たちが大人しく従ったのは醜聞を避けるため。冒険者は信頼が大事な仕事だ。それがなければ依頼もこないし、ギルドからも優良な仕事は来ない。彼らはそれをわかっているのだ。ガラは悪いかもしれないが、統率はとれていてクレバーさはあるパーティーなのかもしれない。


「申し遅れました。私はこのクエストの依頼主のタルゴ・ヘンドリックといいます。以後良しなに。ちょっとした商会に携わっております。」


 予想通り、商人だった。俺は社会経験が少ない。前世ではそもそも社会に出たことがなかったし。でも、この世界に来てから少しは蓄積できたものがあったはず。その経験からマーチさんの職種を当てられて、少し気持ちが気色ばむ。

 すぐ近くでは男の一人が「ちょっとしたとかふざけやがって。大手のくせに。」と呟いている。

 豪商の方なのか、この人。言われてみれば苗字をもっている。俺はこの世界で苗字をもつ人間は数えるくらいしか出会っていない。


「すまんの。遅れた。」

 そう言って入ってきたのは、猫人の少女だった。


 何だこの子。身長は俺よりも少し高いくらいだ。ぱちりとした丸い目。短く切りそろえた橙の髪。真っすぐに伸びた気の強そうな眉。楕円に近い三角の耳。

 その猫人の少女は堂々と上座に座った。


「やぁ、ギルドマスター。こちらも丁度集まったところです。では、クエスト受注のすり合わせをしましょうか。」

 タルゴさんが話を進める。


 ギルドマスターだったのか。獣人は狩猟文化が根強く残った種族が多く、見目若い期間が長いと聞いたが、彼女は群を抜いて若いように見えた。アルシノラス村で数名猫人は見かけたが、彼女ほど若く見える人は初めてだ。実際に若いのだろうか。

 無遠慮に見過ぎても失礼なので、俺は視線を外す。お面ってこういう時、便利だよなぁ。


「うむ、そうじゃな。私はここのギルドマスターをしておる。シーヤ・ガートじゃ。よろしくの。今回のクエストはちと特殊でのう。諸々説明も重ねる必要があるでの、私も同席させてもらう。私が司会を務めるが、いいかの?」


 タルゴさん、トウツ、赤髪の男がうなずく。

 語尾が何故、にゃんではないんだ? いや、いいんだけどさ……。でもその見た目でにゃんじゃないのは逆に違和感ないか? 何のための猫人族なんだ?にゃんと言うためだろう? 髪の上にある柔らかそうな猫耳がぴょこぴょこと動いている。完全に猫だ。猫様だ。和解したい。しかし、何でにゃんと言わないんだ……。


「よしよし。今回のクエストはアラクネ討伐じゃ。お主らはB級の実力者だと聞く。簡単な略歴に目を通させてもらったがの、良い戦績じゃのう。安心して任せられるわい。ここは言ってしまえば初級者御用達の村じゃ。おんしらのような実力者がすぐに集まったことに、感謝の意を表する。代表として礼を言おう。」

 シーヤさんが小さく頭を下げる。


 タルゴさん、トウツが目礼で返す。赤髪の男は鼻を鳴らす。


「特にトウツとやらは西の村から遠征してくれたと聞く。助かったぞ。」

「いえ。」

 話をふられたトウツが短く返す。


「依頼の理由と内容の説明じゃ。タルゴ、頼む。」

「分かりました。」

 タルゴさんが立ち上がる。


「今回のクエスト発注の理由は流通網の確保のためです。アラクネは人間種に対してかなり好戦的な魔物ですが、勝ちを確信できる時しか襲ってこない狡猾な種でもあります。ですので、本来は森の奥に潜伏し、道に迷った人間や傷ついた冒険者を襲うことが多い魔物です。ですが、今回目撃情報があるアラクネはこの村の近くの森の浅いところで根城を築いています。」


 赤髪の男が手をあげる。


「ルーグさん、何でしょう?」


 あっちの冒険者たちのリーダーの名前はルーグというのか。


「根城を築いているってこたぁ、敵はもう巣を作っちまったということか?」

「そうなります。」

「ちっ。面倒くせえ。」


 何かさんづけしたくないので、この男は心の中で呼び捨てにしよう。

 ルーグの言う面倒という感想に関しては、同意である。師匠の書斎にあった図鑑で確認したが、アラクネの大きな武器は糸による多彩な攻撃と探知能力。そして高い瞬発力を生かした機動力だ。

