えぴそーど8 あきちゃん その1

 それはとある日の放課後。


 17:15を示す腕時計を見て、まだ明るい西の空に夏を感じ始めた5月の中旬。


 俺は校門前でアイツを待っていた。


 アイツとは、俺の幼馴染みで、隣の席で、バスケ部に所属してる…。


 ?「ごめーん、遅くなったー」


 声の方に顔を向ける。


 声だけでも騒がしいのに、手を振りながらこちらに歩いてくる騒がしいこいつが雨谷あまやだ。


 そして、その横にいるのは、薄茶色の髪が特徴的な『あきちゃん』こと、秋乃あきの


 全体的にスタイルが良く、顔立ちも整っている。


 そして、姿勢の良さや学力優秀であることから、密かに影で「お嬢様」なんて言われているらしい。


 とりあえず、手を振っている雨谷の横に並ぶとよく分かる。確実にあきちゃんの方が知的であると。


 俺 「遅くなるなら連絡しろよ」


 雨谷「ごめん、ちょっと自主練してた」


 にひひーと、ごまかすように笑った。


 秋乃「…」


 雨谷「あきちゃんどうしたの?」


 すると、ハッとしたように目を大きくすると、「ううん、なんでもないの」首を横に振る。


 秋乃「それじゃあ、雨谷ちゃんまた明日」


 雨谷「ん、また明日。あと、さっきはありがとうね」

 

 にこりと笑う。


 そして、俺の方を見て小さく一礼すると踵を返した。


 …。


 さっきのあきちゃん、なんか変だった。


 うまく説明は出来ないけど、なんて言うか心ここにあらず、みたいな…。


 雨谷「さ、帰ろ」


 俺 「…おう」


 俺と雨谷は歩き出す。やっと紅くなり始めた太陽は、アスファルトの上に2人の伸び雨谷た影を映し出す。


 雨谷「あー疲れた、さーて、今日はなに買って貰おっかなー♪」


 俺 「仕方ねーからモヤシ買ってやるよ」


 雨谷「絶対にいらない、スタバのフラペチーノがいい」


 俺 「太るぞ、モヤシにしとけって」


 雨谷「さっきまで運動してたんで大丈夫ですー、ってことでスタバ行こ?」


 俺 「はぁ…はいはい」


 よし、と胸の前でガッツポーズを作る雨谷、その横顔は難しい表現なんか使わずに、ただ嬉しそうだった。


 

 

 

 



 

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