 すでに巣が作られているということは、アラクネは森中に自分の武器である糸を張り巡らせていることになる。

 そして糸を活用すれば、ただでさえ高い瞬発力が飛躍的に上昇する。逃げるときの逃走経路もたくさん作ってあることだろう。巣のないアラクネと巣があるアラクネは、別物の魔物と思え。図鑑にはそう締めくくられていた。


「タルゴさんよ。話の腰を折って悪いがよ、依頼料の上乗せを提案するぜ。巣が出来てるアラクネは危険だ。」

「分かった。500万出そう。」


 準備していたかのように、即決だった。


「…………いやに聞き分けがいいな。」

「この依頼が達成されなかった時、一番困るのは我々だからね。それにこの依頼を張り出した時、まだアラクネは巣を作っていなかった。情報の不備を詫びての上乗せだよ。」


 それを聞き、ルーグが座る。

 ルーグの要求は妥当である。クエストの危険度が前情報より上がっているのだ。上乗せされた350万は大金ではあるが、命と比べるとはした金である。ちらりとシーヤさんを見ると、小さく頷いている。この妥協点はギルドマスターから見ても妥当ということだろう。


「話を戻していいかい?」

 周囲の人間が皆、頷く。


「先ほどこのクエストを発注した理由を流通網の確保と言ったが、すでに商会はこのアラクネの襲撃で1700万ギルトの損害を受けている。加えて、現在流通も停止をかけざるをえない状況だ。1日につき400万ギルトの損害だ。日持ちする商品は後から取り返しがつくが、食品などはそうはいかない。うちの商会は体力があるから、まだもつ。だが、小さな商会は店をたたまざるを得ない状況に追いやられるだろう。取引先が減ると、うちも先細りが起き、厳しくなってくるんだ。」

「私からも付け加えとこうかの。」

 シーヤさんが口を開く。


「経済的な損害もそうじゃが、人的被害も甚大じゃ。すでに冒険者が30数名亡くなっておる。初級冒険者ばかりの村じゃからの。アラクネにとっては餌にしかならんじゃろうて。早くからD級以下の冒険者の遠征を禁止した。が、守らない阿呆もおっての。死亡者を20で抑えるつもりが最終的に30を越えてしまったわい。」

 あいつらほんま人の話を聞かんからのう、とシーヤさんが付け足す。


 ギルドも大変そうだなぁ。ところでシーヤさんはにゃんと言わないのかな。


「現状、クエストを受注して動けるのはC級以上じゃ。それも2パーティー以上でクランを組むという条件付きでの。これが続くと、ギルドの方も損害が大きい。商人の流通、ギルドの停止。このままいくとカンパグナは立ち行かなくなる。さしずめ、おんしらはこの村の救世主といったところかのう。」

「何か、疑問点はありませんか?」

 タルゴさんが引き継ぐ。


「ありません。」

「ねぇな。」

 トウツとルーグが返答する。


「そうですか。では、ご武運を。細かい打ち合わせはパーティー同士で行ってください。私はここでお暇します。商会が火の車でして、私も現場にいなければいけないのですよ。」

 そう言って、タルゴさんは退席した。


「ふむ。ところでの、トウツよ。」

 シーヤさんがトウツに話をふる。


「はい、何でしょう?」

「そこの小さな子どもは何じゃ? ただの子どもではないと思うがの。」

 じっと、シーヤさんが俺を見る。


 何となく感じていたが、この人もかなりの実力者なのだろう。ゴンザさんもそうだけど、荒くれものが多いギルドは、力がある人間がまとめなければいけない事情がある。彼女もおそらく、冒険者上がりだ。

ゴンザさんが言っていた。ギルドマスターか副マスターのどちらかは必ず武闘派だと。


「おいおい。子守りは勘弁だぜ?」

「というか変なガキだな。何だよそのお面。」

 男たちががやがやとわめきたてる。


 依頼者がいなくなったからか、粗野な雰囲気を取り戻し始める。


「えっと、初めまして。今回荷物持ちポーターとして参加させていただくフィルです。よろしくお願いします。」

 俺は無難に自己紹介をする。


 男たちは一瞬、目を丸くしたのち、笑い始める。


「ぶっはははは!おい聞いたかよ!荷物持ちだってよ!」

「ソロのB級冒険者様はえげつねぇことすんな!」

「肉壁用かい!?」

「奴隷じゃないやつを肉壁にもっていくやつは初めて見るぜ!」

「そのなりで荷物持ちなんて出来ねぇだろうが!」

 下品な笑い声が室内にこだまする。


 俺もトウツも涼しい顔でそれをやり過ごす。こうなることは何となくわかっていたことである。


「ふうむ。荷物持ちポーターとな? フィルよ。おんし、年齢は?」

「6歳です。」

 周りが一瞬静かになる。


「マジかよ。」

「ちょっと待て、俺たちは小人族ハーフリングが来ると聞かされてたぞ。」

「見た目通りの年齢かよ。」

「兎人の姉ちゃん。流石に引くわ。」


 あれ。意外とこの人たち、まともなのでは?


「すまんがフィル。年齢制限じゃ。おんしは今回のクエストに参加できんの。」

「え!?」

 俺は驚く。


「ちょっと待ってください!俺はちゃんと荷物持ちは出来ます!亜空間リュック持ちです!シーヤさんほどの実力者なら、俺が戦えることはわかるはずです!参加させて下さい!」


 それと、猫人族ならにゃんって言え!


「できんの。年齢制限は絶対じゃ。例外を許すことはギルドの信頼を損なうことになる。ここは特に初級者御用達のギルド。間違った例をビギナーたちに見せるわけにはいかぬ。」

「そんな……。」


 ぬかった。許可を出してくれたゴンザさんが特殊だったのだ。シーヤさんを責めることはできない。対応としてはこちらが普通なのだ。ゴンザさんに推薦状を書いてもらうべきだったのだ。


「大丈夫ですよ。解決策があります。」

 トウツが前に進み出た。


 満面の笑みで。それはもう、満面の笑みだった。口元が高く吊り上がり、三日月を形どっている。目元には嗜虐性が宿り、サイコな雰囲気を醸し出している。俺は悪寒を感じた。こいつが心底楽しそうな顔をする時、決まって俺の身に何かが起きるのだ。


「フィルを奴隷にすればいいんです。赤の他人にフィルを任せるわけにはいきませんからね。ここは知人である僕が主人になりましょう。ほら、これで彼もクエストに参加できる。皆さんにとってもいいことだと思いますよ? 彼は年齢こそ若いものの、優秀な後衛です。」

 おぞましい提案をトウツがする。


「待ってください。シーヤさん、他に提案させて下さい。まだ他の方法があるはず。時間をください。」

「お、おう。だがの、このクエストは長引くと被害が増えるのじゃ。出来るだけ早くしてほしいのう。それとトウツとやら。その子は知人の息子か何かかえ? いくらなんでも奴隷にするのは。そもそも、子どもをクエストに参加させるのは気が引けるしのう。」


 そうだ!言ったれ!


「そうですね。ギルドマスターさんの言う通り、このクエストには時間がありません。なおさらフィルは決断を早くすべきです。さぁ、今からでも僕のことをご主人様と呼んでいいんだよ? フィ・ル?」


 こいつ。シーヤさんの言葉から都合のいいところだけ抜き出しやがった。

 心底楽しそうなトウツを見て、周囲の冒険者たちがドン引きする。


「おい、そいつがいなくても、アラクネくらい俺らで討伐できるぜ?」


 思わぬところから援護がきた。ルーグだ。いや、ルーグさんだ。

 助かる!助かるが、俺はこのクエストに参加しなければならない。何故ならば——。


「そうですか。それは残念。では、フィルはお留守番ですね。このクエストは僕とルーグさんたちで受けましょう。僕の取り分は仮面のみで結構です。500万もアラクネの素材も差し上げましょう。ではフィル。お面は私から買い上げるという形にしましょう。ああ、そういえばフィルは金欠でしたねぇ。ローンは何か月で組みましょうか? その間に利子として僕に色々してもらいましょう。」


 こいつ、俺を借金漬けにする気だ!それだけじゃねぇ。俺に何させるつもりだ!?


「う。」

「う?」

「あん?」


 俺のうめき声にシーヤさんとルーグさんが反応する。


「うわあああああああああああああああああああああ!!」


 俺は逃げた。

 ギルドの応接室のドアを蹴飛ばし、全速力で建物を離れて疾走した。ギルドの出口を曲がった鉄砲玉のように飛び出し、全力で身体強化ストレングスをかけて足をがむしゃらに動かした。




 フィルが居なくなった部屋でしばらくの間、静寂が流れた。

 その静寂をトウツが破る。


「彼のことは、後でちゃんと奴隷に墜として連れてきますので。僕と皆さんで作戦の詰めをしておきましょう。」

 にこやかにトウツが言う。


 その場の全員はドン引きしていた。




 俺は走った。走る。走る。村の憲兵の人が不審に思って俺に一瞬並走するが、すぐに置き去りにする。屋根の上を飛び越え飛び越え、全力で疾走する。


「うわ!何だ!」

「魔物よ!」

「黒い影が見えたぞ!?」

「顔が白い魔物だ!」

「何言ってんだ!ここは村の中だぞ!?」

 村の人々が疾走する俺を見てざわめく。


 俺はわき目もふらずに駆け抜ける。

 救世主メシアだ。俺には救世主が必要なのだ。トウツという兎の皮を被った悪魔から身を守るための救世主が必要なんだ。


 居た。


 俺はその救世主じんぶつの目の前に、空中から垂直に跳び下りて着地する。砂塵が舞う。


「誰?」

 その人物は一瞬、警戒を示す。


 俺が見込んだ通りだ。この人は強い。かなり前から俺が接近しているのに気づいていたようだった。


「あら、貴方は昼の。」


 お姉さんが俺を見て言う。そう、昼食を相席したダークエルフのお姉さんである。


「さっきぶりです、お姉さん。」

「え、ええ。どうしたの? ずいぶん急いでいたようだけど。」

 お姉さんはローブについた砂を払いながら言う。


「ぶしつけな質問で申し訳ないのですが、お姉さんは冒険者ですよね?」

「え、ええ。そうだけど。よくわかるわね。」


 そんなもん、身にまとう魔力を見れば大体わかる。いや、これは俺しか出来ないんだっけ。


「すいません、企業秘密です。付け加えて質問なんですけど、お姉さんの冒険者ランクはいくつですか?」

「えっと、あんまりそういう質問を大っぴらに言うのは止めた方がいいわ。冒険者の中には秘密主義も珍しくないし。」

「そこを!助けると!思って!お願いします!」

 俺は体を垂直に折り曲げて乞う。


「え、ええ。Cだけども。」

「C!」


 勢いよく俺は彼女にせまる。

 俺の剣幕に押されたのか、お姉さんは一歩下がる。


「ソロでですか!?」

「……私とパーティー組む人なんているわけないじゃないの。ダークエルフよ? ソロに決まってるじゃないの。」

 彼女は少し寂しそうに言う。


 少し同情心が芽生えるが、今はそれどころじゃない。


「お願いします!」

 俺は膝と手のひらを地面につける。


「え。」

「俺を奴隷にしてください!」


 頭を地面に擦り付ける。

 ジャパニーズDOGEZAだ。俺が見せられる誠意はこれしかない。この手しかない。この手しか知らない。むしろ他にどんな手があるっていうんだ。


「ええ!?」

 お姉さんが自分を抱くような姿勢で後ろに下がる。


「お願いします!」

「ちょ、ちょっと。」

「お願いします!」

「顔上げて。」

「貴女をご主人様と呼ばせてください!」

「ええ!?」

「俺を奴隷にしてくれないんですか!?」

「お願いだから立って。」

「俺、何でもしますよ!」

「声も小さくして。」

「俺の何が不満なんですか!」

「初対面でしょう!?」

「人助けだと思って!お願いします!」

「あ、あう。」


 周囲に人だかりができ始める。

 ダークエルフは目立ってはいけない。すぐに噂が立ってエルフたちが現れるからだ。

 それに羞恥も手伝って、お姉さんはしどろもどろになる。


「お願いします!俺の人生がかかってるんです!」

「わかった。わかったから、静かにして。話は聞くから。」


 俺は前世も含めて人生初の泣き落としで、女性を引っかけることができた。

 達成感はない。

 謎の安堵と虚無だけが俺の精神を支配していた。

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